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「ヨーロピアン・アウトドア・フィルム・ツアー」がやってきた 7つの壮大な作品に沸いた日曜夜

ドルトムントにやってきた「ヨーロピアン・アウトドア・フィルム・ツアー」の日曜夜の回は、500人の来場者で満員御礼 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

「ヨーロピアン・アウトドア・フィルム・ツアー」がやってきた 7つの壮大な作品に沸いた日曜夜

連載「アクティブ ドイツ!」<16>

ドルトムントのイベントスペース「FZW」に、「ヨーロピアン・アウトドア・フィルム・ツアー」(European Outdoor Film Tour、以下EOFT)がやってきました。EOFTは、10月にミュンヘンのプレミア上映で幕を開けたツアーで、15カ国300以上の会場でアウトドアをテーマにした動画が上映されます。どういったイベントなのか、また上映内容に興味があり、日曜日の夜の回を覗いてきました。

|2001年にスタートしたイベント


…と、本当に「覗く」程度の軽い気持ちで出かけたのですが、会場に到着してみると予想以上に大賑わい。500人の観客が上映を待ちわびていました。「こんなにたくさんの人がアウトドアの動画に感心があるのか」と驚いているわたしに、「EOFTは2001年にスタートしたイベントで、毎年上映箇所や都市を拡大してきました」と会場スタッフが誇らしげに教えてくれましたよ。

イベントの冠スポンサー&ブランドは、スイスのアウトドアブランド「マムート」(Mammut)と誰もが知っているアウトドアマテリアル「ゴアテックス」(GORE-TEX)。そのほかイベントパートナーとして「BMW」や「ツァイス」(Zeiss)、ことし新たにパートナーに加わった「ケルヒャー」(Kärcher)などが名を連ねています。

ドルトムントの「ヨーロピアン・アウトドア・フィルム・ツアー」会場となったFZWのエントランス。巨大なマンモスはスポンサー「マムート」のアイコン Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

ドルトムントの「ヨーロピアン・アウトドア・フィルム・ツアー」会場となったFZWのエントランス。巨大なマンモスはスポンサー「マムート」のアイコン Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA



2017/18年のEOFTは、開幕後毎日最大6都市で同時開催。休憩時間を含め2時間半〜3時間、総上映時間120分に再編集された7本の動画をドリンクを片手に楽しむことができました。客層は20代〜40代といったところでしょうか。アウトドアブランドのロゴがそこここで目につくファッションは、オーケストラのコンサートホールやクラブパーテイーとは異なる雰囲気でした。

|会場を沸かせた2作品


EOFTで上映される動画は、毎年応募される作品の中から厳選されます。動画の主役は、登山家やアスリートたち。2017/18年は、マウンテンバイク、アマゾン体験+カヌー旅、カヤックといった一般にイメージしやすいものから、パラシュートで風を受けて氷上(雪上)を進むカイトスキー、氷の壁やトンネルを猛スピードで下っていく氷河スキー、命綱なしのフリークライミング、高所からパラシュートを用いて降下するベースジャンプなどのシーンを観ることができました。

わたし個人の感想として、数々のエクストリームスポーツやアドベンチャーシーンを世界中で収録し発信し続けている「レッドブル」には映像美の観点では正直かなわないという印象でした。けれどEOFTでは、ドキュメンタリー動画として観応えのある作品づくりを感じることができました。特に、カナダ・フレーザー川に沿ってマウンテンバイクライドをする『Follow the Fraser』とイギリス人の若者ふたりが川下りをカヌーづくりから体験するためアマゾンの消えゆく部族を訪ねた『Dug Out』の2作品が光っていました。観客をもっとも沸かせた作品と言ってもいいかもしれません。

『Follow the Fraser』をはじめEOFT採用作品のトレーラーはオンラインで観ることができる Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

『Follow the Fraser』をはじめEOFT採用作品のトレーラーはオンラインで観ることができる Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA



『Follow the Fraser』は、3人のマウンテンバイクライダーが自国の大自然を体感していくロードムービー。彼らのフレーザー川を取り巻く自然への想いは、朗らかで暖かな“心の旅”として観る側に伝わってきました。それと共に繰り広げられるダイナミックなライド。壮大なダウンヒルを目の当たりにした観客席にはホイッスルが響き、「落差に体が震えた」とダウンヒル後にこわばった笑顔で話す等身大のライダーには笑いが沸き起こっていました。

『Dug Out』では、部族の一家族と過ごす(彼らにとっての)冒険的な日々の描写が彼らのユーモアのセンスも相まって、会場全体が夢中になって鑑賞している様子でした。それゆえ、撮影が行なわれた後に、部族は以前より交渉を迫られていたオイル会社に結局土地を売却することになった――というエンディングのギャップは激しく、観客は言葉を失うばかり。現在わたしたちが抱える環境・社会の問題提起として、わたしの心にも深く刺さりました。

 「台本なし、役者なし、特殊効果なし」と謳うEOFT。ところどころ台本らしい雰囲気が見え隠れしていたのはご愛嬌として、7作品ともに大自然の中で繰り広げられるリアルなストーリーにはたちまち引き込まれました。どんな内容なのか、EOFTのウェブサイトや公式YouTubeチャネルでの無料トレーラーにて観ることができますよ(これまでのEOFT上映内容はアーカイブとしてDVD販売、オンデマンド配信がされているようです)。

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シュルテ柄沢 亜希

Aki SCHULTE-KARASAWA ● 1982年生まれ、ドイツ・ドルトムント在住。フリージャーナリスト。執筆ジャンルは自転車・アウトドアアクティビティ、スポーツ、旅、食、アート、ライフスタイルなど文化全般。幼少期の5年間をハンブルクで過ごしたことがアイデンティティのベースにある。好きなものは、ビール、チーズ、タマゴ――ワイン、日本酒、ウイスキーも大好き。ランニング、ロードバイクライドにてカロリーを相殺する日々。ブログ「ドイツのにほんじん」に日記をつけ、産経デジタル「Cyclist」、三栄書房「GO OUT」などで執筆中。

シュルテ柄沢 亜希