Designgeschichten ドイツ発デザインストーリー

とっておきの布と椅子

大学を卒業した時、長年の夢を実現して南米を旅し、ペルー、ボリビア、アクアドルを訪れました。すぐに私が夢中になったのが、カラフルな民族衣装、特にペルーの民族衣装でした。民族衣装の布は、あちこちで売っていました。

鮮やかな色に魅了された私は、何に使うつもりか決めていませんでしたが、布を買い求めました。とりあえず何かのために買っておこう、というわけです。少なくとも、記念にはなるでしょう。

でも長い間、アイデアは湧いてきませんでした。ときおり布を眺めてはインスピレーションをさぐり、どんな風に使えるか考えました。そして二年くらいに前に、使い道が見つかったのです。私の祖母が、60年代の古い肘掛椅子を処分することになりました。その椅子のデザインは、明らかに60年代とわかるものでしたが、見るからに古びた感じでした。そこで私は、ペルーの布でこの椅子をリニューアルすることにしたのです。木材の部分も、きれいにする必要がありました。木材は、当時よく使われたチークなどの高級材ではなかったので、ペンキを塗ることにしました。色は、鮮やかな色彩のペルーの布に合う、明るいトルコブルーに決めました。

クッション部分は、私のイメージに合わせてプロに張り替えてもらいました。けっこう良い仕上がりになったと思います。この椅子は、私の住いのカラー・アクセントになり、友人やお客さんにも好評です。

Sessel

数週間前、ベルリンのシャルロッテンブルクを自転車で走っていて、偶然小さな骨董品店の前を通った時、ある椅子が目にとまりました。やはり60年代のもので、たぶんデンマーク製でした。もう一枚持っていた布に、ついにちょうど良い用途が見つかりました。この椅子の木材にはきれいな木目があったので、ペンキは塗らないことにしました。今度は、自分で張替えました。親切な骨董品店が工房を使わせてくれたので、その工房で張替えました。

Stuhl

私はこの他にも木製の家具を持っていますが、この椅子は他の木の家具にしっくりなじみます。同じデザインの椅子でないことは、よく見ないとわかりません。

二脚の椅子のすばらしいところは、その美しさだけでなく、いろんな意味で思い出の品なので、お客さんにそれぞれのストーリーを語ることができることです。

著者紹介

Felix Sandberg

シュトゥットガルト近郊の田舎町育ち。15歳のときヴィジュアル表現の形として写真に目覚める。その後すぐに家具を初めて手作りする。大学時代をイエナで過ごし、その間にミュンヘン・ニューヨークなどにも立ち寄る。ミュンヘンでは特に建築に、そしてニューヨークでは日々デザインに没頭し、物の美しさへの情熱と美的感覚を養う。 その定義づけに関わらず、物の見た目・形そのものに興味があり、建築でも家具でも家電でも、外見こそが重要。その姿かたちから良い感覚が自分の中に沸いたとき、初めてそれが私にとってデザインとなり得る。 経営学を学んだ後、繊維業界でインターンおよび勤務経験あり。繊維商社では仕入れ・および販売部にて従事。今年の初めからは自らの情熱にすべてをささげている。

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