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女優として活躍の場を求めて身一つでドイツへ 小倉亜美さん

ドイツを拠点に国際派女優を目指す、小倉亜美さん

女優として活躍の場を求めて身一つでドイツへ 小倉亜美さん

生まれてからわずか3ヵ月で、父親の仕事の関係でヨーロッパに移住した小倉亜美さん。フランスに6年、イギリスに4年半、ドイツに3年と、合計14年以上をヨーロッパで過ごしました。「もういちどヨーロッパに住みたい」という夢を叶え、今年2018年に国際派女優を目指してベルリンに移住した小倉さんですが、これまでの道のりは決して平坦ではありませんでした。

 

学芸会で演劇に目覚める

 

小倉さんは、現在は女優・モデルとしてベルリンを拠点に活動中。映画やCMのオーディションを受ける日々です。演劇に初めて興味を持ったのは、デュッセルドルフの日本人学校に通っていたとき。オーディションを経て出演した学芸会での評判がよく、うれしかったそうです。みんなで一つのものを創り上げる達成感も特別なものでした。

 

14歳で日本に帰国してからは、長い海外生活のために外国人扱いされ、「日本で受け入れられないと思った」そうです。しかし高校受験のタイミングで、東京に引っ越すことに。帰国子女ということで、外国語科がある都内の高校に合格しました。授業の半分が英語ネイティブの先生によるもので、高校2年生のときには2ヵ月間アメリカで研修も経験しました。

 

高校時代の小倉さんは太っていることにコンプレックスを感じており、女優への夢にもチャレンジしていませんでした。そんな小倉さんに、仲のよかったアメリカ人女性の校長先生が英語スピーチコンテストに出場することを勧めたのです。コンテストで見事優勝した小倉さんは、次々に他のコンテストにも出場して上位の成績を収めました。それがきっかけで日本の大学に推薦入学ができるようになりましたが、女優の夢を再びふくらませた小倉さんは専門学校のミュージカル学科に入学。しかし向いていないとわかり、退学して進路について悩んでいたときに「やっぱり海外」という気持ちが強くなったのです。

 

幼少時代をヨーロッパで過ごした小倉さん。

幼少時代をヨーロッパで過ごした小倉さん。



 

アメリカで演劇を勉強

 

向かった先はアメリカでした。日本のNICカレッジで1年間学んだ小倉さんは、その履修単位を持って提携校のカリフォルニア州立大学に入学。そこで演劇の授業を選択し、「やっぱり演劇が好き!」という自分の気持を確認しました。アメリカの演劇メソッドは、日本のものとはまったく違うそうで、日本でもう一度演劇に挑戦してみたくなったそうです。

 

しかし、日本に帰国してプロダクションに所属したり、演劇スタジオでトレーニングをしたものの、なかなかうまくいきません。

「当時30歳を超えていて、所属事務所もなくフリーでした。オーディションも通らないし、どうしようかと悩んだ末に、これがラストチャンスだと思い、育ったヨーロッパに戻ることを決意しました」

 

コンサルに依頼し、ドイツ滞在許可取得めざして書類集め

 

ヨーロッパ移住に照準を当て調べたところ、ドイツでフリーランスとして滞在許可が下りることをブログで知ったのです。最初は「フリーランスって何?」という状態だったそうですが、いろいろ調べるうちにフリーランスの俳優としてドイツに移住できる可能性があるとわかりました。

そこでベルリン在住の日本人コンサルタントに依頼し、滞在許可取得に必要な書類を一つずつ集めていったのです。

 

書類集めで大変だったのは、それまでの実績の証明と現地クライアントの推薦状集め。ドイツのエージェントに集中的に営業し、約150社にメールを送付。正式にドイツに来る前に短期間ベルリンに滞在した小倉さんは、その間に直接会いに行ったりしたそうです。

ドイツの国民的番組の日本ロケに出演したり、日本のクラウドソーシングサイトに登録して、日本企業から定期的なナレーションの仕事も受けました。

そうした推薦状が功を奏したのか、ベルリンで3年の滞在許可が下りました。

 

常に営業、そしてキャスティングオーディション

 

現在小倉さんは、毎月6〜7回はCMなどのキャスティングにチャレンジしています。エージェントから紹介があり、書類審査に通ったら初めてキャスティングに参加できるという流れ。ドイツ語を勉強中の小倉さんですが、クライアントはグローバル企業が多いためか、英語でもOK。アジア人俳優のニーズも増えているように感じるそうです。

 

「ドイツに来る前も、来てからもエージェントに営業メールを送っています。合計250社くらいでしょうか。本当に仕事をもらえるのかな? と思っていましたが、あるエージェントから突然キャスティングの知らせがくることもあります。どこで何につながるかわからない。常に自らアンテナを張り続けていくことが大事だと感じています」

 

職業は違えども私も同じフリーランスなので、とてもよくわかります。常に自分から営業していくことはフリーの基本。海外滞在もちょっと似ているかもしれません。誰かがお膳立てしてくれるわけでなく、自分から向かっていかないと何も始まらないのが海外生活です。

 

常にチャンレジし続けています。

常にチャンレジし続けています。



 

自分と向き合えるドイツの生活

 

最初はわからないことばかりで不安だった、という小倉さん。ですが今は、自分の本音と向き合う時間が取れていると感じています。

 

「日曜にお店が休みになるなど、ドイツ人は休むのがうまいというか、オンオフのリズムを大切にしていると思います。だから心と身体のバランスが取れていて、余裕もあるのかもしれません。ヨーロッパの人は、自分の心に従って生きているように思いますね。私もマイペースで自分の満たし方をベルリンで学んでいるところです」

 

ドイツに住み始めて、自分が本当に好きなことは台本に向かうことだと気づいたそうです。映画も舞台も好きという小倉さん。いつかは、ヨーロッパでアジア人女優といえば小倉亜美と言われるようになりたいと、今日も活動しています。

 

小倉亜美さんHP

http://amiogura.com/

 

【株式会社Oto-no】「清水すしギャラリー」英語ナレーション

(Shitamachi-dori, Shukuba-doriを担当)

http://www.dream-plaza.co.jp/enjoy_dreamplaza/sushim/otono/en/index.html

 

【株式会社Oto-no】「清水港船宿記念館  末廣」英語ナレーション

https://www.otono.site/suehiro

 

【株式会社Oto-no】「三保松原物語」英語ナレーション

https://www.otono.site/mihonomatsubara

 

【株式会社Oto-no】「声優紹介ページ」

https://www.otono.site/otonocreator

 

小倉さんが依頼したベルリンの日本人コンサルタント【cc-nippon】のブログ

http://cc-nippon.hatenablog.com

 

 

久保田 由希

東京都出身。小学6年生のとき、父親の仕事の関係で1年間だけルール地方のボーフムに滞在。ドイツ語がまったくできないにもかかわらず現地の学校に通い、カルチャーショックを受け帰国。大学卒業後、出版社で編集の仕事をしたのち、フリーライターとなる。ただ単に住んでみたいと、2002年にベルリンへ渡り、そのまま在住。書籍や雑誌を通じて、日本にベルリン・ドイツの魅力を伝えている。『ベルリンの大人の部屋』(辰巳出版)、『歩いてまわる小さなベルリン』『心がラクになる ドイツのシンプル家事』(大和書房)、『かわいいドイツに、会いに行く』(清流出版)、『きらめくドイツ クリスマスマーケットの旅』(マイナビ出版)ほか著書多数。新刊『ドイツ人が教えてくれたストレスを溜めない生き方』(産業編集センター)。散歩、写真、ビールが大好き。

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久保田 由希