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プログラミングを学んでドイツでエンジニアへ転身 佐藤有希さん

ソフトウェアエンジニアとしてベルリンのスタートアップに就職した佐藤有希さん

ソフトウェアエンジニアとしてベルリンのスタートアップに就職した佐藤有希さん

プログラミングを学んでドイツでエンジニアへ転身 佐藤有希さん

「キャリアチェンジをするにあたって、全体像と現在の自分の位置がいつも見えていたので、不安はありませんでした」そう語る佐藤有希さん。

2012年からベルリンでテック系フリーライターとして活躍していた佐藤さんと、同じくライターの私は、共通の友人を通して知り合いました。その佐藤さんがソフトウェアエンジニアへの転身を目指して2018年3月から勉強を開始、9ヵ月後の12月にベルリンのスタートアップにバックエンドエンジニアとして就職したと知って驚きました。順調に続けてきた仕事を辞め、まったく違う職種にキャリアチェンジをする、特にそれを外国で行うのは勇気と努力がいることだと思います。その経緯や勉強内容、ベルリンでのエンジニアをめぐる状況についてうかがいました。

欧州企業文化への親近感からキャリアチェンジを決意

日本にいたときは、会社員として働いていた佐藤さん。「なんとなく、日本の外でフリーランスとして働いてみたくて」と、海外移住先を探していたときにベルリンを気に入り、この地でフリーライターとしてのキャリアをスタートさせました。得意の英語を生かして翻訳を行ったり、テック分野の原稿執筆や日独スタートアップの橋渡し役として仕事は順調でした。

しかし、スタートアップの現場を知るほどに、その企業文化の中で自分も働きたいと考えるようになったそうです。

「こちらの仕事のやり方は個人主義で、性別に関係なくプロフェッショナルとして見てもらえるので、女性としても生きやすいですね。フラットでダイバーシティがある組織であることも魅力です」
ベルリンのIT系スタートアップは、メンバーがインターナショナルです。会社はベルリンにあっても、社員の国籍やバックグラウンドはさまざま。そのため社内共通語は英語ですが、多くの社員にとって英語は外国語です。

「インターナショナルですから、何事もちゃんと言わないと伝わらない。それがいいと思いました」

日本のように空気を読んだり、暗黙の了解、といったことはここにはありません。こうした環境が佐藤さんには働きやすかったのだと思います。

 

1000時間のプログラミング学習

佐藤さんのお話をうかがっていると、自分の目標を明確にし、そこに到達するために現実的な計画を立てる能力に秀でていると感じます。それは今回のキャリアチェンジにも十二分に発揮されています。
佐藤さんがエンジニアを志したのは、ベルリンで最短でキャリアチェンジすることを目指し、戦略を立てた結果です。ベルリンではエンジニアの求人は常にあり、エンジニアになるための公的資格はなく、学歴の影響も他の専門職に比べて少ないことはメリットでした。新たなことを学習するのが好きな佐藤さんの性格にも向いていると思ったそうです。

 

こうして「ベルリンでソフトウェアエンジニアになる」という目標が定まり、目標達成のための条件をチェック(エンジニアに求められるレベルなど)し、それを満たすための行動(勉強時間・方法など)を逆算していきました。
エンジニアになるために佐藤さんが勉強した時間は、計1000時間。この時間は人によっても違いますが、佐藤さんの場合は当初からHTMLとCSSの基礎はあったそうです。勉強はすべて英語で。前述の通り、ベルリンの多くのスタートアップでは英語が共通語ですし、リソースも英語が豊富だということが理由です。

まずは独学で始め、8月・9月はコーディングブートキャンプ(エンジニアを目指して集中的にプログラミングを勉強するスクール)に参加、終日プログラミングの勉強に没頭しました。ブートキャンプは参加費が高額で、佐藤さんが参加したIronhack主催のものは約6500ユーロ(約81万円、2019年1月現在)でしたが(佐藤さんはこのうち1500ユーロの奨学金を受けました)、同じ目標を持つ仲間や先生ができることは大きなメリットだといいます。

 

就職活動で求められたもの

ブートキャンプ修了時には、パートナー企業の採用担当者との面接の場も用意されていました。ただ、佐藤さんが興味のある分野の会社は少なかったこともあり、独自で就職活動を開始しました。就活で必要なのは作品とCV(履歴書)です。佐藤さんはブートキャンプ参加中にゲームやアプリケーションを開発し、CVの内容をスタッフにチェックしてもらいながら準備を進め、就活プラットフォームや会社のサイトから応募をしました。
ベルリンのスタートアップの就活は、だいたい以下のような流れで進むそうです。

1. 電話面接

2. コーディングチャレンジ(アプリケーション作りやプログラミングのスキルを問うテスト)を行い、オンラインで提出

3. 面接

4. 役員または社長面接

これらの4ステップを2週間から1ヵ月のスパンで行うことが多いそうです。
面接でよくされた質問は「プログラミングを勉強してどういう気づきがあったか」、「問題があったときにそれをどう乗り越えたか」ということ。「思考プロセスやメンタリティを見られているのだと感じました」と佐藤さん。エンジニアの仕事は、チームワークが大切です。さらに未知の分野にチャレンジする意欲や速い習得力、問題解決力も重視されるとのことで、面接ではその点がポイントとなりそうです。

佐藤さんは就活を始めてから1ヵ月で、現在働いているブロックチェーンスタートアップのLiskから内定を得ました。

 

エンジニアとしての日常

佐藤さんはLiskの社員として、週40時間のフルタイム勤務をしています。出社時間はフレキシブルですが、毎朝のミーティング時間までには全員が出社します。仕事内容はプロジェクト管理ツールで2週間単位でやるべきことが一覧表になっており、担当のタスクを行って提出し、そのレビューをもらうという毎日です。

 

オフィスで週40時間のフルタイム勤務。「エンジニアは勉強の連続」と佐藤さん。

オフィスで週40時間のフルタイム勤務。「エンジニアは勉強の連続」と佐藤さん。



 

同社の状況は、ソフトウェア開発プラットフォームのGitHubでオープンにされており、社外の人も自由に見られるそうです。ITとはまったく異なる分野で働いている私にとっては、こうした点にIT業界のオープンさを感じます。オフィスが入っているビルにはコワーキングスペースがあり、ITやスタートアップ関連に従事する人々が働いています。中にはペットの犬を連れてきている人も。そうした環境も刺激になるのではと思いました。

 

ベルリンでソフトウェアエンジニアとして就職するには

現在日本でエンジニア職に就いている人、あるいはこれから勉強してドイツで就職したいという人も少なくないと思います。
佐藤さんは「日本人のエンジニア経験者のスキルは高いと思いますし、経験は就活に有利に働きます。英語を少し頑張れば、就職は可能かもしれません。英語を使って何を言うか、何を論理的に伝えるかが大切なのであって、アクセントを気にする必要はありません」と話します。

就活は現地にいるほうが有利ですが、日本にいても求人情報はチェックできます。既にベルリンにいるのなら、初心者でも行ける学習コミュニティに顔を出してみるのもおすすめだそうです。たとえブートキャンプに通わなくても、こうしたコミュニティに参加することでベルリンのカルチャーやコミュニケーション、英語環境に慣れることができるとのことです。

これから勉強する人には「学習意欲がある人、知的チャレンジが好きで、全体を冷静に見つめられる人が向いていると思います」と佐藤さん。ウェブ開発系のソフトウェアエンジニアは、日本の求人でよく見られるシステムエンジニアと求められるスキルが異なるので、これから勉強を始めるならば、その違いをよく理解しておいたほうがよさそうです。

「プログラミングの勉強はわからないことだらけです。自分がわからない点を理解し、個別の知識同士をつなげる能力が必要です。学ぶことは多岐にわたるので、まずは一つの言語をできるだけ深めるのがいいのではないでしょうか」
もしこれを読んでくださっているあなたが好奇心と探究心の持ち主で、ベルリンでエンジニアとして活躍したいのならば、挑戦する選択肢もあるのではないでしょうか。

佐藤さんのキャリアチェンジの経緯をより深く知りたいという方は、ぜひ佐藤さんのブログをご覧ください。→http://www.ykst.de/

 

 

久保田 由希

東京都出身。小学6年生のとき、父親の仕事の関係で1年間だけルール地方のボーフムに滞在。ドイツ語がまったくできないにもかかわらず現地の学校に通い、カルチャーショックを受け帰国。大学卒業後、出版社で編集の仕事をしたのち、フリーライターとなる。ただ単に住んでみたいと、2002年にベルリンへ渡り、そのまま在住。書籍や雑誌を通じて、日本にベルリン・ドイツの魅力を伝えている。『ベルリンの大人の部屋』(辰巳出版)、『歩いてまわる小さなベルリン』『心がラクになる ドイツのシンプル家事』(大和書房)、『かわいいドイツに、会いに行く』(清流出版)、『きらめくドイツ クリスマスマーケットの旅』(マイナビ出版)ほか著書多数。新刊『ドイツ人が教えてくれたストレスを溜めない生き方』(産業編集センター)。散歩、写真、ビールが大好き。

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久保田 由希