ドイツ情報満載 - YOUNG GERMANY by ドイツ大使館

お酒も飲めるお好み焼き屋さんをオープン Schuseiさん

Harapeco Japanese Kitchenを開いたSchuseiさん

お酒も飲めるお好み焼き屋さんをオープン Schuseiさん

ジューッという鉄板の音と、タレの焦げる甘辛い匂い。お好み焼きは誰もが大好きな食べ物のひとつではないでしょうか。日本の(関西の?)ソウルフードと言っても過言ではないかもしれません。

私が住むベルリンにも、2016年の夏に本場さながらのお好み焼きを食べられるお店「Harapeco Japanese Kitchen」がオープンしました。

運営するのは、以前からベルリンで飲食店オープンを目標にしてきたSchuseiさん。
ようやく願いが叶ったのですが、オープンに至るまでの道のりは多難だったそうです。

どんな問題があったのか、開店後の歩みはどうかなど、ドイツでの飲食店開業のあれこれをうかがいました。


お好み焼きは大阪モダン、東京、札幌など各種あります

お好み焼きは大阪モダン、東京、札幌など各種あります




■音楽活動をしながら飲食の道へ

もともと北米で音楽活動をしていたSchuseiさんでしたが、さらに新天地を求めてベルリンへと移住したところ、緑が多くて環境がいい点が気に入ったそうです。

Schuseiさんは調理が大好きで、
「好きな音楽とフード、お酒を組み合わせた飲食店をベルリンで出したいと思うようになったんです」と話します。

そこでまずは現場を知ろうと、ベルリン市内の日本料理店数店で計3年間アルバイトして飲食店の基礎を学びました。

やがてSchuseiさんの出店計画をバックアップくれる大阪の企業が現れて出資を受けられることになり、ドイツで会社を設立。ベルリンでお好み焼き屋を開きたいという出資企業の夢を、みんなで叶えたのです。

会社設立当初Schuseiさんは調理だけ担当するはずでしたが、途中から経営に回ったために、大阪の企業から社員が調理スタッフとして急遽ベルリンへ渡りました。企業の社員という立場のまま、今ではベルリンでお好み焼きを焼いています。これもまた、思いがけない成り行きですよね。

提灯や写真入りメニューが目立つ店構え

提灯や写真入りメニューが目立つ店構え




■お酒を提供するはずが……

「Harapeco Japanese Kitchen」のコンセプトは、お好み焼きとお酒のお店。ドイツでは手に入りにくい日本酒を揃えて、お好み焼きと一緒に味わってもらうことを考えていました。

お酒を出すには、許可が必要です。
「『Harapeco Japanese Kitchen』の前には、この場所にパスタレストランがあったんです。そこではお酒も出していたので、お酒の許可は前の店から引き継げばいいだけのはずだったんです」

ところが実際は、このパスタレストランはお酒販売の許可がなかったのではないかという疑問が出て、お酒の許可を一から取得しなければならないとわかりました。そして、このときから長い道のりが始まりました。

まずは管轄の役所に許可の申請に行ったところ、店舗の調査が必要と言われました。周囲への騒音などを調べることになりましたが、役所の職員や騒音調査の会社員が次々とバカンスを取得して、事態が一向に進展しません。
ドイツで2〜3週間のバカンスを取るのは普通のことなので、物事が計画通りに進まないことは、ドイツに住んだ人ならきっと一度は感じたことがあるでしょう。

騒音調査が実現したのは8月になってから。お酒なしでプレオープンした6月から既に2ヵ月が過ぎていました。
そして調査の結果、店でお酒を販売するには天井や壁、床に防音装置を入れるなど、店舗全体を工事しなければならないと言われてしまったのです。

「困って、ほかの地域の役所に相談しに行ったんです。そこでアドバイスをもらって再チャレンジをしました」
ようやくお酒の許可が下りたのは、なんと10月。プレオープンから4ヵ月かかって、待望の「お好み焼き&酒バー」が誕生しました。

カジュアルなインテリアの店内

カジュアルなインテリアの店内




■ピンチをムダにしない

オープン時に計画していたお酒が4ヵ月も出せませんでしたが、その間は決して許可を待っていたばかりではありません。
お好み焼き以外のメニューとして、抹茶スイーツなど新メニューも開発していました。昼から夜までのティータイムはお店が空いている時間帯なので、その対策としても有効だったそうです。

濃厚な味わいを楽しめる抹茶チーズケーキ

濃厚な味わいを楽しめる抹茶チーズケーキ




今ではお好み焼きのバリエーションも各種あり、日本酒やビール、スイーツなどを揃えた、どんな時間帯にも通えるお店になりました。ドイツ人のお客さんにもお好み焼きは受け入れられています。
「Harapeco Japanese Kitchen」は、今はじまったところです。


HP:https://www.facebook.com/Harapeco-Japanese-Kitchen-Okonomiyaki-Berlin-982200138544302/


文・写真/ベルリン在住ライター 久保田由希
2002年よりベルリン在住。ドイツ・ベルリンのライフスタイル分野に関する著書多数。主な著書に『ベルリンの大人の部屋』(辰巳出版)、『ベルリンのカフェスタイル』(河出書房新社)、『レトロミックス・ライフ』(グラフィック社)、『歩いてまわる小さなベルリン』(大和書房)、『かわいいドイツに、会いに行く』(清流出版)など。新刊『きらめくドイツ クリスマスマーケットの旅』がマイナビ出版より発売になったばかり。
http://www.kubomaga.com/

久保田 由希

東京都出身。小学6年生のとき、父親の仕事の関係で1年間だけルール地方のボーフムに滞在。ドイツ語がまったくできないにもかかわらず現地の学校に通い、カルチャーショックを受け帰国。大学卒業後、出版社で編集の仕事をしたのち、フリーライターとなる。ただ単に住んでみたいと、2002年にベルリンへ渡り、そのまま在住。書籍や雑誌を通じて、日本にベルリン・ドイツの魅力を伝えている。『ベルリンの大人の部屋』(辰巳出版)、『歩いてまわる小さなベルリン』『心がラクになる ドイツのシンプル家事』(大和書房)、『かわいいドイツに、会いに行く』(清流出版)、『きらめくドイツ クリスマスマーケットの旅』(マイナビ出版)ほか著書多数。新刊『ドイツ人が教えてくれたストレスを溜めない生き方』(産業編集センター)。散歩、写真、ビールが大好き。

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久保田 由希