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絵画・金継ぎ・デザインでベルリンに移住 守屋亜衣さん

現在ベルリンで展覧会開催中のアーティスト、守屋亜衣さん

現在ベルリンで展覧会開催中のアーティスト、守屋亜衣さん

絵画・金継ぎ・デザインでベルリンに移住 守屋亜衣さん

世界中から集った数多くのアーティストたちが住むベルリン。日本人も大勢活動しています。最近「金継ぎをする日本人アーティストがいる」と聞き、なぜベルリンで金継ぎなのか知りたくなりました。

 

そのアーティストとは守屋亜衣さん。2017年からベルリンを拠点にしており、金継ぎだけでなく絵画・グラフィックデザインと、幅広い分野で活動しています。
「海外旅行は近場しか行ったことがなくて、ドイツは遥か遠い国だと思っていました」という守屋さん。なぜベルリンで活動することになったのでしょうか。

 

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現在開催中の展示で販売している金継ぎ作品。割れた陶磁器を集め、金継ぎを施したもの。

現在開催中の展示で販売している金継ぎ作品。割れた陶磁器を集め、金継ぎを施したもの。



 

すべての始まりはケルンのアートフェア
守屋さんは岡山県出身。神戸の美大でデザインとファインアートを学び、卒業後は東京でグラフィックデザインの仕事をしていました。仕事と並行して絵を描くことも続け、展覧会を開いていました。

 

ある日インターネットでみつけた、ドイツ・ケルンのアートフェアの告知。ドイツ在住日本人のエージェントが、ケルンのアートフェア「ケルナーリステ」で日本人作家ブースを出店するという内容でした。興味を持った守屋さんが応募したところ作品が通過して、2011年にドイツで初めての展示が実現したのです。その後そのエージェントを通して、フランクフルトやベルリンでも作品を発表するようになりました。しかし守屋さん自身は日本で仕事をしていたこともあり、ドイツに来ることは時間的・費用的に難しく、常に作品だけが展示されていました。

 

初めてドイツを訪れたのは、2012年にベルリンで初のグループ展を開いたときのこと。新婚旅行を兼ねて、遥か彼方と感じていたヨーロッパに飛びました。
「グループ展は日本人とドイツ人作家の共同展示だったのですが、自分の作品がベルリンのギャラリーに展示されているということが、すごく刺激になりました。とても楽しかったです」

 

こうして、日本に住みながらドイツでの展示活動を行う状態が何年間か続きました。やがてベルリン在住の日本人とも知り合い、いろいろと話を聞くうちに「ベルリン移住は、自分が思っていたよりも難しくないのではないか」と、ベルリンを拠点に活動したいと考えるように。その想いを会社員の夫に話したところ、夫婦そろってベルリン移住を準備することになりました。
「夫は車が大好きで、ベルリンにも興味があったんです。当時会社員としての生き方にも疑問を持っていたので、一緒にベルリンに行くことを決めてくれました」

 

移住を決意したときに、1年後には出発しようと決めていたそうです。まずはドイツ語の勉強をと、スカイプによるレッスンを受講。その先生の縁でベルリンの家も見つかり、2017年2月にベルリンに来たと同時に入居。ベルリン生活がスタートしました。

棺をモチーフに描いた絵画作品と金継ぎした器をあわせて展示。

棺をモチーフに描いた絵画作品と金継ぎした器をあわせて展示。



 

絵画も金継も、弔いの一つの形
守屋さんは絵画・金継ぎ・グラフィックデザインの3つの分野で活動しています。絵画とグラフィックデザインは日本でやっていたことですが、金継ぎはどういう理由から始めたのでしょうか。

 

 

「もともとは、割れてしまったお気に入りの陶器を自分で直したいというのがきっかけでした。それで移住の準備期間中に集中的に勉強しました」

 

伝統を踏まえながらも、自由な作風の金継ぎ作品を発表する先生を訪ね、基礎的な技術を教えてもらったそうです。やがて守屋さんの中で、金継ぎと絵画がつながってくるようになりました。
「私は絵画でずっと立方体を描いていますが、これは棺を抽象化したもので、『弔い』がテーマです。若い頃に近しい人たちが相次いで亡くなったことから生と死を考えるようになって、絵画という形で表現をするようになりました。金継ぎは割れた陶磁器を修理する技法ですが、それも弔いの一つの形かなと気がついたんです」

展示ではポストカードやアートブックも販売。

展示ではポストカードやアートブックも販売。



 

一つの活動が次へとつながる

 

守屋さんの中で絵画と金継ぎがつながっていると気づいてから、この2つを一緒に展示するようになりました。まずはベルリンで毎年開かれるJapan Festival Berlinに出展。すると、それを見た人から次の展示への誘いがかかりました。絵画と金継ぎという守屋さんならではの組み合わせが、アーティストとして活動していく上での強みになっているようです。

 

金継ぎを施した器は、割れた部分に金が入った状態になります。つまり、形は元通りになりますが、見た目はオリジナルとは別のもの。元通りに復活させるというよりも、新たに再生させるという表現のほうがふさわしいといえます。器の歴史に自分を反映させつつ再生させるのが面白い点で、そこに自分なりのアート作品としての金継ぎを見つけたい、と語ります。

 

と同時に、「金継ぎは修理技法であり、アートではない」とも。お客さんからの依頼には、修理として最善の形で金継ぎをしています。ベルリンでは金継ぎはまだまだ知られていませんが、展示を通して興味を持つ人も増え、修理依頼もやって来るようになりました。

展示会場のティーショップでは、茶葉販売ほかお茶もいただける。展示は7月31日まで開催中。

展示会場のティーショップでは、茶葉販売ほかお茶もいただける。展示は7月31日まで開催中。



 

ちょうど7月31日まで、ベルリンのティーショップで絵画と金継ぎの展覧会"disappear,appear"が開催中です。
(詳細はhttp://aimoliya.portfoliobox.io/information

 

グラフィックデザインを担当した、在ドイツ日本大使館主催「日本映画週間」のパンフレット。

グラフィックデザインを担当した、在ドイツ日本大使館主催「日本映画週間」のパンフレット。



絵画・金継ぎ・グラフィックデザインの3つの柱で活動中の守屋さんは「今は目の前のことをしっかりとやっていきたいです。もともと心配性なのですが、できることを努力してやることで不安を振り払えます」と話します。ベルリンでアートが生活に定着していることを感じながら、活動を続ける毎日です。
金継ぎやグラフィックデザインの依頼は、以下のホームページまで。

http://aimoliya.portfoliobox.io/

 

 

 

 

久保田 由希

東京都出身。小学6年生のとき、父親の仕事の関係で1年間だけルール地方のボーフムに滞在。ドイツ語がまったくできないにもかかわらず現地の学校に通い、カルチャーショックを受け帰国。大学卒業後、出版社で編集の仕事をしたのち、フリーライターとなる。ただ単に住んでみたいと、2002年にベルリンへ渡り、そのまま在住。書籍や雑誌を通じて、日本にベルリン・ドイツの魅力を伝えている。『ベルリンの大人の部屋』(辰巳出版)、『歩いてまわる小さなベルリン』(大和書房)、『かわいいドイツに、会いに行く』(清流出版)、『きらめくドイツ クリスマスマーケットの旅』(マイナビ出版)ほか著書多数。新刊『心がラクになる ドイツのシンプル家事』が大和書房より発売になったばかり。散歩、写真、ビールが大好き。

Blog : http://www.kubomaga.com

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久保田 由希