ドイツの祝日は州によって違うの?
ドイツ全土の法定祝日は1日だけ?
ドイツでは各州が法律で祝日を制定しています。実は、国の法定祝日というのは10月3日のドイツ統一記念日 (Tag der Deutschen Einheit) のみで、これはドイツ連邦共和国(西ドイツ)とドイツ民主共和国(東ドイツ)とのドイツ統一実現に関する統一条約に則っており、ドイツ連邦共和国の国の象徴の一部です。ドイツの再統一(1990年10月3日)以前は、6月17日がドイツ統一記念日でした。(ただし "Tag der deutschen Einheit" と表記し、「ドイツ」を表す "deutschen" の頭文字は小文字で書きます!) この日は、1953年6月17日に東ドイツで起きた市民蜂起、ならびにその際に自らの権利と自由を求めて戦い、蜂起の鎮圧に苦しんだ市民たちを追憶するものでした。またとりわけ「西と東の2つのドイツの国は一体である」ことを記するものでした。
その他の全ての祝日は各州が制定していて、その内、以下の9日の祝日は全ての州で全国共通の祝日となっています。
元日 | 1月1日 |
聖金曜日 | 復活祭当日(日曜日)の前の金曜日 |
復活祭の月曜日 | 復活祭当日(日曜日)の次の月曜日 |
キリスト昇天祭 | 復活祭当日(日曜日)の40日後 |
聖霊降臨祭の月曜日 | 聖霊降臨祭当日(日曜日)の次の月曜日 |
メーデー | 5月1日 |
ドイツ統一記念日 | 10月3日 |
第一クリスマス | 12月25日 |
第二クリスマス | 12月26日 |
これしか祝日はないの?
その他にも、州によって下記の祝日が制定されています。東方の三博士の日 | 1月6日 | バーデン・ヴュルテンベルク州 バイエルン州 ザクセン・アンハルト州 |
国際女性デー | 3月8日 | ベルリン州 |
聖体の祝日 | 復活祭当日の日曜日の60日後 | バーデン・ヴュルテンベルク州 バイエルン州 ヘッセン州 ノルトライン・ヴェストファーレン州 ラインラント・プファルツ州 ザールラント州 ザクセン州とチューリンゲン州の一部の郡 |
アウクスブルク平和祭 | 8月8日 | アウクスブルク市のみ |
聖母被昇天祭 | 8月15日 | ザールラント州 バイエルン州の一部の郡 |
世界こどもの日 | 9月20日 | チューリンゲン州 |
宗教改革記念日 | 10月31日 | ブランデンブルク州 ブレーメン州 ハンブルク州 メクレンブルク・ フォアポンメルン州 ニーダーザクセン州 ザクセン州 ザクセン・アンハルト州 シュレースヴィヒ・ホルシュタイン州 チューリンゲン州 |
万聖節 | 11月1日 | バーデン・ヴュルテンベルク州 バイエルン州 ノルトライン・ヴェスト ファーレン州 ラインラント・プファルツ州 ザ―ルラント州 |
懺悔と祈りの日 | 11月23日前の水曜日 | ザクセン州 |
復活祭は春の最初の満月の後の最初の日曜日です。そのため毎年日付が異なり、最も早くて3月22日、最も遅いと4月25日となります。そのため該当する可能性がある日は35日もあります。
クリスマスイブと大晦日は祝日ではありません。これらの日が平日に当たると、州ごとの閉店法規定が適用されます。実際、バイエルン州を除く各州が独自の閉店法を制定していて、クリスマスイブの営業時間は14時までとなります。
ブレーメン、ヘッセン、チューリンゲン州では大晦日も同様の規制を設けていますが、それ以外では大晦日も通常の営業時間が適用されます。この規定は、企業にとって義務となるものではありませんが、多くの企業がこれに準じているため、この両日には従業員は早めに仕事を終えることができます。
日本では、祝日が日曜日と重なると直近の平日が振替休日となりますね。しかし(残念ながら?)こうした規則はドイツにはありません。また2つの祝日が同じ日に重なったとしても、どちらの祝日も振替となることはありません。そもそも祝日が2つ重なることは非常に稀なケースですが、実際2008年5月1日にキリスト昇天祭とメーデーが重なりました。次にこうしたことが起こるのはなんと140年後、2160年5月1日です。
多くの祝日はキリスト教に由来していますが、近年ではキリスト教以外の祝日の方が多く加わりました。最近の例としては、ベルリン州の国際女性デー、チューリンゲン州の国際こどもの日が2019年から適用されています。近年、新たに全国共通の祝日となったのは、5月1日と10月3日のみです。
どの州が最も休みが多いの?
では、ドイツで最も祝日が多いのはどこの州なのでしょうか。法定祝日数でのみ見てみるとヘッセン州が圧倒的にトップです。ヘッセン州の祝日法では、全ての日曜日が法定の祝日となっているため、例えば 2020年の祝日数は全部で62日もあります。とは言え、その内52日は日曜日なのでもともと休みなのです。ただし、ヘッセン州の住民の大半はこのことを知りません。
ヘッセン州の特殊性を度外視すれば、アウクスブルク市の14日がトップとなります。反対に最も祝日の少ないのは、これまでベルリン州の9日でしたが、昨年以来10日となりました(国際女性デーが加わったため)。これでベルリンと他の7州がそろって最も祝日が少ない州となりました。
同じ家族でも親と子で祝日が違う?
上記のように、祝日の制定が州によって違うことで、時として子供の学校はお休みでも、両親は出勤しなければならない、もしくはその逆ということが起こります。例えば、住居と学校はポツダム(ブランブルク州)にあるけれど、両親の職場はベルリンにある、などといった場合です。このようなことは、同じ企業内でも勤務地が違う場合にも起こり得ます。例えばドイツ外務省では、本省はベルリンにあるので、全ての職員にベルリン州の祝日規定が適用されます。しかし、支所のあるボンで勤務する職員には、ラインラント・プファルツ州の祝日が適用されます。
世界各地の在外公館でも、また事情が違ってきます。基本的にはベルリンの祝日が適用されますが、任地先の国の祝日が3日追加されます。(たとえば日本のドイツ大使館では、成人の日、海の日、スポーツの日が休館日です。)ただし、その分が残業した場合に差し引かれます。
こうしてみると複雑でややこしいだけに見えるドイツの「祝日の多様性」ですが、メリットもあります。祝日の違いは小売業には有利に働き、顧客が隣の州で買い物をして休日を過ごせば、定期的に売り上げが上昇するのです。