ちょっとキケンな「お誕生日」#異文化あるある
先日コラムにドイツのお誕生日事情について書きました。ドイツでは相手にzum Geburtstag gratulierenすることで人間関係が円滑になったりするので、相手の誕生日を祝うことに熱心なドイツ人が多いです。
そんなわけで、ドイツではプライベートのみならず職場などでも、同僚や、部下、上司の誕生日には"Alles Gute zum Geburtstag!"とお祝いメッセージを送ったり、それが雰囲気の良い職場であれば、みんなでお祝いをしたりもします。ほのぼのとしていて楽しいですね。しかし日本に来て、「お誕生日」というものについて「そのまんま」(つまりドイツのまま)の感覚でいると、ちょっとしたハプニングを引き起こしてしまうことも。
実際にドイツ人の上司のもと働いていた日本人女性A子さんのお話。ある日、お昼休みからオフィスに戻ってくると、上司に“Alles Gute zum Geburtstag!“(「お誕生日おめでとう」)と言われかわいいお菓子でお祝いをしてもらったのだとか。ところが、そのオフィスには他の日本人の同僚も居合わせていて、話の流れから、そのうちの一人から「ところで、A子さんって、何歳になったの?」とみんなの前で聞かれるハメに。A子さんは、年齢は特に公表していなかったため、一瞬濁そうとしたものの、周りのドイツ人達に“Ach komm schon.“(そんなにもったいぶらないで教えてよ、というようなニュアンス)と言われたのだとか。
これなど、まさに上司が「やらかしてしまった」感がありますね。ドイツ人にとってのzum Geburtstag gratulieren(相手の誕生日を「おめでとう」と祝う)は日本における年賀状の送付のようなものでもあったりするので、特に深く考えず「おめでとう」と言うものなのですが、日本においては一定の数「相手(特に女性)の年齢を知りたがる類の人」というのもまたいて、その手の同僚が職場という公衆の面前で「A子さん、何歳?」と堂々と聞けてしまう、というような状況をこのドイツ人上司は作ってしまったわけです。さらには、Offenheit(オープンさ)や情報公開を良しとするドイツ人から「いいじゃない、いいじゃない。おしえてよ」(“Ach komm schon.“)と追い打ちをかけられるというオマケつきだった---A子さんはそうタメ息をつきました。
日本の社会では「年齢(特に女性の年齢)にこだわる人」が多いからこそ、あえて年齢を公開しない女性もいます。実際に年齢を言うと、様々なことを決めつけられてしまうシチューエーションがあったりもします(「この女性は何歳だから、家族構成はきっとこうなはず」などと相手が勝手に想像しがち)。そういった風潮も考慮すると、日本の職場で気軽に他人の誕生日を祝うのはちょっぴり危険かもしれません。人間関係が悪化はしないまでも、公衆の面前で年齢を暴露させられてしまった側としては一種のモヤモヤは残るわけです。
まあ、この上司に悪気は全くないのでしょうが、ドイツ人のある種の『ノリ』に日本人が巻き込まれてしまった感じですね(笑)
お誕生日を純粋に祝う!というのは素晴らしいことなのだけれど、それに便乗して「何歳なの?」と聞き出そうとしたり、その後「年齢のわりに何とかだよね」などと余計なコメントをする輩が出てこないとも限らないので、ここは「そういう雰囲気にならないように」配慮するのも上司の務めなのでは?と日本的な感覚からすると思ってしまいますね。
そして、「誕生日の日にちも個人情報」だと気にする人は気にするので、日本においては職場での「誕生日」にまつわるあれこれには気を付けたほうがよいかもしれません。(ドイツの感覚だと、なにウルサイことを言ってるんだ、という感覚ではあるのですが・・・)
この手の話は一歩間違えると「セクハラ」にもつながりかねないので(もし誰かが「年齢のわりに体型がナントカだよね」とか言い出したら、もうアウト)、気を付けたいところです。