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「笑い」にまつわるドイツと日本の違い

「笑い」にまつわるドイツと日本の違い

以前、ドイツでも通じる冗談、日本でも通じる冗談というコラムを書きましたが、冗談の内容を問う以前に、ドイツと日本では「笑うこと」への感じ方やとらえ方がだいぶ違ったりします。実はこのことは子供のころから感じていました。

 

私が子供のころに通っていた日本人学校では、誰かがドジをしたりすると、周りの子達が「あはは」と笑いましたが、それは親しみを込めた笑いでした。友達を笑った後に「私もよく、やるよー(そういう失敗を私もよくするよー)」と言ったり。

 

ところがドイツの学校ではドジをしたり失敗をした人についてうっかり笑う人がいると、先生に怖い顔で「auslachenは良くないことです」と注意されたものです。そう、auslachenとは「嘲笑う、笑殺する」の意味です。

 

このようにドイツではシチュエーションによっては「笑うこと」についてシビアだったりします。人のドジや失敗にうっかり笑ってしまうと、人をauslachen(嘲笑う、笑殺する)したとして、卑怯者の扱いをされてしまいます。

 

ですので、たとえばポテトチップスの入った袋を開けようとした結果、勢いよく開け過ぎて、中身が飛び散ってしまったら・・・日本では周りが「あははー」と笑うのは比較的普通な事だったりしますが(私もこれで笑われたことあります^^;)、ドイツだと人にもよりますが、「他人の失敗をそうやってauslachenするなんて・・・一体どういう教育を受けたのよ?!」と思われる可能性もあるわけです。

 

このあたりの感覚は、だいぶ日本と違いますね。

 

思うに日本の場合、特に関西などでは「笑い」に関しては、「人様に笑ってもらってナンボ」という感覚がある気がします。人様に笑ってもらえるということは、親しみを感じてもらっているということでもありますからね。

 

人のちょっとしたドジや、ちょっとした失敗について、周りにツッコんでもらったり笑ってもらったり。そういうコミュニケーションは日本的なのかもしれません。とはいっても、日本だけではなく、たとえばトルコなんかでもこのあたりの笑いの感覚は似ているのだそうです。

 

さて、「auslachenは良くない!」と言われて育ったドイツ人の場合、自分のちょっとしたドジや失敗の際に、周りの日本人に笑われると「auslachenされたー!!」と思いがちですが、日本人としてはそんなつもりはなく、実は親しみをこめて笑っているだけだったりします。「あはは、やっちゃいましたね。私もよく失敗するんですよ~」という具合に。

 

現に日本では、おしゃべりの際に「自分がいかにドジであるか」「自分がいかに変な失敗をしたか」を披露する人が多いように感じます。「自分はこんなにドジなんですよー」と自分で笑い、周りも「あはは」と笑ったりします。こういう、自虐の入った会話スタイルや笑いはドイツには「無い」ですね(例外を除く)。むしろ日本の場合は自虐をして笑いをとっていることが非常に多いと感じます。

 

ドイツの場合、Schadenfreude(人が不幸になることで感じる喜び。いわゆる「いい気味」)という単語があり、Schadenfreudeの感覚が社会に深く浸透(?)しているため、人に笑われる事についてはどうしても敏感になってしまうのかな、とも思ったりしました。

 

基本、上記のようなSchadenfreudeをのぞいて、「笑うこと」はポジティブなことだと私は思っているのだけれど、同時に「笑いにまつわる誤解」も厄介だなと思います。(繰り返しになりますが、ドイツ人は自分の行動を(たとえば日本人に)笑われると、「auslachenされた!」と感じる事が少なくないようですが、日本人側は単に相手に親しみを持って笑っただけ、ということが多いです。)

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周りの日本人が全員楽しそうに笑っている中で、一人だけフキゲンなドイツ人がいたら、もしかしたら笑いによる勘違いが原因なのかもしれません。みなさんも今後、観察してみてください。

 

最後に個人的な意見なのですが、知らない国の人同士、異なる文化圏の人同士、仲良くなるのを邪魔するのはぶっちゃけ「プライド」かもしれません。見ていると、自分の事を笑える人や、お互いのことを笑う事ができる人達は、仲良くなるのも早かったりします。

 

・・・っと、これ以上書くとまたムズカシイ話になりそうなので、今日はこの辺で。

 

今後ともよろしくお願いいたします。

サンドラ・ヘフェリン

ドイツ・ミュンヘン出身。日本歴19年、著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ) 、「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ』(原作: サンドラ・ヘフェリン、漫画: ヒラマツオ/KADOKAWA)、「『小顔』ってニホンではホメ言葉なんだ!?~ドイツ人が驚く日本の「日常」~」(原作: サンドラ・ヘフェリン、漫画: 流水りんこ/KKベストセラーズ)」など計11冊。自身が日独ハーフであることから、≪ハーフはナニジン?≫、≪ハーフとバイリンガル教育≫、≪ハーフと日本のいじめ問題≫など「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。ホームページ 「ハーフを考えよう!」 を運営。趣味は時事トピックについてディベートすること、カラオケ、散歩。

サンドラ・ヘフェリン