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イラストレーターとして、ベルリンで生活するということ#2『道端での宝探し』

イラストレーターとして、ベルリンで生活するということ#2『道端での宝探し』

こんにちは、ベルリン在住イラストレーターのKiKiです◎ 前回から『イラストレーターとして、ベルリンで生活するということ』というテーマで、記事を書かせて頂いています。

身近な立ち位置で、ベルリンのアートや日常生活をご紹介していけたらなと考えているこの連載なのですが、今回は『Verschenken』という文化についてご紹介したいと思います!

 

『Verschenken』とは?

『要らないものを捨てずに、必要な人にあげよう!』という、優しいシェア精神のとてもピースフルな文化です。どのようにものをシェアしているのかというと。。

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上の写真のように、道端に袋やダンボールにものが詰められて放置されています。笑 丁寧な場合は『zu Verschenken( Verschenkenです。ご自由にお持ち帰りくださいの意味)』という張り紙と共に放置してあるのですが、そんなものもなくラフに物が放置されていることも頻繁。

放置されているものは、お洋服・日用雑貨・おもちゃ・インテリア、そして机やソファーに、二段ベットのはしごかな…?みたいなものも、なーんでも放置してあります。通りかかった本当に必要な人たちがそれを拾っていくので、Verschenkenを見つけても、次の日には跡形もなくなくなっていたりします。

今まで、洗濯物を干すスタンド・ハンガー・保温機能抜群のスタイリッシュな水筒・アンティークの可愛いタッパやお皿など実用的なものを道端で見つけて、大変助かっています。笑

わたしのルームメイトの1人は北ドイツの小さな街出身なのですが、彼女によるとこの文化はベルリンなど大きな都市だけで見られるものだそうです。日本の小さな集落出身のわたしにとっては、田舎の譲り合いや物々交換の文化に似ているなあと親近感が湧いていたのですが、ドイツでは逆に大きな都市の方が盛んと聞いて、なんだか不思議な気持ちになりました。(小さい地域の方が、逆に道端におかなくてもコミュニティ内で物が行き来してるのかな…?)

話は飛びますが、ベルリンでは郵便物が届いたときに不在だった場合、『ご近所の◯◯さんに預けましたよ』と書かれた紙が郵便受けに入っていて、その紙を頼りにご近所さんを訪ねて荷物を受け取るということがあります。これも田舎出身のわたしにとっては、あるあるなのですが笑、それが普通に行われている大都市ベルリンは、とても親近感と優しさを感じる街で、大好きな理由の1つです。(ご近所さんのお裾分けも、よくあります!)

さて、今回ご紹介したいのは『Verschenken』の文化だけではなくて、先日道端で『Verschenken』として出逢った宝物についてです。

 

『Verschenken』で出逢った、宝物!

じゃん!!

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この絵本たちは、1番最初のVerschenken写真の袋の中に詰まっていたものの1部。そう、大量に古い絵本が道端にVerschenkenとして放置されていたのです…!勉強として、いろんな人のイラストレーションや絵本を見つけては読んでいる最近なのですが、これを道端で見つけたときは大歓喜!持ち帰り、もう1人の旧東ドイツ出身のルームメイトに聞いてみると、多くがDDRの絵本なのだそう。その絵本のイラストレーターさんのことも教えてもらいました。なかなか日本では知られていないことだと思うので、その中から2冊、ここでご紹介できたらなと思います◎

 

『Bunte Kiste 』- Dorli Gissler

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『Bunte Kiste』は、1982年から1991年の間にAltberliner出版社から出版されていたシリーズの小さな絵本です。私が拾ったのは『süße sachen(甘いもの)』というタイトルで、世界中の小さなお菓子のレシピが、可愛いイラストと共に紹介されています。

チリ・デンマーク・フィンランド・フランス・インド・オランダ・イラン・オーストリア・ポーランド・チェコ・トルコ、そして日本のレシピも!嬉しい!

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『Melonensalat(Kori-Suika)』...氷スイカ?どんなお菓子なんだろう。。今度ルームメイトと作ってみよう!と計画中。

 

中の挿絵は、その国とお菓子の名前からインスピレーションを受けたとってもユニークなイラスト。担当しているのはDorli Gisslerというイラストレーターさんで、ルームメイト曰く『当時とても人気のイラストレーターで、みんなその人の絵本に夢中だったのよ』とのこと。

当時はとても人気だった絵本シリーズのようで、ルームメイトが『Bunte Kiste、私も1冊持ってるわよ!』と、お部屋から持ってきてくれたのがこちら。

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こちらは、Wlihelm Buchというまた違うイラストレーターさんが挿絵を書いているもの。彼はベルリン出身のイラストレーター。クリスマスのときに、ルームメイトが彼の本をプレゼントしてくれたのですが…

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表紙の2人の子供がいたずらをするお話が1番有名なのだそう。

ちなみにルームメイトが持ってきた絵本のイラストは、線画をWlihelm Buchが担当し、着色をDorli Gisslerが担当しているという、最強コラボレーションの物だそう。繊蜜なイラストと元気が出るようなカラフルな色彩に、ページをめくるたびにワクワクしてきます◎

 

『MISHA』

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『MISHA』はロシア語で『こぐま』という意味。この雑誌は、旧ソビエト連邦が発行していた雑誌だそうです。ロシア語のほか、ドイツ語・フランス語・イタリア語・モンゴル語・スペイン語・ハンガリー語に翻訳されていて、『毎月のこどものためのイラストレーション』と書いてあるので、子供向けの月刊誌だったようです。

少しインターネットで調べてみると『当時では珍しい光沢のある紙に、美しいイラストともに世界の民話やなぞなぞ、パズルが掲載されていて、インターネットがなかったこの時代、私たちにとって世界への窓口でした』と、今現在もかなり熱烈なファンコレクターたちがいることがわかりました。

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一方で、『旧ソビエト連邦の宣伝雑誌だったのではないか』という書き込みも発見。ルームメイトは、この雑誌のことは知りませんでしたが、『昔の雑誌にしては、いい紙質ねえ…』と言っていたので、もしかしたらそういった歴史的背景もあった雑誌だったのかも!?知れません。。。

こちらの雑誌にも、日本文化を紹介している部分を発見!

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『WIESO ? WESHALB? WARUM? (どうして?なんで?なぜ?)Die weltreise des großväterchens frost (おじいさんの寒い冬の世界旅行)』とのタイトル、直接は書いていないけれど、サンタさんがいろんな国を訪れて、年末年始の行事文化を紹介しているページのようです。

『どこの国でも新年はモミの木で祝われるわけではありません。日本では、竹の茎とトウヒと開花梅の木の小枝を家に飾ります。』との記載が。

…これは、門松のことかな…?歴史的背景の何かがあったとしても、こうして、遠い国の子供達にも日本の文化が伝わっていたんだなあと思うと、同じイラストをかく1人として、とても嬉しく感じました。

 

偶然道端で見つけた、絵の教科書たち!

ということで、偶然道端で見つけた、大切なわたしの絵の教科書たちをご紹介しました。道端で拾う以外にも笑、昔の絵本はドイツの図書館でも見ることができるそうです。今度行ってみようと思います!この絵本たちの存在と歴史を知り、イラストが持つ役割や影響について考えるきっかけにもなりました。

Verschenkenとして、めぐりめぐって私のところにやってきた絵本たち。不要になったものを、必要な人のところへ。私のところにきてくれたことに感謝して、大切にしようと思います。

そんな感じで、アートとの距離が近い、ちょっと面白いベルリンでの日常をお届けしました◎

 

KiKi

イラストレーター/コラムニスト

西伊豆の小さな美しい村出身。京都造形芸術大学キャラクターデザイン学科卒業後、同大学マンガ学科研究室にて副手として3年間勤務。その後フリーランスに。2016年夏よりベルリンに移住。例えば、私のように小さな集落で暮らしている子が旅立つ時期を迎えたとき、『世界はこんなにも広くて、こんなにも選択肢があるんだ』と気付けるようなものを残していけたら、最高だなと想いながら絵と文章をかいています。

Portfolio / Youtube

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KiKi