ベルリンを巡る、映画の旅!
ベルリンに来る前に、東京で映画「ラン・ローラ・ラン」を見に行きました。
映画というよりミュージックビデオみたいな作りでしたが、真っ赤な髪を振り乱し、ヨレヨレのタンクトップ姿のヒロイン、ローラがテクノのリズムに乗ってベルリンの街の中を駆け抜けて行く様子、なんでもあり、どうにかしてやるという力強さがとても印象的でした。
いま思えばあの感じ、がまさに90年代のベルリンだったんだと思います。
そしてまた、ベルリンらしい映画が生まれました!
先週末からドイツの映画館で上映が始まった「VICTORIA」です!
一言でいうと、ものすごいライブ感!
実はこの映画は、全てワンカットで撮られているんです。
138分、ノーカット。
スペインからベルリンに来てちょっと、ドイツ語もしゃべれずカフェで働く女の子、ヴィクトリアがクラブから街へ、自転車に2人乗りして団地の屋上へ、彼女の働くカフェへ、そして車に乗って……
夜のクロイツベルク~ミッテを縦横無尽に動き回ります。
ストーリーはいたってシンプル。
クラブで一人踊っていたヴィクトリアは、出たところでクロイツベルクの男の子たちに「本当のベルリンを見せてあげる」と声をかけられ、一緒に遊んでいるうちに、もめ事に巻き込まれて……。
ヴィクトリアが全くドイツ語ができなくて、(でも彼女も英語ネイティブではなく)男の子たちがブロークンイングリッシュで頑張って話している様子がまさに、いまのベルリンっぽい(笑)
地味目ながらドイツの期待の若手俳優が顔を揃え、ワンカットだからこそ生まれる、何でもない一瞬のニュアンスが映画の中に詰まっています。
監督のセバスティアン・シッパーさん曰く「銀行強盗の映画を見るより、銀行強盗を間近で体験するのが一番エキサイティング」。
その言葉どおり、この映画の面白さは筋ではなく、その空気感を肌で感じることができるところ。
あまり前情報は仕入れず、138分間、すべてゆだねて、ヴィクトリアの横で一緒にベルリンの街を走り抜けるように、見て頂きたいです!
クラブだけはセットですが、後は全てベルリンの町中で撮影されたこの映画、ノーカットのため、通りがかりの人に話しかけられてしまって、アドリブで乗り切るハプニングもあったよう。俳優さんもすごいですが、2時間以上の間、一緒に町を走る!寄る!引く!何気ない一瞬を捕らえ、この映画を「ライブ映像」以上のものにしたカメラマンさんの手腕が何よりすごい!
シッパー監督は「3テイク撮影して、最初の2テイクは“映画”として成立していなかった」と言っていたのですが、その失敗テイクもちょっと見てみたい……。
何が、“映画”を“映画”足り得るものにしているのでしょうか?
何はともあれ、必見!のこの映画、不朽の名作ではないかもしれませんが、2015年のベルリンの姿を捕らえた魅力的な映画です。日本でも公開されるといいのですが……
ちなみにベルリンは変化が激しい町でありながら、建築自体はほとんど変わっていないのでベルリンに来る前、来た後にここを舞台にした映画を見るのは絶対にオススメ!
「ベルリン天使の詩」を見てからポツダム広場に足を運ぶと、ベルリンの壁崩壊後の変化に驚かされますし、「グッバイ・レーニン!」で東側の変化と意外に変わってない街並を比べるのも興味深い。
東ドイツモノなら「ゾンネンアレー(太陽通り)」とか、古いものだったらエーリッヒ・ケストナーの「エーミールと探偵たち」で1930年代のシャルロッテンブルク周辺の様子を見るのも面白いですよ!
最近の映画だったら「コーヒーを巡る冒険」も♡良い意味でも悪い意味でも「首都になって変わっちゃったベルリン」の姿が垣間見れます。
最近では、ベルリンで撮影された20種類以上の映画の撮影場所がわかる地図アプリも登場!
ちょっと作品セレクトは?な部分もありますが、楽しいアプリです。
日本ではあまりメジャーではないドイツ映画ですが、面白い作品は続々登場しているので、ぜひチェックしてみて下さい。
そして、ベルリンを巡る映画の旅!もぜひ!
著者プロフィール
河内秀子(かわちひでこ)
東京都出身。2000年からベルリン在住。
ベルリン美術大学在学中からライターとして活動。雑誌『Pen』や『giorni』などでもベルリンやドイツの情報を発信しています。ガイドブック『ことりっぷフランクフルト・ベルリン』編など。
趣味は漫画とカフェ巡り、食べ歩き。蚤の市やオーガニックコスメも大好物。
Twitter(@berlinbau)で『一日一独』ドイツの風景を1日1枚、アップしています。