ドイツ情報満載 - YOUNG GERMANY by ドイツ大使館

音楽ミステリ

ⒸGerman Embassy Tokyo

音楽ミステリ

と、聞いちゃあ読まないわけにはいかない♪

フレドゥン・キアンプールさん作、酒寄進一さん訳『幽霊ピアニスト事件』(東京創元社)を読了。

昨年悪戦苦闘したラフィク・シャミさんの『愛の裏側は闇(Die dunkle Seite der Liebe)』に比べたら量は少ないし登場人物の名前も複雑ではなく、最後のページに辿り着くのにそんなに時間はかからなかった。

ただ、タイトルにもあるように「幽霊」とは、ミステリに期待する「現実感」からはいささか離れているというか、子ども染みてるというか・・・

ここはいっその事「幽霊」ではなく「妖怪ウォッチ」にあやかり「妖怪ピアニスト・・・」にすれば日本ではウケそう。
妖怪がピアノを弾いて聴衆が謎の死を遂げるミステリ・・・

冗談はさて置きこの本は正真正銘(?)「幽霊」が登場し堂々と主役を張り、他にも幽霊が登場する。
特別な能力や不思議な力を持つ訳でなく、死んだ人間が「化けて」出てるだけ。
「化けて」と言っても、登場する「生きてる」人間が幽霊を歓待するので、不思議と幽霊に対する恐怖感は伝わってこない。(幽霊が苦手な人も読めますニャ!)

50年前に死んだ主人公アルトゥアが幽霊となって蘇りカフェにいるところから話が始まるんだけど、支払いはどうするの?お金は持ってる?などと変なところに意識が行ってしまう。
でも筆者は読者がそんな疑問を抱くことはお見通しで、主人公は50年前の1949年に命を絶つ寸前の出来事で得た大枚の「ドル札」を所持。
それに胸ポケットには「20マルク紙幣」までも・・・

おやっ?
マルクが通じるの?

設定は1949年の50年後なので1999年。
2002年1月1日にユーロが通貨として使えるようになったので、まだマルクで大丈夫!

舞台となるハノーファの音大に通う音大生たちを巻き込んで物語は進んでいく。

何で幽霊があの世からこの世に再び?という疑問を抱かせ、幽霊たちがまだ生きていた頃の話を織り交ぜながらストーリーは展開。

ミステリとは言え幽霊が出てくるだけに幽体離脱やそれに伴う「法則」や、お決まりの幽霊が見える見えないなどのファンタジーも。

作者のキアンプールさんは、このハノーファ音楽大学でピアノを学んだという作家としては異色の経歴の持ち主。
この小説に出てくる音楽を弾きながら小説を朗読するというパフォーマンスをするんだって♪
それだけに主人公が50年の時を経て「今」の音楽事情に触れるくだりの描写は面白い。
たとえば、
「・・・名前は初耳だが、いやになるほどうまいピアニストのレコードがあった。たとえばカナダ人ピアニストによるバッハの<ゴルトベルク変奏曲>には鳥肌が立った・・・」
ピンと来た人はかなりのクラシック通かも♪

昔アップライトピアノにかかってたカバーみたい・・・ Ⓒamazon

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ドイツ語のタイトルは「(主義などに)忠実に生きる」という『Nachleben(ナッハレーベン)』。
なるほど、読了した今、やはり時代に翻弄された殺人鬼(「鬼」と言うにはそんなに狂気に満ちた感じがしないから殺人「犯」?となると刑事が主役に躍り出そうなので・・・ん〜こんがらがってきた!)に同情すら覚える・・・

マライさんはYoung Germany「マライ・de・ミステリ」の中で『Nachleben』を「来世」と翻訳。
「nach」は「〜あとで」、「Leben」は「命、一生」。
ニャるほど♪

この本は初め『この世の涯てまで、よろしく』というタイトルで出版。
今回文庫版となりタイトルが『幽霊ピアニスト事件』に変更されたんだ。
『幽霊ピアニスト殺人事件』の方がより明確で語呂もいい気がする(日本のミステリー小説みたい!?)、『幽霊ピアニスト事件』では何か字足らずな感じだけど、そこは名翻訳家の酒寄さん、何か意図があるに違いない・・・

みなさんもぜひ幽霊に会ってみて♪=^_^=

(29. Januar 2016)






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