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インターネットを舞台にドイツ企業でグローバルに仕事 塚田恵さん

ドイツ企業の社員としてベルリンでリモートワークする塚田恵さん。

インターネットを舞台にドイツ企業でグローバルに仕事 塚田恵さん

日本企業でのオンラインマーケティングからキャリアをスタートさせ、現在はドイツ企業の社員としてベルリンでリモートワークをしている塚田恵さん。これまでどのようなステップを踏んだのでしょうか。ドイツ企業で社員として働きたい方、必読ですよ。

 

日本のベンチャー企業が原点

 

ベルリンの住宅地に立つ、集合住宅の一室。ここが塚田さんのオフィスです。会社はフランクフルトにありますが、塚田さんはベルリンのシェアオフィスで、リモートワークをしています。

リモートでも自宅ではなくオフィスで働くのが好きなので、シェアオフィスを借りています。

リモートでも自宅ではなくオフィスで働くのが好きなので、シェアオフィスを借りています。



 

 

塚田さんが借りているシェアオフィス。ベルリンの集合住宅の一室です。

塚田さんが借りているシェアオフィス。ベルリンの集合住宅の一室です。



 

 

 

 

塚田さんは、日本の大学を卒業後に広告代理店の営業職に就きましたが、業界の将来性を考えて2年弱で退職。当時はインターネットが急速に広がっていった時期で、ネットに関わるベンチャー企業も出現し始めた頃でした。塚田さんは、そうしたベンチャー企業の一つに就職。未経験ながらインターネットを利用したマーケティングの仕事を始めました。

「社員12人の会社でしたが、みんなが知識をシェアしあって学びましたね。毎日夜11時頃まで仕事をしていましたが、会社は上り調子でやればやるだけ給与が上がるし、学べるし、楽しかったです。チームとしての仕事の仕方など、すべてここで学びました。この会社が私のキャリアのスタートだと思います」

塚田さんは今も「何か新しいことにチャレンジするのが好き」と話します。その原点は、この会社にあるのでしょう。

しかし、その会社はベンチャー企業。株式上場を目指して事業を拡大し、社員も急速に増え、社内の雰囲気は変化しました。会社から独立する人が相次ぎ、塚田さんもその1人に誘われて転職しました。

転職先も、前職同様立ち上げメンバーに。私も会社員時代新規事業の立ち上げに関わったことがあるのでわかりますが、立ち上げ時期というのは、上司が仕事を与えてくれるのを待っているのでは務まりません。塚田さんも仕事を模索し、新規開拓する日々でした。

 

アメリカの会社でグローバルな働き方を学ぶ

 

そんなある日、リクルーターから声がかかりました。誘われたのはアメリカのエクスペディア。航空券など旅行関連のことを個人がネットで予約できる会社です。今では日本でもおなじみですが、当時会社は日本でのシェアを広げようとしているところでした。

アメリカの会社ですから、英語は必須です。塚田さんは英語で仕事がしたいと思っていたために、独学で勉強していました。ただし、完璧に喋れる必要はないそうです。

塚田さんが担った役割は、日本の市場における知名度を上げることと、予約件数を増やすこと。各国に担当者が1人いるという体制で、日本担当は塚田さん1人でした。

「日本にいましたが、各国担当者と横並びで同じ仕事をしていたので、彼らから海外での仕事の仕方を学びました。例えば自分の意見をきちんと言うことと、上司から認められるためのアピールの方法などです」

常に意見を言っていくことで、やり甲斐のあるポジションも与えられるそうです。日本人にとっては難しいことでしょうが、海外で働くのであれば大切です。

「私も最初の頃はグローバルな会議で英語が全部わからなくて、意見が言えずにプレッシャーを感じていました。これは慣れるしかないと思います」

 

ニースのMBA留学からベルリンへ

 

エクスペディアの上司たちがMBA(経営学修士)を持っていることに気づいた塚田さんは、日本で働きながら海外のMBAコースに入るための勉強を始め、見事フランス・ニースでMBAを学べることになり渡仏。フランスでの就職も考えたものの、フランス語ができないと難しいことがわかりました。

じつは塚田さんは、MBAに入るための勉強と平行してヨーロッパでも就職活動をしており、ベルリンのとあるスタートアップで内定をもらっていました。そのとき初めてベルリンを訪れて、多様な人を受け入れそうな街の雰囲気が気に入ったそうなのです。

当時は内定を断ってMBA留学を選びましたが、取得後はベルリンで就職したいと考えるようになりました。そして、就職活動中に「ベルリンで就職したいのなら、現地に来ないと」と言われて、ベルリンに来たのです。

 

ベルリンでフリーマーケターに

 

滞在許可なしでドイツにいられるのは最長3ヵ月。その間に仕事を見つけるつもりでしたが、すぐにムリと気づいたそうです。しかし、ベルリンにいたかった塚田さんは、フリーランスとして滞在許可(ビザ)を取得することに成功しました。さらに、滞在許可申請のために就職活動先に推薦状を頼んでいたところ、そこからフリーとして実際に仕事をもらえるようになったのです。

「日本人で、英語ができて、グローバルで働いた経験のあるフリーマーケターは少なかったんです。それで、小さな会社からのニーズはたくさんありました」

仕事を得るには口コミや自分の営業で。フリーランサーにとって、口コミはとても大切。一度信頼関係を築ければ仕事はつながりますし、ほかの人に紹介してもらえることもあります。塚田さんの場合も、口コミで仕事をもらえることが多かったそうです。

 

プレゼン準備。まずは紙に概要を書き出します。

プレゼン準備。まずは紙に概要を書き出します。



 

ベルリン→フランクフルト→再びベルリンへ

 

やがてビジネスSNSのLinkedInを通じて、ドイツの会社で社員として働くことに。その後フランクフルトで、現在の会社への入社が決まりました。英語で仕事ができるケースはフランクフルトよりもベルリンのほうが多いそうですが、募集するポジションが低いために給与も低い傾向とか。フランクフルトのほうが給与水準は高いそうです。

フランクフルトの会社はeコマース関係で、デジタルマーケティング・コンサルティングが塚田さんの仕事です。担当エリアはEMEA(ヨーロッパ・中東・アフリカ)。塚田さんにとって、日本と関係のない初の仕事。「ドイツ人がやってもいい仕事に就けたことで、一歩進んだ気がします」と話します。

オフィスはフランクフルトですが、上司やチームメンバーは各地でリモートで働いています。フランクフルトに引っ越してからもベルリンに住みたいと思っていた塚田さんは、ベルリンでのリモートワークを会社に希望すると、あっさり許可が下りました。

 

シェアオフィスのキッチン。一般宅のように心地よさそうです。

シェアオフィスのキッチン。一般宅のように心地よさそうです。



 

これから海外で働きたい人へ

 

日本とドイツでキャリアを積んできた塚田さん。今後もいいチャンスがあれば、転職を考えるそうです。

「グローバル企業のもと、グローバルなメンバーで働くのが理想ですね。ドイツという国で働けることに感謝しています。でも、ドイツ人と同じ舞台に立とうとするのではなく、自分の経験によってドイツに貢献できればいいと思っています」

塚田さんのように、海外で社員として働くにはどうしたらいいのでしょうか。

「日本で何か一つの専門分野を極めるのがいいですね。時代の流れが速いので、どんな分野がいいのかは難しいところです。結局、今やっていることにベストを尽くすのがいいのではないでしょうか」

一つだけ言えるのは「大学は出たほうがいい」ということ。

「ヨーロッパでは修士の資格を持っている人が多いんです。海外で外国人として仕事をするなら、大卒であることが最低限の切符になることも多い。大学のランクは関係ありません。それと、キャリアに一貫性があることも大切です。その状態でようやくスタートラインに立てます」

海外に出るのに王道はない、と塚田さん。だからこそチャレンジのしがいがあるのではないでしょうか。

「いろいろやって途中でやめてもいいんです。日本に帰ってもいい。人生、そこで終わったりしませんから

海外でチャンレンジした経験は、どういう結果であれ失敗ではない。塚田さんの言葉に、私も心から同意します。

 

久保田 由希

東京都出身。小学6年生のとき、父親の仕事の関係で1年間だけルール地方のボーフムに滞在。ドイツ語がまったくできないにもかかわらず現地の学校に通い、カルチャーショックを受け帰国。大学卒業後、出版社で編集の仕事をしたのち、フリーライターとなる。ただ単に住んでみたいと、2002年にベルリンへ渡り、そのまま在住。書籍や雑誌を通じて、日本にベルリン・ドイツの魅力を伝えている。『ベルリンの大人の部屋』(辰巳出版)、『歩いてまわる小さなベルリン』『心がラクになる ドイツのシンプル家事』(大和書房)、『かわいいドイツに、会いに行く』(清流出版)、『きらめくドイツ クリスマスマーケットの旅』(マイナビ出版)ほか著書多数。新刊『ドイツ人が教えてくれたストレスを溜めない生き方』(産業編集センター)。散歩、写真、ビールが大好き。

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久保田 由希