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番外編 「プラスエネルギーハウス」でいろいろ聞いてみた

番外編 「プラスエネルギーハウス」でいろいろ聞いてみた

今週(9月12日~18日)、EU各国では「Climate Diplomacy Days」という「気候変動・環境保護」をテーマにした活動が行われています。EU加盟国の外務省のほか、世界各国に駐在する加盟国大使館・領事館などが様々な取り組みを行っています。

ということで、wasabiさんの記事に続いて、私もドイツの環境保護にまつわる話題をお届けしたいと思います。

いつもはドイツのサンティアゴ巡礼路、ヤコブスヴェーク(Jakobsweg)の模様をお伝えしているので、やはりまずは巡礼路上でよく見かける風景をご紹介。

 

甜菜畑の向こうに見えるのは、ヴュルツブルクから30kmほど南下したところにあるリッタースハウゼンという街。南ドイツらしいのどかな景色です。しかし、あることに気付いた方はいらっしゃるでしょうか。もう少し寄ってみましょう。

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そう、赤い屋根を覆うソーラーパネルの多さです。

 

■「プラスエネルギーハウス」へお邪魔します!

日本でも普及が進みつつある太陽光発電システム。各家庭では、屋根などに設置したソーラーパネルで発電した電気を日々の暮らしに利用している……とは知っていても、実際の使い勝手やコスト面はどうなのでしょうか?

 

そこで、同じくソーラーパネルを屋根にいただく義姉一家のマウダー家にお邪魔して、いろいろ質問をぶつけてみました。

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屋根のソーラーパネルで発電した電気は、まずは家の地下に設置したこの変換器にやってきます。マウダー家のソーラーパネルの発電量は最大時で1時間につき約12kWh。ドイツでの4人一世帯の平均的な電気使用量が1日だいたい11kWhと言われているので、良い天気の日であれば、十分な量の発電が可能ということになります。

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家庭内で電気を使用しているときは作られた電気がそのまま消費されますが、余剰分は「売却用電気」として、電力会社へと送られ、その量に応じて毎月料金が支払われます。そして、夜間や冬場、ソーラーパネルの上に雪が積もってしまったときなど十分な量の発電ができないときは、逆に電力会社から電気を普通に「購入」しているそうです(専用バッテリーがあれば余剰分を蓄電しておくことができるので、そちらの導入も検討中とのこと)。

 

もちろんこれらの切り替えはすべて自動で行われるので、一度この太陽光発電システムを設置してしまえば、普段の生活で電気を使う際にとくに気にしなければいけない点はなし。義姉の夫のトニーは半分趣味で、パソコンでデータを管理し、電気の使用・売却状況、データにおかしなところがないかなどをたまにチェックしているそうです。

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マウダー家では、電気の使用量を売却量が上回ります。このような家を、ドイツでは「プラスエネルギーハウス(Plusenergiehaus)」と呼ぶそうです。

 

■気になるコスト面は……

彼らが太陽光発電システムを導入したのは2011年のこと。設置するためにかかった価格は45000ユーロ(約513万円)とかなりなお値段です。しかし、5年経った現在、税金の免除や電気の売却分などで、実質その半分が戻ってきたと言います。平たく言えば、約10年でモトが取れ、以降はコスト面でもプラスに転じていくということ!

 

設置に要する工事期間はわずか1日~2日程度。予算さえ許せば、案外気軽に導入が可能そうです。

 

ちなみにマウダー家では、太陽熱温水器も同時に利用。太陽熱で温められた水(優に100℃に達するそうです)はこのタンクに溜められ、暖房やシャワーなど、生活用水として使っています。冬場をのぞけば、お湯はほぼ太陽熱だけで賄えているとか。

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■太陽光発電にこだわる理由は?

……とトニーに尋ねてみると、「もちろん第一には環境への配慮、二酸化炭素排出量の削減かな」と即答。そして第二には? と問うと、「コスト面でも優れていなきゃ、導入するドイツ人なんていないね!」とニヤリ。

 

大規模導入となると、天候に左右される不安定性など課題もまだまだありそうですが、一家庭で利用する分には太陽光発電システムはいいことだらけのようです。

 

あえて付け加えるなら、気になるのは町の美観。せっかくの屋根が無機質なパネルに覆われてしまうのはとても残念です。「瓦風パネル」が発明されたらいいのに……なんて思いも膨らみます。

 

さて、話し込む私たちに退屈したのか、「プラスエネルギーハウス」の裏庭では、9歳になる甥っ子のコービニアンが、木材と電動のこぎりを使ってなにやら大がかりな工作中でした。

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_MG_7332著者プロフィール:溝口 シュテルツ 真帆

2004年に講談社入社。編集者として、『FRIDAY』『週刊現代』『おとなの週末』各誌を中心に、食分野のルポルタージュ、コミック、ガイドブックなどの単行本編集に携わる。2014年にミュンヘンにわたり、以降フリーランスとして活動。南ドイツの情報サイト『am Wochenende』を運営中。http://www.am-wochenende.com/

溝口 シュテルツ 真帆

2004年に講談社入社。編集者として、『FRIDAY』『週刊現代』『おとなの週末』各誌を中心に、食分野のルポルタージュ、コミック、ガイドブックなどの単行本編集に携わる。
2014年にミュンヘンにわたり、以降フリーランスとして活動。『おとなの週末』公式ウェブサイトでコラムを連載。南ドイツの情報サイト『Am Wochenende』を運営。徒歩で行く旅に魅せられ、四国遍路、サンティアゴ巡礼を踏破する。次なる地をドイツに設定し、今ブログで発信中。

Blog : http://www.am-wochenende.com

溝口 シュテルツ 真帆