世界三大映画祭の1つに数えられるベルリン映画祭が、2月11日からスタートしました!
21日までの10日間に434作品が上映され、30万人以上の観客が訪れると予想されています。
今年は審査員長にメリル・ストリープが選ばれ、ジョージ・クルーニーやジュード・ロウ、ティルダ・スウィントン、ジュリアン・ムーア、ドイツの俳優ではダニエル・ブリュールやエリヤス・エンバレク(「ゲーテなんて クソくらえ」)ダフィット・クロス(「愛を読むひと」)ニーナ・ホス(「東ベルリンから来た女」、フレデリック・ラウ(「コーヒーをめぐる冒険」)、渋いところではハリウッドでも活躍するアーミン・ミューラー=スタールなどなど……がレッドカーペットに現れる予定です。
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Ali Ghandtschi © Berlinale 2015
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Alexander Janetzko ©Berlinale 2013
しかしベルリン映画祭は、
カンヌやベネチアのようなきらびやかな映画祭とはまた一味違う、
社会派の映画に重点を置くことでも知られています。
初めての開催は1951年の夏。当時東ドイツに囲まれ、
3つの占領区に分かれていた西ベルリンを拠点に、この町を「
自由な世界へのショーウィンドウ」
としてアピールするために始まったという歴史的背景があるからで
す。
66回目を迎える今年度のモットーは「Recht auf Glück(幸せの権利)」。
「
どの映画の中でもシリアやアフガニスタンなどの国から戦争を逃れ
てやってくる難民でも、ドイツに暮らす小さな家族であっても、
誰もが平和に暮らし、幸せでいたいと思っている」。
その意味で今回の映画祭の公式招待作品434作全てが、「
Recht auf Glück(幸せの権利)」という言葉でつながっていると、
ディレクターのディーター・コズリック氏は言います。
今年は「ベルリン映画祭」としてはじめて募金を呼びかけ、
集まったお金は拷問被害者のリハビリセンターへと送るだけでなく
、難民問題についても映画を通じてさまざまな意見が交わされ、
オープンな議論が起こることを期待しているそう。
特に期待の若手監督にスポットを当てるフォーラム部門を中心に、
難民や移民を扱う映画が数多く招待されていますが、
初日の今日は「And-Ek Ghes(ある日)」「Havarie」を見てきました。
©pong
「Havarie(海難)」
豪華クルーズの乗客がすれ違ったボート難民を撮ってYoutub
eへと投稿した映像に、ほかの難民の言葉、
このルートをよく走るクルーズの船長やウクライナの貨物船、
スペインの港湾都市カルタヘナの海難救助隊の無線連絡などの音声
だけを拾って組み合わせた、不思議な映画でした。
ピンぼけのボートが真っ青な海にぽっかりと浮かんでいるだけの絵
に、さまざまな日常と生と死の物語がかぶさっていきます。
©Khaled Abdulwahed
「And-Ek Ghes(ある日)」は、「Havarie」と同じくPhilip Scheffner監督のドキュメンタリー作品。
2012年のベルリン映画祭で上映された、同監督の「
Revision」の続編とも言える作品かもしれません。
1992年、
ドイツとポーランドの国境近くのトウモロコシ畑で2人の男性の死
体が見つかりました。
ハンターが間違って撃った事故として片付けられた事件の背景を追
い亡くなった2人の家族に会いにルーマニアへ……というのが「
Revision」。
この、家族の一人が、今回の映画の主人公Colorado Velcuなのです。
ルーマニアからドイツへと移住することを決めたロマのVelcu
一家。前作を通じて友人となっている監督は、
ベルリン生活の映像をとらないかと持ちかけます。
4家族(子どもは15人!)で2つのアパートを分け合い、
子どもの入学手続き申請のための書類手配に追われつつ、
Colorado Velcuはペンキ塗りの仕事をしながら、日記をしたため、
映画の構想を綿密に練り、
監督から渡されたカメラやスマートフォンで自ら映像を撮っていき
ます。
ほかの家族が、
ドイツは手続きが面倒で仕事も見つからないとスペインやイタリア
へと行ってしまったあとの子どもたちの寂しい顔。
子どもたちの登校日、初めての銀行口座カード受け取り、
公園でのBBQ……。
仕事は大変そうで月給も驚くほど安かったけれど、
なによりもColoradoがこのプロジェクトを楽しみ、
ドイツでの暮らしに真摯に向かっている様子が伝わってきて、
こちらも楽しくなってきます。
Colorado が作曲した映画のメインテーマを録音し、
家族出演でベルリンを舞台にPVを制作。そのビデオが流れると、
ボリウッド映画ファンらしいベタな演出に会場は大盛り上がり!
映画を通じて垣間見られる、多彩な文化。その世界、人によって「しあわせ」の在り方は本当に様々ですが、どの映画でも、最後には何らかのかたちでしあわせを得ているように思います。
さて、今年金熊賞を受賞する作品は、いったいどんな「しあわせ」を探しているのでしょうか?
ベルリン映画祭は21日まで、まだまだ続きます!
映画祭レポートは、instagram(
@yg_berlinale)
twitterでは、kawachi_berlin (
@berlinbau)
などでライブでお知らせします☆☆☆
ご興味ある方、ぜひ!
桃井かおりさん助演の、
東日本大震災後の福島を舞台にしたドイツ映画「フクシマ・
モナムール」や
ドイツ若手映画部門のラインナップについても、
別記事にてまとめさせて頂いております。
ご興味ある方よろしければ!
http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/news/art-design/1249berlinale.html
河内秀子(かわちひでこ)
東京都出身。2000
年からベルリン在住。
ベルリン美術大学在学中からライターとして活動。雑誌『Pen
』ウェブマガジン『think the earth
』などでもベルリンやドイツの情報を発信しています。趣味は漫画とカフェ巡り、この時期は各地のクリスマスマーケット巡り!Twitter
(@berlinbau)で『一日一独』ドイツの風景を1日1枚、アップしています。