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野球にもブンデスリーガあります 「ドルトムント・ワンダラース」のホームグラウンドでほのぼの観戦

ドルトムント北西に位置するホッシュパークの野球グラウンドは、野球クラブ「ドルトムント・ワンダラース」のホーム Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

野球にもブンデスリーガあります 「ドルトムント・ワンダラース」のホームグラウンドでほのぼの観戦

連載「アクティブ ドイツ!」<9>

「ドルトムントのブンデスリーガチーム」と聞いて10人中10人が思い浮かべるのは、サッカーの名門「ボルシア・ドルトムント」でしょう。日本語で「ブンデスリーガ」というとほぼ100%ドイツサッカーを指しますが、本来ブンデスリーガは主にスポーツジャンルでの国のトップリーグを意味します。つまり、ハンドボール、テニス、卓球、バレーボール、陸上競技… どの競技にもブンデスリーガがあります。今回、ドルトムントで野球の北部ブンデスリーガマッチがあると聞いて駆けつけました。(2017年4月28日)


|美しい野球グラウンド

試合が行なわれたのはドルトムント北西に位置する「Hoeschpark」(ホッシュパーク)。ホッシュは、鉄鋼・石炭の生産で栄えたドルトムントにあって、それを支えた大企業のひとつ。ホッシュパークは、炭や汗にまみれて働くホッシュ社員や周辺住民の憩いの場として一企業とナチスドイツにより築かれた公園です。

ホッシュパークは、緑に癒されレクリエーションを楽しめる場。写真左が野球グラウンドで右が陸上競技とサッカーグラウンド Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

ホッシュパークは、緑に癒されレクリエーションを楽しめる場。写真左が野球グラウンドで右が陸上競技とサッカーグラウンド Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA



広大な面積を持つホッシュパークは、炭や煙で覆われた一帯に緑豊かな潤いをもたらしただけでなく、レクリエーションの場としても充実した設備を備えていました。中でも温水プールは当時としては画期的で、鉄鋼を作り出す過程で発生する熱を再利用した温水システムが採用されていました。また1909年、ボルシア・ドルトムントの最初の試合が行なわれたグラウンド「Weiße Wiese」は同公園内にあります。



さらにホッシュパークには、自転車用のトラックまで用意されていたとのこと。現在では自転車トラックはありませんが、石造りの斜面にトラックの名残を見ることができます。そしてこのトラックの内側を利用して設けられたのが、今回の試合が行なわれた野球グラウンド。ホッシュパークは2004年にドルトムント市に買い取られ、2006年に野球グラウンドが整備されました。

|サッカー大国での野球

ホッシュパークの野球グラウンドは、きれいなグリーンが特徴的。わたしが到着した時は、選手たちが試合の準備中でした。その光景に思わず懐かしさがこみ上げてきて気付いたのですが、そういえばドイツへ移り住んで以降野球のグラウンドって見てなかったんですね。日本にいた頃は、夏の甲子園はもとより意識せずともスポーツ紙やニュースなどで頻繁に野球関連の風景を目にしていたのでしょう。ホッシュパークの野球グラウンドを、しばし微笑みながら見つめてしまいました。

石段に思い思いに腰掛けて野球を観戦する人々 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

石段に思い思いに腰掛けて野球を観戦する人々 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA



なんといってもドイツはサッカー大国。ドルトムントの野球クラブ「Dortmund Wanderers」(ドルトムント・ワンダラース)の紹介ページも、「ドルトムントでスポーツの話とあれば当然サッカー。わたしたちもそう思います」となんとも控えめなコメントで始まっていました(笑)

クラブ創設は1989年。紹介文はその後、サッカー人気に押されているものの「情熱では負けない」と続きます。実際ワンダラースのチームには、ブンデスリーガから混合ソフトボール、子ども対象とあらゆる年齢層・男女のがそろい、野球への想いを感じます。

スタート前に気合を入れるドルトムント・ワンダラースの選手たち Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

スタート前に気合を入れるドルトムント・ワンダラースの選手たち Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA





|日本人選手も活躍

この日は、ハンブルクのクラブ「Hamburg Stealer」(ハンブルク・スティーラー)を相手に2試合。ブンデスリーガの試合ですが、観戦に訪れたのは50人程度でほのぼのとした雰囲気です。売店は1カ所。観客はグラウンド横の石段にそれぞれマットや椅子を持ち寄って長丁場に備えていました。



グラウンドとの距離は近く、選手たちの声がよく聞こえます。「落ち着いて」「その調子ー」などの掛け声が飛び交っていましたが、共通言語はどうやら英語。チーム名は両チーム共に英語ですし、最近「アメリカ人選手獲得」といったニュースもホットトピックスにあがっていました。やはりアメリカのスポーツですね…と思ったら、会場アナウンスに「Yosuke DOTA」と響き渡りました。ワンダラースには日本人選手も所属していたんですね!

「Yosuke DOTA」のアナウンスで登場した打者は日本人選手! Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

「Yosuke DOTA」のアナウンスで登場した打者は日本人選手! Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA





ネットに張り付いて観戦していると、盗塁を伺う様子やヒットを目の前に見て楽しむことができました。場外ボールを子どもたちが競い合って追いかけていたのは微笑ましい。ワンダラース対スティーラーの試合結果は、各1:3、2:0。わたしは最後まで見届けはしませんでしたが、観戦中の会場全体がほのぼのとしていてスティーラーにもアウェイ感はなかったのではないかと感じました。「野球をやっている仲間」――そんな心のつながりがあったのかもしれません。

ホッシュパークの野球グラウンドを試合前に整備する選手たち Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

ホッシュパークの野球グラウンドを試合前に整備する選手たち Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

シュルテ柄沢 亜希

Aki SCHULTE-KARASAWA ● 1982年生まれ、ドイツ・ドルトムント在住。フリージャーナリスト。執筆ジャンルは自転車・アウトドアアクティビティ、スポーツ、旅、食、アート、ライフスタイルなど文化全般。幼少期の5年間をハンブルクで過ごしたことがアイデンティティのベースにある。好きなものは、ビール、チーズ、タマゴ――ワイン、日本酒、ウイスキーも大好き。ランニング、ロードバイクライドにてカロリーを相殺する日々。ブログ「ドイツのにほんじん」に日記をつけ、産経デジタル「Cyclist」、三栄書房「GO OUT」などで執筆中。

シュルテ柄沢 亜希