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ドイツへ移住した「フリーランス秘書」 高西愛美さん

現在ドイツ語を勉強中のフリーランス秘書、高西愛美さん

ドイツへ移住した「フリーランス秘書」 高西愛美さん

「フリーランス秘書」と聞いて、どんな仕事を思い浮かべるでしょうか? 誰かの仕事のスケジューリング? 資料の作成? この春、ベルリンに移住したばかりの高西愛美(たかにし・まなみ)さんに、お仕事の内容と移住についてお話をうかがいました。

 

「フリーランス秘書」がドイツに移住?

 

私が高西さんの存在を知ったのは、Twitterがきっかけでした。高西さんの「フリーランス秘書」という肩書に「ん?」と思ったのです。ツイートを追ってみると、日本のクライアントを持ちながらも間もなくドイツに移住予定、と書いてありました。

 

秘書といえば、上司のスケジュール調整をしたり、会議や打ち合わせの準備を行ったりといったイメージを抱いていました。フリーランスでそうした業務が可能なのかという素朴な疑問がありましたし、なぜドイツに移住したいのかも不思議でした。いつか機会があれば直接お話をうかがいたいと思っていたところ、高西さんがドイツに移住されてチャンスが巡ってきたのです。

 

ベルリンのカフェで仕事中の高西さん

ベルリンのカフェで仕事中の高西さん



 

クライアントを支えるサポートのプロ

 

お話をうかがってわかったのは、高西さんの仕事内容は「業務サポート」「戦略ブレーン」という言葉がぴったりだということ。フリーランスになったのは、社員になることが難しかったから。ドイツ移住の理由は、新境地を求めていたときに親しい人のドイツ行きが決まったことがきっかけでした。

 

具体的な仕事は、ホームページやSNS上でクライアントの代わりに文章を書いたり、業務フローの改善やイメージ戦略のコンサルティングなどを行うこと。単なる業務代行ではなく、クライアント自身が気づかないことを指摘・改善するサポートを行うのが高西さんの特徴だと思います。クライアントは、企業や個人事業主です。

 

「私のクライアントは、新たな道を切り開くパイオニア的精神にあふれた方が多いです。クライアントがもっと力を発揮できるように支えるのが私の仕事。私はサポートのプロとして、クライアントと対等な関係で仕事をしています」と、高西さん。

 

「フリーランス秘書」という肩書は、じつは友人がふと口にした言葉なのだそうです。キャッチーな響きと、プロフェッショナルな仕事内容のギャップも意図されたものでした。

 

PRを学ぶ連続講座の運営統括として仕事

PRを学ぶ連続講座の運営統括として仕事



 

 

 

フリーになるしか選択肢がなかった

 

高西さんは高校卒業後すぐに結婚し、20歳で出産しました。

「自分の収入がほしい」との思いから就職活動をしたものの、最終学歴が高校という点や子どもがいることから、現実的にはほぼ道が閉ざされていました。「フリーになりたかったのではなく、それしかできなかったのです」

 

そこで自分でもできることを探そうと、ビジネス関連の講座へ足を運びました。もともと高校時代から自分のホームページを作ったりして、HTMLが書けた高西さん。講座ではパソコンによる作業が苦手な人も多く、その場でフォーム作りの初仕事が舞い込みました。

 

「え、こんなんでいいの?」と思ったそうですが、そこからテキスト作成代行やNPO団体のマニュアル作成など、次々と仕事がつながっていったのです。それはきっと高西さんが「仕事の依頼が来たら、できる・できないではなく『やる』しかないんです」と考え、行動してきた結果でしょう。

 

出版セミナーの現場サポートスタッフとして仕事

出版セミナーの現場サポートスタッフとして仕事



 

考えてもいなかった海外移住

 

その後順調に仕事を続けながら、私生活では離婚をし、ひと通りのことを経験したと思った高西さん。この状態をこのまま何十年も続けていくのはなんとなく嫌だと感じていたときに、近しい人が仕事でベルリンへ移住することに。高西さんも同行することを決め、4月からベルリンに滞在。現在はドイツ語を勉強したり、滞在許可取得のための手続きをしているところです。これまでの仕事のうち、ドイツでも可能なことは続行しつつ、さらにベルリンで新たなクライアントも獲得しました。

 

「海外移住は想像もしていませんでした。海外で暮らすことで、何か新しいことが見えてくるのではないかという気持ちでした」

順調だった仕事を一部手放しての海外移住。不安はなかったのかと思いますが、逆に移住について知らないことばかりで不安にさえならなかったそうです。

 

自分がいい状態でいられるベルリン

 

高西さんがベルリンに来てまだ2ヵ月ほどですが、生活がゆったりしていて、時間に追われる感覚がなく「日常を生きられている」と言います。じつは私もベルリンに住み始めた当初、「ここは人間の生理に合った街だなあ」と感じたことを覚えています。

 

私の場合は高西さんとは異なり、日本での仕事をすべて辞めていました。時間はたっぷりあったので、のんびりできたのは当たり前のことなのですが、街でせかせかした人をほとんど見かけなかったり、公共の場で他人をちょっと手助けしたり、緑が多いこともそう感じさせるきっかけになったと思います。そして、私以外の多くのベルリン在住者からも、同様の意見を何度も聞きました。

 

高西さんはこれまでの仕事をドイツでも続行すべく、当初はフリーランスとして滞在許可を取得しようとしましたが、あいにくフリーランス秘書という仕事が認められずに許可が下りませんでした。

そこでまずは語学学校に通い、ドイツ語を勉強しながら今後のあり方を模索し始めたところです。

 

「せっかくドイツに来たので、何かに関わりたいです。私は選んだことを正解にするのが得意なんです」

高西さんの挑戦は、いま始まったところです。

 

高西愛美さんの活動をまとめたHP

https://mana-ism.com/

ベルリン暮らしを綴ったブログ

https://life-size.me

 

久保田 由希

東京都出身。小学6年生のとき、父親の仕事の関係で1年間だけルール地方のボーフムに滞在。ドイツ語がまったくできないにもかかわらず現地の学校に通い、カルチャーショックを受け帰国。大学卒業後、出版社で編集の仕事をしたのち、フリーライターとなる。ただ単に住んでみたいと、2002年にベルリンへ渡り、そのまま在住。書籍や雑誌を通じて、日本にベルリン・ドイツの魅力を伝えている。『ベルリンの大人の部屋』(辰巳出版)、『歩いてまわる小さなベルリン』『心がラクになる ドイツのシンプル家事』(大和書房)、『かわいいドイツに、会いに行く』(清流出版)、『きらめくドイツ クリスマスマーケットの旅』(マイナビ出版)ほか著書多数。新刊『ドイツ人が教えてくれたストレスを溜めない生き方』(産業編集センター)。散歩、写真、ビールが大好き。

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久保田 由希