第19回 南ドイツの巡礼路を歩くべき8つの理由
ミュンヘンから南西のボーデン湖へ延びる計270kmのサンティアゴ巡礼路、ミュンヒナー・ヤコブスヴェーク(Muenchner Jakobsweg)。前回までに全行程を歩いた模様をお伝えしてきましたが、今回は締めくくりとしてミュンヒナー・ヤコブスヴェークの魅力を改めて振り返りたいと思います。
【ミュンヒナー・ヤコブスヴェーク全行程】 ※地図をクリックするとGoogle Mapに飛びます。
1. ミュンヘンの名所が見られる
その名の通り、ミュンヒナー・ヤコブスヴェークのスタート地はミュンヘンの旧市街。巡礼路は、ヴィクトアーリエン市場(Viktualienmarkt)、市庁舎(Rathaus)、ドイツ博物館(Deutsches Museum)、ミュンヘン動物園(Hellaburunn der Munchner Tierpark)などの名所のすぐそばを通っているので、観光気分で歩くことができます。巡礼中に寄り道をしたってもちろん誰も咎めません。(私も市場で腹ごしらえをしてから出かけました!)
2. 南ドイツ料理が楽しめる
比較的町から近い距離を行くミュンヒナー・ヤコブスヴェークでは、お腹が空いたらドイツ料理店に立ち寄ることができます。ソーセージや豚肉料理はもちろん、アルゴイ地方のチーズ、マウルタッシェン(Maultaschen)、ゼンメルクネーデル(Senmmelknoedel)など、独特の料理に舌鼓を打つことができます。
3. ビアガーデンで休憩できる
歩き疲れたころに現れる魅惑の空間……そう、それはビアガーデン! 前述のように巡礼路沿いには数多くのドイツ料理店があり、ビアガーデンを併設しているところも多数。5月~10月ごろの天気のよい日であれば、休憩時にちょっと腰を下ろしてお腹を満たしたり、ビアグラスを傾けることが可能です。
4. 南ドイツの自然に包まれる
イーザル川(Isar)やシュタルンベルク湖(Starnberger See)などの水辺。適度なアップダウンを楽しめる山々。地平線まで続く青々とした牧草地帯に、湿地帯、昼なお暗い森。自然の美しさ、そしてその中を走る道の表情の豊かさで言えば、ミュンヒナー・ヤコブスヴェークはかつて歩いた四国遍路道やスペインのサンティアゴ巡礼路をはるかに上回ると私は感じました。
5. 世界遺産をひとりじめできる
ドイツのサンティアゴ巡礼路は、スペインほどメジャーではないためほかの巡礼者にはほとんど出会いません。それがさびしくもあり、そしてよい部分でもあります。例えばヴィースの巡礼教会(Wieskirche)のような世界遺産を訪れても、観光客や巡礼者の数はまばら。歴史的価値のある教会などを、心ゆくまで静かに味わうことができます。
6. 「ガイドブックにはのっていないドイツ」を知ることができる
観光地を「点」で訪れているだけではわからない、ドイツの一面に触れることができます。窓からのぞく季節の飾り付け、のびのびと放し飼いにされた鶏、カフェで政治談議をする地元のおじさんたち。人々のリアルな暮らしを垣間見れる瞬間です。
7. アルプスを望む絶景を堪能できる
ミュンヒナー・ヤコブスヴェークからは、ドイツアルプスもすぐ近く。高台にあがれば、ほらこの通りの絶景が!
8. 素朴な巡礼宿に泊まれる
前述のように、巡礼者の数の少ないドイツの巡礼路では、まるで親戚のおばあちゃんの家に招かれたかのような素朴な宿に滞在することができます。私の泊まった巡礼宿は、いずれも個室で、朝食付きで20€前後と破格。巡礼者向けの宿は豊富にあるわけではないので、事前のリサーチや予約は欠かせませんが、旅の楽しみのひとつです。
いかがでしたでしょうか? もちろん、巡礼の本来の目的は、祈りを捧げながら一路聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラを目指すことではあります。ですが、宗教心のあるなしにかかわらず、その道を少しでも歩いてみたいと思っている人を排除するようなものでは当然ありません。「ドイツの巡礼路、歩いてみたいな」と少しでも興味をもってもらえたなら最高にうれしいです。次回からはまた違う土地のドイツの巡礼路の景色をお届けしたいと思っています。引き続きどうぞよろしくお願いいたします!
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著者プロフィール:溝口 シュテルツ 真帆
2004年に講談社入社。編集者として、『FRIDAY』『週刊現代』『おとなの週末』各誌を中心に、食分野のルポルタージュ、コミック、ガイドブックなどの単行本編集に携わる。2014年にミュンヘンにわたり、以降フリーランスとして活動。南ドイツの情報サイト『am Wochenende』を運営中。http://www.am-wochenende.com/