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和のあるライフスタイルを提案 小牟禮友子さん

ベルリンにKOKONをオープンした小牟禮友子さん

和のあるライフスタイルを提案 小牟禮友子さん

麻の葉に青海波、色とりどりの花模様。ショップKOKON(ここん)の店内には、馴染みのある和柄の小物が並んでいます。店主は小牟禮友子(こむれ・ともこ)さん。2017年10月にベルリンでこのお店をオープンしました。

和柄ハンドメイドバッグや生地などが並びます。

和柄ハンドメイドバッグや生地などが並びます。



 

ヨーロッパで和柄の美しさを再発見

 

KOKONは、小牟禮さんが作るオリジナルグッズのブランド名であり、店名でもあります。店内にディスプレイされているバッグやポーチなどの小物の多くは、小牟禮さんによるハンドメイド。日本で昔から好まれ、受け継がれてきた古典柄の生地が多く使われています。

小牟禮さんはもともと帽子作りを学ぼうと、ワーキングホリデーでフランスに渡りました。しかし現地では安い製品に押されて、手作りによる帽子の需要がないとことがわかり、それなら帽子の生地でバッグを作ってみようと思ったのが、今につながっています。

和柄にこだわっているのは、ヨーロッパでその美しさを再発見したため。「和柄がとても新鮮に見えたんです」と話します。

日本で購入した和柄の生地でバッグを作り、フランスのマーケットに出品してみたところ評判に。そこから「ハンドメイドの和柄小物」を作るようになり、2011年にパリでKOKONブランドを立ち上げました。

 

日本で買い付けた商品もいろいろ。

日本で買い付けた商品もいろいろ。



 

店を出すならベルリンで

パリでスタートしたブランドなのに、なぜベルリンでショップをオープンしたのでしょうか。

「ベルリンには2009年に友人と一緒に初めて旅行をして、いいなと思ったんです。そのときは移住は考えていませんでしたが、2011年に今度は3週間滞在したときに、この街は暮らしやすそうだなと思ったんですね」

そのときに小牟禮さんが歩いたのが、ベルリンのミッテ地区のあたり。お店やカフェなどのインテリアがとてもよく、居心地のいいカフェもあり、パリとは違うセンスが気に入ったのだそうです。

「どちらかというとパリは古典的な雰囲気のカフェが多いのですが、ベルリンはカジュアルでモダンなインテリアで、居心地のいいカフェが多いと思います」

ベルリンとパリは飛行機で1時間半程度の距離なので、私もときどきパリに旅行に行きますが、確かに雰囲気はずいぶん違うと思います。ベルリンは戦争で街が破壊されたり、その後東西ドイツに分断されたという背景もあると思いますが、若い人たちが自分たちのセンスでカフェやショップをオープンしやすい気がします。

ベルリンでは古典的な和柄が人気だそうです。

ベルリンでは古典的な和柄が人気だそうです。



華やかな和柄のハンドメイド・スマホケース。

華やかな和柄のハンドメイド・スマホケース。



 

じつは小牟禮さんがベルリンに拠点を移した理由も、ここにありました。いずれは自分のショップを持ちたいと願っていた小牟禮さんは、パリでのオープンが金額的に現実的ではないと判断したのです。

パリでの店舗物件契約は、家賃や不動産仲介料のほかに、以前の店子に払う営業権という項目があり、これがかなりの金額になるそうなのです。

「店舗物件だけでなく、住環境もベルリンのほうがよかったんです。今ではベルリンの家賃も上がって家探しも難しくなっていますが、2011年頃はまだ家賃も安くて、パリの半分程度の金額で、倍の広さの部屋を借りられたんです」

家をアトリエとしても使っていた小牟禮さんにとっては、テーブルに布地をずっと広げたままでいられる広さの部屋を借りられたのは、大きな魅力でした。2012年にベルリンで部屋を借りて、パリと行き来する生活を送り、2014年にベルリンに移住しました。

 

地域密着とインターナショナルな活動の2本柱

お店オープンからまだ半年ほど。今は、以前から力を入れていた2つのイベントでの販売を重視しています。

1つは、デュッセルドルフで毎年夏に開かれる、日本デー。2つ目はパリ開催のイデ・ジャポン。どちらも人気の日本関連イベントで、販売ブースを出しています。

日本デーとイデ・ジャポンのパンフレット。どちらも大人気の日本イベント。

日本デーとイデ・ジャポンのパンフレット。どちらも大人気の日本イベント。



 

もちろんイベントだけでなく、店の活動プランも考え中です。

「地域密着の活動と、インターナショナルなイベント活動の2つの面を両立していくつもりです。お店では地域に根ざした活動ということで、ワークショップを計画しています。例えば、折り紙で鶴を折ってモビールにしたりとか、缶に和紙を貼って茶筒を作ったりなどですね」

ショーウィンドウに飾っている、折り鶴のモビール。

ショーウィンドウに飾っている、折り鶴のモビール。



 

ドイツ人は一般的に財布の紐が堅いと言われており、小牟禮さんもそう感じているそうです。

「商品を買うだけなら、ネットで検索すれば安い店がいくらでも出てきます。でも体験はその場でしかできないもの。そういう場を提供し、和のライフスタイルを提案したいです」

 

日本ファンが集まるエリアに盛り上げたい

お店があるベルリン・プレンツラウアー・ベルク地区は、日本関連のお店がいくつも集まっているエリア。以前このコーナーでもご紹介した文具店の「ソワレ」や、和箪笥と骨董の「えにし」、和食の「ささや」、焼肉「うし道」などの人気店は、徒歩で簡単に回れる距離です。

「同じエリアに日本のお店が集中すれば、自然と集客力が高まります。お互いに協力して、エリアとして盛り上がれたらいいなと思います」

日本の魅力は、雑貨や飲食を通して徐々に浸透していっていると思います。KOKONもその一端を担う存在となることでしょう。

KOKON
Schliemannstr. 46, 10437 Berlin
https://www.instagram.com/kokondesign/

 

久保田 由希

東京都出身。小学6年生のとき、父親の仕事の関係で1年間だけルール地方のボーフムに滞在。ドイツ語がまったくできないにもかかわらず現地の学校に通い、カルチャーショックを受け帰国。大学卒業後、出版社で編集の仕事をしたのち、フリーライターとなる。ただ単に住んでみたいと、2002年にベルリンへ渡り、そのまま在住。書籍や雑誌を通じて、日本にベルリン・ドイツの魅力を伝えている。『ベルリンの大人の部屋』(辰巳出版)、『歩いてまわる小さなベルリン』『心がラクになる ドイツのシンプル家事』(大和書房)、『かわいいドイツに、会いに行く』(清流出版)、『きらめくドイツ クリスマスマーケットの旅』(マイナビ出版)ほか著書多数。新刊『ドイツ人が教えてくれたストレスを溜めない生き方』(産業編集センター)。散歩、写真、ビールが大好き。

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久保田 由希