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雪の地獄谷野猿公苑で温泉に入る猿

© Hans Carl von Werthern

雪の地獄谷野猿公苑で温泉に入る猿

一度どうしても温泉に入る姿が見られる有名な猿を見たいという末娘のたっての希望で、数日間、長野に出かけました。そこから地獄谷までは車で約1時間です。そこは急峻な崖と、いたるところから温泉の湯気が立ち上っているところで、そのため、地獄谷と呼ばれています。野猿公苑入り口までは更に30分ほど歩きます。

まず最初に目に付いたのが、野猿公苑までは車でいくことができないということでした。それはつまり、他の多くの観光地では一般的な、大勢の観光客を運んでは降ろす観光バスがないということです。比較的緩やかな上り坂を歩きながら、その土地の様子が分かってきます。所々に猿の生態を記した案内板があり、常のごとく英語の翻訳が併記されています。

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ようやく入り口につくと、入苑料を支払います。でも野猿公苑は動物園ではないので、猿たちは山の中で自由に行動しています。特に夜は森に帰って木の上で眠るとのことです。日中になると温泉に入ってリラックスします。そしてそこでは彼らのために餌も用意されていますから、尚のこと温泉にくる甲斐があるというものです。多くの猿は温泉に入るのではなく、その周りであれこれ餌を探しています。その際に雪の中を掻きあさります。雪はどうも猿たちにはまったく苦にならないようです。

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猿たちは大勢の観光客も苦にしません。これには驚かされました。猿たちは全く臆することなく動き回り、観光客の間でも人などいないかのように走り回ります。猿にカバンや携帯電話を取られないよう注意を促されていますが、そのようなことは起こりませんでした。

もちろん、一番の見所は、猿たちが湯気の立ち上る熱い温泉につかって気持ちよさそうにしている様子を見ることです。これが本当に至福の時間であるということでは、猿は本当に驚くほど人間に似ています。餌探しにいそしむことも、何匹かのオスの間での極めて残酷な争いも、この完全なリラックスに勝るものではなく、それを更に上回るのが、メス猿が毛づくろいをしてくれることです。

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日本でよくある入浴の厳しいルールなど猿は気にも留めません。入浴後は手ぬぐいも浴衣も要りません。ただ体をゆするだけですぐに乾くようです。野猿公苑のすぐそばには人間用の温泉があります。猿と一緒に入浴することは当然ながら禁止されています。それは衛生上、健康上の理由からですが、よく理解できないのが、精神衛生上の理由というものです。この点は、非常に詳細な情報が掲載されているウェブサイト(英語版もあり)で読むことができます。

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ドイツでは猿は動物園にしかいません。猿小屋は最大の見所のひとつですが、それは猿が人間に近い種族だと私たちが考えることも一因でしょう。猿もそう感じているでしょうか。いずれにしてももっと素晴らしいと思うのは、この地では猿の自然の生態を観察できることです。

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Hans Carl von Werthern

1953年8月4日 ドイツ・ビューデスハイム生まれ。既婚、娘3人。 1984年にドイツ外務省に入省。 以来「日本におけるドイツ年2005/2006」外務省準備室長をはじめ、外務省東アジア課長、在中国大使館公使、外務省中央局(第一局)長などを歴任。 2014年3月から、駐日ドイツ連邦共和国大使として東京に赴任。

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