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ミュンヘンが「世界ミステリ首都」となる季節!

ミュンヘン州立裁判所、ここも「会場」になる!

ミュンヘンが「世界ミステリ首都」となる季節!

2016年3月14日、「KRIMIFESTIVAL MÜNCHEN(ミュンヘン・ミステリ祭)」が始まりました! このミステリ・フェスは初回の2003年春以降、毎年次第に拡大し、今では全世界から100人以上の作家が南ドイツに集結するようになりました。これまで、あのヘニング・マンケルスティーブン・キングジョン・グリシャムジェイムズ・エルロイといった問答無用のビッグネームが来訪した実績があります。

そして今年のスターゲストは『犬の力』ドン・ウィンズロウ! 彼は今年発売されたばかりの最新作『Germany』(舞台がドイツだということは言うまでもない、いや、むしろドイツと無関係ならすごい!)を紹介する予定です。
このミステリ祭では4月28日までの1ヶ月半にわたり、様々な朗読会やトークイベントが行われる予定です。その特徴といえばロケーション! なのです。たとえば刑務所、大学法医学教室、サーカス、ボクシングリング、警察署など、異常なほどリアルかつ生々しい場所で開催されるのです。
(イベントカレンダー:http://www.muenchen.de/veranstaltungen/event/8207.html

krimifestival-logo2016
今年のハイライトは、大学の解剖室で行われる、納棺師(要するに「おくりびと」)アルフレード・リーパティンガーによるリアル体験紹介トークイベント。
まあその、ドイツ人は昔からこういうのが大好きでたまりません。マニアック文化ですから。たとえば工事現場でも、「中はどうなっているのか?」と気になって仕方ないのがドイツ人。実は私の父は、長年キール大学の解剖学科で生化学の教授をやっていたので、私も子供の時から人体・生物の標本を身近なものとして育ちました(ちなみに父の大学の標本で一番印象的だったのは、みごとな刺青がぎっしり彫られている腕)。ということで、ミュンヘンに行けたらぜひ参加したいです。こういう面からドイツ人のミステリ好きの根拠を説明してしまうのもアレですが、自分の体験に即した一面の事実だから仕方ない(笑)

Rita Falk: Sauerkrautkoma Ⓒ Deutscher Taschenbuch Verlag

Rita Falk: Sauerkrautkoma Ⓒ Deutscher Taschenbuch Verlag



ちなみに今回の当イベントには、ドイツ地域ミステリの大人気作家リタ・ファルク(Rita Falk)も登場します。彼女の作品の魅力は南ドイツの地域性を最大限に活かした…えー、方言を全面に出した、「田舎風味まる出し」の率直でエネルギッシュな描写です。作中には必ずバイエルン州の郷土料理のレシピが載っていて、本を読んだあとでも料理本として楽しむことが可能です。
(レシピ:http://www.franz-eberhofer.de/rezepte.html

1ヶ月半にもわたるミステリ祭、期間中のプログラムを毎年考えるのはさぞ大変だろうな…と思いきや、実はこの春期シリーズのあと、すぐ「ミステリの夏」「ミステリの秋」イベントが続々と押し寄せるのです。
ううむ、なんという質と量! こんな具合にして最近のドイツミステリの興隆が進んでいるのだなー、と実感してしまう今日この頃です。文化を動かすのは知的なパワーとスタミナです!^^

それでは、今回はこれにて Tschüss!
(2016.03.14)

© マライ・メントライン

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マライ・メントライン

シュレースヴィヒ=ホルシュタイン州キール出身。NHK教育 『テレビでドイツ語』 出演。早川書房『ミステリマガジン』誌で「洋書案内」などコラム、エッセイを執筆。最初から日本語で書く、翻訳の手間がかからないお得な存在。しかし、いかにも日本語が話せなさそうな外見のため、お店では英語メニューが出されてしまうという宿命に。 まあ、それもなかなかオツなものですが。

twitterアカウントは @marei_de_pon

マライ・メントライン

翻訳(日→独、独→日)・通訳・よろず物書き業 ドイツ最北部、Uボート基地の町キール出身。実家から半日で北欧ミステリの傑作『ヴァランダー警部』シリーズの舞台、イースタに行けるのに気づいたことをきっかけにミステリ業界に入る。ドイツミステリ案内人として紹介される場合が多いが、自国の身贔屓はしない主義。好きなもの:猫&犬。コーヒー。カメラ。昭和のあれこれ。牛。

Twitter : https://twitter.com/marei_de_pon

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