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ドイツの結婚詐欺のお話“BEZNESS”

ドイツの結婚詐欺のお話“BEZNESS”

結婚相手に安定した収入等の条件を予め求める日本人女性よりも、特に条件ナシで「自分と相性の良い男性」を求めるドイツ人女性のほうがだめんずに引っかかりやすい、と書きました。今回はズバリそんなドイツ(の一部)で問題になっている、ある意味ドイツ版「だめんずうぉ~か~」について。

 

いえ、これは笑いごとではなく、悪い男に引っかかった結果、かなりの金額を巻き上げられる女性がドイツでは問題になっています。ここ数年、結婚詐欺に遭った女性の数があまりに多いことからこの手の詐欺を表す言葉まで登場しました。ドイツ語のBEZIEHUNG(恋愛関係)と英語のBUSINESSを組み合わせたBEZNESSという言葉です。そんな和製英語ならぬ独製英語であるBEZNESSですが、誤解をおそれず単刀直入にいうと、BEZNESSに見られる傾向は「そこそこ小金持ちの中年のドイツ人女性が、発展途上国出身の男性に騙される」というやつです。上記のように書いてしまうと、「いや、中年でなくても若いドイツ人女性も騙されてる人はいる」「いや、加害者の男性は発展途上国出身だとは限らない」という反論もあるのでしょうし、もちろんその通りなので考慮しなければならない部分ではあるのですが、悲しいかなBEZNESS(※以下で説明)関係においては、やはり上記のようなケース(中年のドイツ人女性が発展途上国の男性に騙されるケース)が目立つのですね。

 

※BEZNESSとは、お金または小金を持っている女性(例えば会社役員だけど恋愛経験が少なそうな女性)に近づき「今まで出会った女性で君が一番きれいだ」「君と結婚したい」「君と将来を考えている」などと歯の浮くような言葉を言い、女性からお金を巻き上げる商法のこと。

 

そんなBEZNESSの被害者が自らの経験を語り、周りに注意を促すサイトがあります。「千夜一夜物語」にひっかけて、 「1001物語」という被害者女性のサイトです。トップページに書かれているのは「夢がどのように悪夢に変わるか。1001のストーリーをこのサイトでお読みください。」(„Wie ein Traum zum Albtraum wird, lest ihr 1001fach auf unseren Seiten…“)という文言。12年前からあるウエブサイトで、500万人の読者がいるサイトですが、「騙されたドイツ人女性やヨーロッパ人女性」のサイトとなっています。この1001Geschichte.de(直訳:「1001物語」)をのぞいてみると、国別にPDFファイルがズラ~ッと並んでおり、たとえばMarokko をクリックすればモロッコ人男性に騙されたドイツ人女性の話、Tunesienをクリックすればチュニジア人男性に騙されたドイツ人女性の話、、、というふうに延々と読むことができ、数の多さに頭がクラクラします。サイトの名前通り被害体験ストーリーがエンドレスに続くのですね。

 

有休をとって行った南国のビーチ(それはモロッコだったりチュニジアだったりアルジェリアだったり)で声をかけられ、恋に落ち、帰国後もドイツ⇔チュニジアなどで遠距離恋愛を続けていく過程で、やれ「兄弟が病気になった」「新ビジネスに資金が足りない」などと金銭を要求され、気がついたら、全財産まるごと失っていたというドイツ人女性のケースもあります。

 

こうやって言葉にしてみると、なぜ騙される?という感じですが、まあ恋愛で盛り上がっている渦中にいると気付かない部分も多いのでしょう。

 

ドイツ人の男性は一般的にちょっと情熱に欠けるところがあります(←違っていたらごめんなさい)ので、もしかしたら女性側が情熱に飢え、休暇という非日常の中、南の国でちょっと甘い言葉をかけられると、もう好きになってしまう、という構図もあるのかな、なんて勝手に想像してみました。

 

ちなみにドイツは日本と違い「恥の文化」ではないのですが、こういう詐欺に騙される女性達はやはり恥ずかしいという思いがあるので、長年この手の詐欺が表面化してこなかった経緯があるようです。が、近年は自分の体験を他人に語ることで被害を防げたら、と考える女性が増え、こういった交流サイトというか警告サイトができたのですね。ちなみに最近はタイムリー(?)に難民(厳密にいうと、難民認定された人ではなく難民申請中の人)に騙されるドイツ人女性のケースも出てきています。

 

3D conceptual hearts日本では「結婚詐欺」というと木嶋佳苗のインパクトが強いからでしょうか、「女性が騙す側」で「男性が騙される側」というイメージが強いですが、ドイツに関しては明らかにその逆なのですね。筆者サンドラとしてはそういったところにも文化の違いを感じてしまいます。

 

ドイツの場合、女性が「勉強や仕事をがんばること」(特に「仕事で一人前になること」)を叩き込まれており、「男性に経済的なもの(ずばりお金)を求めないこと」を教育されているフシがあるので、いわゆる「だめんず男」を見抜けず、良いカモになりやすいようなのです。

 

「女性が男性に金銭的なものを求めるのは良くないこと」というドイツ風の考え方が結果的にこういったBEZNESSのフェノメノンを助長している点はあるかと思います。

 

・・・と、よく考えたら世間はもうすぐバレンタインデーなのですね。シビアなネタ、失礼いたしました・・・

 

懲りずに今後ともお付き合いのほどよろしくお願いいたします。次回も恋愛ネタです。今回より、もっと楽しい恋愛ネタですので楽しみにしていてくださいね。

サンドラ・ヘフェリン

ドイツ・ミュンヘン出身。日本歴19年、著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ) 、「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ』(原作: サンドラ・ヘフェリン、漫画: ヒラマツオ/KADOKAWA)、「『小顔』ってニホンではホメ言葉なんだ!?~ドイツ人が驚く日本の「日常」~」(原作: サンドラ・ヘフェリン、漫画: 流水りんこ/KKベストセラーズ)」など計11冊。自身が日独ハーフであることから、≪ハーフはナニジン?≫、≪ハーフとバイリンガル教育≫、≪ハーフと日本のいじめ問題≫など「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。ホームページ 「ハーフを考えよう!」 を運営。趣味は時事トピックについてディベートすること、カラオケ、散歩。

サンドラ・ヘフェリン