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バウハウスとシーメンス集合住宅群

バウハウスとシーメンス集合住宅群

1919年にはワイマールに、ヴァルター・グロピウスのイニシアチブで、バウハウスが創立されました。当初は、芸術と手工業を融合することを目指しましたが、さらに家庭用品から完成した家までを含む「総合的住まい」という、新しい考え方が出てきました。このような考えは、まもなく世界中に広がりました。今ではバウハウスは、20世紀の建築とデザインに最も大きな影響を与えた流れの一つとされ、近代の建築やデザインを方向づけたと見られています。

工業化が進むと大都市では住まいが不足し、都市計画の担当者は新しい課題に直面しました。シーメンス社の巨大な工場に隣接して、大規模なシーメンス集合住宅群が作られたのは、ちょうどこの頃でした(完成は1930年)。ただ、住宅群の名前は「シーメンス」となっていますが、シーメンス社は資金を出したわけではなく、住宅の計画にも加わっていません。建設を決めたのはベルリン市で、新しい建築の考えを計画に採り入れました。中心となった建築家は、ハンス・シャロウン、ヴァルター・グロピウス、オットー・バルトニングなど、バウハウスと関係の深い人々でした。

建物の中で最も有名なのは、住宅群の入り口にあるハンス・シャロウンのものです。デザインは船からインスピレーションを得ていて、ブリッジや甲板の手すり、丸い窓などのデザイン要素に、その影響がはっきりとみられます。彼はこのようなデザインに、自由や、世界に開かれた気持ち、近代性などを表現しました。ところが人々はこの建築を「戦艦」と呼び、戦争のなかでの船の伝統を指摘しました。

Hans Scharoun Panzerkreuzer

この建物のすぐ後ろには、道路の両側にヴァルター・グロピウスの建物がつづきます。ここにもバウハウスの特色がはっきりと出ていて、明快でミニマリスティックなフォルムが特徴となっています。窓を配置したファサードのデザインは統一感があり、落ち着いた印象です。ファサードを区切っているのがガラス張りの階段室で、この部分は4階建ての建物本体より高くなっています。階段室からは小さな屋上テラスに出られ、テラスからは住宅群を見渡すことができます。建物の後ろの庭の側は、それぞれの住宅に、明るい日差しが入るロッジアがついています。庭側の住宅のことを想像すると、ちょっとうらやましいですね。

Gropius Loggia

特にイノベーティブだとされているのは、グロピウスが考えた、建物の角の部分の設計でした。この部分にある住宅の日照が悪くなるのを防ぐため、グロピウスはここに一階建ての店を設置しました。この手法は、戦後のドイツでよく使われたものです。

Gropius Lösung Eckhaus

東側には、オットー・バルトニングの住宅群があります。私が特に好きなのは、同じ形で並ぶ入り口です。これがファサードに特別な緊張感を与えていると思います。

Gebäudekomplex  Bartning

また素晴らしいのは、各建築家がそれぞれの立地条件に合わせて設計をしていることです。建物の設計や配置は、一日の流れの中で太陽の光を最大限に利用できるよう考えられ、寝室は朝日の方向に、居間は夕日の方向に向けて建てられています。建物につながる道は太くないので、木を伐らずにすみ、広い緑地を作ることができました。このような方法をとることで、住民の生活のクオリティーは格段に上がりました。

この住宅群は、1920年代の住宅建築の最前線を今に伝えています。ただ、時の経過は建物にも痕跡を残し、経年変化は建物内部で特にはっきり見られます。でも私は、それも各住宅の魅力だと思うし、建物の歴史を物語るものだと考えています。

Gropius Innenansicht    Blick nach draußen

2008年、住宅群はユネスコの世界文化遺産に登録され、当時の輝きを取り戻すため、少しずつ修復されています。住宅群は市の中心部からは離れたところにありますが、ベルリンの歴史の一部であるこの場所に、ぜひ足をのばしてみてください。

Felix Sandberg

シュトゥットガルト近郊の田舎町育ち。15歳のときヴィジュアル表現の形として写真に目覚める。その後すぐに家具を初めて手作りする。大学時代をイエナで過ごし、その間にミュンヘン・ニューヨークなどにも立ち寄る。ミュンヘンでは特に建築に、そしてニューヨークでは日々デザインに没頭し、物の美しさへの情熱と美的感覚を養う。 その定義づけに関わらず、物の見た目・形そのものに興味があり、建築でも家具でも家電でも、外見こそが重要。その姿かたちから良い感覚が自分の中に沸いたとき、初めてそれが私にとってデザインとなり得る。 経営学を学んだ後、繊維業界でインターンおよび勤務経験あり。繊維商社では仕入れ・および販売部にて従事。今年の初めからは自らの情熱にすべてをささげている。

Felix Sandberg