ベルリン映画祭、日本映画2作品が授賞の快挙!
第69回目の開催となる、ベルリン映画祭が、昨日幕を閉じました。
今年は、日本から長編作品が4本登場。
「37 Seconds」 HIKARI監督 パノラマ部門、ジェネレーション部門
「WE ARE LITTLE ZOMBIES」 長久允監督 ジェネレーション部門
「きみの鳥はうたえる」 三宅唱監督 フォーラム部門
「Complicity」近浦啓監督 グルメ映画
「37 Seconds」は、なんとパノラマ部門の観客賞と国際アートシアター連盟賞をダブル授賞。そして「WE ARE LITTLE ZOMBIES」は、日本映画初となる、ジェネレーション部門のスペシャル・メンションに輝きました!
おめでとうございます!!!
© Brigitte Drummer/Berlinale 2019
ジェネレーション部門というのは、いわゆる「子ども向け映画」ではありません。全世代が観ることができる映画の中で、特に子ども、若者にスポットを当て描こうとしているもの、そしてこれからの世代に向けてのメッセージ性が感じられるものが中心です。
映画祭の公式サイトによれば、この部門に選ばれるのは「時代の鼓動を伝える映画」。
ベルリン映画祭は量が多くて何をチェックしたものやら?という方にもオススメです!チケットが5ユーロ(本年度)と安価なのも嬉しい(笑)
さて、今回ベルリン映画祭で高い評価を得たこの日本映画2本。
テイストは全く異なりますが、両方の作品に共通していたのは、どちらも見た後に、力が湧いてきたこと。
「37 Seconds」、「WE ARE LITTLE ZOMBIES」
どちらの映画の主人公も、それぞれの人生のスタート地点に立って、一歩を踏み出しています。
© 2019 “WE ARE LITTLE ZOMBIES” FILM PARTNERS
「WE ARE LITTLE ZOMBIES」
両親を交通事故で亡くした13歳の少年ヒカリが、葬儀場で、同じく両親を亡くした3人と出会い「勇者たちは冒険に出かけた……」となるお話です。画面いっぱいに広がる毒々しいまでにポップな色合い、8ビットアニメのようなビジュアルを自由自在にカットして、耳に残るピコピコ音楽をちりばめた、めくるめく120分のコラージュ。独特の世界観に引き込まれます。スペシャル・メンションの授賞理由も、まさにそこにあるよう→
「シュールでリアルなイメージが重なり合う……この“スペシャルメンション”でこの比べるもののない、独特な映画を讃えたいと思う」(審査員授賞の言葉)
実は最後にxxxx?というシーンがあるのですが、最後まで席を立たないでくださいね♪(監督弁)
© 2019 “WE ARE LITTLE ZOMBIES” FILM PARTNERS
上映後のQ&Aでは、
今回で見るのは2回目です!という人が、「ドイツで上映はしないのか?!サウンドトラックの発売はないのか?」と熱く質問をしていたのですが、
「この映画に出てくるバンドでツアーをしたい!応援してください、プリーズ♡」と長久監督もアピール。ベルリンでも、ファンタジーフィルム映画祭とかで上映されたら、人気がでそうです!
そして最後に、課外授業で学生を連れてきたという学校の先生から、暴力表現について質問を受けた長久監督。
「暴力をあえて映画のなかから排除しなかったのは、現実にあることだから。現実は厳しくても、それに向き合いすぎて思い詰めないで。ユーモアを持ってサバイブして欲しいという思いを込めた」と答え、大きな拍手を浴びていました。
そして、「37 Second」!
© knockonwood
「37 Second」
生まれた時に、たった37秒間仮死状態だったことが原因で、脳性まひとなった夢馬(ゆうま)。車椅子に乗り、漫画家のゴーストライターとして働く彼女が、自分の表現を模索するなかで様々な人たちと出会い、過保護な母親とぶつかり、成長していく物語。娘も、母も。「ほんとうに好きな人を抱きしめたことある?」漫画編集者に投げつけるように言われた言葉が、物語の終盤、そっと実現する瞬間。
HIKARI監督は、主人公夢馬、そして彼女を演じた佳山明さんの成長を、寄り添うように優しく追っていきます。
© knockonwood
プレミア上映、エンドロールが始まると会場には大きな拍手と、スタンディングオベーションが起こり、鳴り止まない拍手に、司会者がそろそろ、質疑応答を始めますので、と促したほど。
ベルリン映画祭は、審査員が選ぶ金と銀の熊賞があるのですが、パノラマ部門には、観客が鑑賞後にハガキで投票する観客賞があり、私はこれが一番「ベルリンの人たちの、映画を見た人のハートに届いたかどうか」のバロメーターとなる賞だと思っています。
今年、2万9千人のベルリン映画祭の観客が選んだのは、「37 Second」でした!!!
ちなみに、昨年の受賞作品は「Profile」そして「Styx」。これも、激しく心を揺さぶられる映画でした。
HIKARI監督は、もうすでに次回作の構想を練っていらっしゃるそうで、またベルリン映画祭で、作品を観させていただくのが楽しみです!
来年、2020年はベルリン映画祭70周年を迎えます。
若く新しいディレクターのもと、どんな映画祭になるのか、日本からはどんな作品が選ばれるのか。いまからワクワクしています。