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ああマナーってむずかしいPart2 「鼻チーン」と「マナーハラスメント」のお話

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ああマナーってむずかしいPart2 「鼻チーン」と「マナーハラスメント」のお話

ここ数年ニッポンのメディアで何かと話題になっている「マナー」。

 

特に最近は【電車内でのマナー】について頻繁に話題に上がっている印象。

 

「電車の中での化粧」をとがめる某鉄道会社のマナーポスターについて議論になったり、

 

つい最近だと「車内では足をそろえて座りましょう」というマナーポスター話題になったり。

 

実際に日本では駅構内や電車の中などいたるところに「マナーポスター」が貼られています。

 

「リュックサックは背中ではなく前に抱えて乗るように」

 

というものから

 

おなじみの「携帯電話のご使用はご遠慮ください」まで。

 

基本的なことをいうとニッポンの、いえ東京の電車は混んでいますので、

 

個人の暴走によって大衆に迷惑がかからないように、この手の「マナー」がより重要視されている面はあるかと思います。

 

が、ぶっちゃけドイツ的な感覚からいうと

 

「めっちゃ細かい」ですね。日本のマナーポスターは。

 

ドイツに関していえば、ご存知のように電車の中で携帯電話で話す人がちょくちょくいたりします。

 

「電車の中で携帯電話で話すこと」は「マナー違反だからやめましょう」という事にはなっていないのですね@ドイツの電車。

 

そのため、ニッポンに観光や出張で来日したドイツ人に関しては

 

この携帯電話のマナーに関しては、

 

ついins Fettnäpfchen tretenしてしまうようです。

 

向こう(それはドイツ)の感覚のまま日本の電車に乗り、

 

携帯電話がなると、電車内で「はいよ!」(実際には“Ja Hallo!!“)なんて元気よく電話に出ちゃったり、

 

新幹線の中でも座席に座ったまま堂々と電話に出ちゃう・・・なんていうことはよくある話です。

 

そんな時に「外人はマナーが悪い!よくわかっとらん!」とえらくご立腹したり軽蔑のまなざしで見るのは簡単ですが、

 

果たしてそれが「人間的」かというと、そうではないかと。

 

注意するにしても「感じよく」がポイントだと思うのですよ。

 

そう、「感じよく」。これ、大事。

 

なぜって、その国の集団(日本人)に属さない人(つまりは観光客や出張中の外国人)が

 

その国のマナーに疎いのはいわば当たり前なので、

 

そこを「マナーを破った!」とばかりに冷たい視線を浴びせたり、呆れたり、嫌悪感を示すのは、簡単だけれど

 

なんだか違うなと。

 

基本的に私は「郷に入れば郷に従え」という考え方には賛成なのですが、

 

マナーも含め、その人の「行動」って、頭ではわかっていても、「つい習慣から」やってしまうことも多いのですね。

 

例えば、ドイツにおいては、風邪や花粉症で鼻が詰まり

 

それを(鼻をかまずに)「ズルズル」すすることが「マナー違反」だとされています。

 

で、日本人が何らかの事情でドイツに行って運悪く風邪をひいてしまったときに、

 

パッとマインドを切り替えて、【鼻ズルズルを一切やめる!】って意外とそう簡単にできないものですよ。

 

電車内で怖そうなドイツ人のおばさんに「鼻かみな!」とばかりにTempo(ドイツのティッシュです)を差し出されたところで、

 

果たして即ドイツ風に勢いよく「チーン」と鼻をかめるのかというと・・・無理無理無理!という日本人も多いことでしょう。

 

それでやっぱりというか、うっかりというか、いつもの調子で鼻ズルズルしちゃう。

 

そこに悪気はないですし、そこをあんまり冷たい目で見るのもよくないな、なんて思うわけです。

 

だって鼻をズルズルすすることも、電車内で携帯に出ちゃうことだって、犯罪ではないんです。

 

そこを「あいつらはマナーがなってない!!」(「我々のほうがマナーが良い!」)ってやっちゃうのって、なんだかなあ・・・

 

なんて思ったりするわけです。

 

いつでもどこでも「(我々のいう)マナーが一番大事!!」とやっちゃうのって、それこそマナーハラスメントなのかもしれません。

 

人を多面的に見ることをせず、「マナーを守っていない」という側面だけで判断するのってある意味マナハラだと思いますよ(笑)

 

最近「マナー」という便利な言葉を盾に

 

自分の気に食わない人を叩くという風潮があったりしますが、そっちのほうが怖いなと感じています。

 

たとえば自分とは同じ集団に属さない人(それは例えば年配の男性から見た若い女性だとか、日本人から見た外国人だとか)や気に入らない人を、

 

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一挙一動を監視でもするかのようにジーッと観察して、

 

ちょっとでもニッポンの目から見て「マナー違反」があると、

 

ここぞとばかりに、

 

「ほ~らそれみろ。これだから最近の若い女性は…」とか「やっぱり外国人は…」とやっちゃうのって

 

しつこいようですが人間的にちょっと違うんじゃないかな、と思います。

 

マナーというものが特定の人達を叩くことに使われるようになったらお終いですね。

 

というのも、異なる文化圏の人達が同じ空間(たとえば公共の場)で過ごせば、それぞれに育った国が違うわけですから【習慣】はもとより【マナー】も違うのはいわば【当たり前】。

 

そんな中、マナーよりも大切なもの。

 

それは「コミュニケーション」なのかもしれません。

 

マナー違反を発見して注意するにしても、感じよくフレンドリーに注意できるか。

 

または優しく多めに見てあげるのか。

 

難しいところではあります。

 

「ここはニッポンなんだから郷に入れば郷に従え!」って気持ちになるのもわからないではないですけどね。

 

でもこれからオリンピックというものが日本に再びやってくることを考えると、そしてグローバル人材の誘致はもとより、少子化が問題になっている日本でゆくゆくは介護士として様々な文化圏の人が日本に長期で住むことを考えると、

 

人間同士のかかわりあいは【マナーよりもコミュニケーション能力】なのかもしれません。

サンドラ・ヘフェリン

ドイツ・ミュンヘン出身。日本歴19年、著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ) 、「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ』(原作: サンドラ・ヘフェリン、漫画: ヒラマツオ/KADOKAWA)、「『小顔』ってニホンではホメ言葉なんだ!?~ドイツ人が驚く日本の「日常」~」(原作: サンドラ・ヘフェリン、漫画: 流水りんこ/KKベストセラーズ)」など計11冊。自身が日独ハーフであることから、≪ハーフはナニジン?≫、≪ハーフとバイリンガル教育≫、≪ハーフと日本のいじめ問題≫など「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。ホームページ 「ハーフを考えよう!」 を運営。趣味は時事トピックについてディベートすること、カラオケ、散歩。

サンドラ・ヘフェリン