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福島第一原子力発電所の視察

©TEPCO

福島第一原子力発電所の視察

6月2日、朝6時過ぎ、福島第一原子力発電所に向けて公用車で出発しました。メンバー は、大使館のヴァシレフ(環境政策担当・放射線防護専門)、石川(通訳)そして私です。約3時間後、Jヴィレッジに到着しました。もともとは日本サッカー のナショナルトレーニングセンターで、福島第一から南におよそ20キロ、立入制限区域の外側にあります。東京から持参した線量計をみると、放射線量は東京よりも高いものの、専門家が健康に悪影響を及ぼすとしている基準を下回っていました。

Jヴィレッジは、2011年以降、東京電力の事故対応拠点として使われています。私たちはそちらでまず、福島第一原子力発電所の状況や廃炉作業の現状、今後克服しなければならない困難な課題について詳しい説明を受けました。こうした点に関する詳細は東京電力のサイト(http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/index-j.html)に載っていますので、ここでは触れません。東京電力の方々は、さまざまな問題に率直に言及され、私たちのどんな質問にも丁寧に答えてくださいました。



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続 いて、東京電力のバスで避難指示区域を通って福島第一原発に移動しました。まずは普通のマスクをつけただけです。地図上で緑、黄、赤に色分けされた区域を 進むにつれて、被害当時の状況をまざまざと思い起こさせる箇所が増えていきました。住民の立ち入りが禁止されている帰還困難区域に入ると、壊れた建物や、 さび付いた道路工事用機械や、生い茂った草木が目に入りました。

そして原発に到着。厳重なセキュリティーチェックを経て敷地内に入り、まず、免震重要棟を訪問しました。棟内の緊急時対策本部では、200名ほどの人々がパソコンを使いながら作業をしています。比較的落ち着いた雰囲気で作業が 行われているように感じました。続いて防護服、防護マスク、個人線量計などを装着してから、マイクロバスで敷地内を視察。数箇所で下車もしました。

一旦降りたバスにまた乗る前には、プラスチックの靴カバーをはずして取替えます。そうやって放射性物質をなるべくバスに持ち込ませないようにしているのです。同行した通訳の石川は、果敢にも防護マスクの中からわかりやすく通訳し続けてくれました。



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敷地内では、地下水をくみ上げるための揚水井や、山側の土を凍らせる実証実験の設備を視察しました。いずれも、地下水の流入(一日あたり約400トン)を抑えるための設備です。また、近々再稼動するという巨大な汚染水処理設備(ALPS)や、汚染水を中間貯留している大型タンク群を見ました。破損した各原子炉建屋を概観した後、4号機で核燃料を燃料プールから取り出す作業を視察しました。敷地内では、被ばく時間が私たちよりはるかに長いため、より重装備の防護服を身に着けた作業員の人たちを見かけました。

今回の訪問では特に、敷地内での懸命な作業の様子や、作業の進展ぶりを目の当たりにしました。対応してくださった幹部の方々からは、あらゆる手立てを尽くし て課題に取り組む姿勢が感じられ、私たちに判断できる限り、全て包み隠さず話してくださっているようでした。しかしまた、解決の糸口すら見えない、困難な 問題が依然として存在することも実感しました。なお、私たちが1日の視察で被ばくした線量は、装着した個人線量計によると、日本からドイツまで飛行機で移 動した場合の被ばく量よりも明らかに低いものでした。

Hans Carl von Werthern

1953年8月4日 ドイツ・ビューデスハイム生まれ。既婚、娘3人。 1984年にドイツ外務省に入省。 以来「日本におけるドイツ年2005/2006」外務省準備室長をはじめ、外務省東アジア課長、在中国大使館公使、外務省中央局(第一局)長などを歴任。 2014年3月から、駐日ドイツ連邦共和国大使として東京に赴任。

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