ドイツ情報満載 - YOUNG GERMANY by ドイツ大使館

ドイツが熱狂!野菜の王様シュパーゲル(白アスパラガス)

ドイツが熱狂!野菜の王様シュパーゲル(白アスパラガス)

ヤング・ジャーマニーをご覧のみなさん、はじめまして。この度「ドイツの食」をテーマにブログを書かせていただくことになりました、在独食いしん坊ライターの坪井由美子です。どうぞよろしくお願いします。

ドイツの食といえばビールとソーセージがあまりにも有名。正直にいいますと私もドイツに来る前は、ドイツの食べ物といえばビールとソーセージ、そしてバウムクーヘンくらいしか知りませんでした。ところが実際に住んでみてびっくり。現実とイメージとのギャップに(良い意味で)衝撃を受けたのでした。

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「美味しいドイツ」はソーセージとビールだけじゃない!



ビール、ソーセージ、パンが数千種類もあり、どれも唸るほど美味しいこと。ビールだけじゃなくてワインもすばらしいこと。バラエティ豊富な郷土料理。おしゃれなカフェやミシュランの星の数。バウムクーヘンの秘密(ドイツではあまりお目にかかれない特別なお菓子だったとは!)……etc.

ドイツがこんなに「美味しい国」だったことに驚くと同時に、あまり知られていないことを残念に思いました。そして、自国の自慢が得意じゃないドイツの人々(そこがいいところでもあるのですが)に代わって「ほんとうはもっと美味しいドイツ」を伝えたい、みんなにドイツでおいしいものを味わってほしい、という思いで取材と執筆を続けてきました。とはいえメディアで発信できることは限られていますので、今回このようなすばらしい機会をいただき本当に嬉しく思っています。

当ブログでは、各地方の名物料理から食文化、最新トレンドまで、リアルなドイツの食事情をどしどしお届けしていきたいと思っています。読んで興味を持っていただいたり、美味しいドイツを旅していただけたなら、嬉しい限りです。

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ドイツの春のお楽しみ、市場に並ぶ農家直送シュパーゲル



第1回目に選んだテーマは、今がシーズン真っ盛り!ドイツの人々が並々ならぬ情熱をみせるシュパーゲルSpargel(白アスパラガス)。「白い金」や「食べられる象牙」などと称され特別扱いされている、まさに野菜の王様です。

ドイツでは4月中旬くらいになるとあちこちにシュパーゲルの販売スタンドが立ち、デパートではシュパーゲルグッズを並べた特設コーナーが見られます。テレビや雑誌でもこぞってシュパーゲル特集が組まれるなど、ドイツ中がシュパーゲル祭りのような状態。

シーズン中は多くのレストランでシュパーゲルの特別メニューが登場します。定番メニューは茹でたシュパーゲルにじゃがいもとハムを添えた1皿。これにオランデーズソースや溶かしバターをかけていただきます。そしてシュパーゲルに合わせる飲み物といえば、辛口の白ワイン。とくにリースリングとのコンビが最高といわれています。

ゆでシュパーゲルにじゃがいもとハムの付け合せが定番

ゆでシュパーゲルにじゃがいもとハムの付け合せが定番



10数年前、ドイツで初めて新鮮なシュパーゲルを食べた時の感動は忘れられません。ふくよかでジューシーな食感と繊細な甘み、口の中にじんわりと広がる口福感……それは日本で食べたことのある、サラダの上にふにゃっとのった瓶詰の白アスパラとはまったくの別物。こんな美味しい野菜がこの世にあったのか!と衝撃を受けました。

それ以来すっかりシュパーゲルの虜になってしまった私。シーズンになるとせっせと市場や農家に通って新鮮なシュパーゲルを入手し、レストランや自宅で様々な料理法  ~スープにパスタ、リゾットやスープ、天ぷらに炊き込みご飯、お味噌汁、胡麻和えに酢味噌和え、わさびマヨネーズなどなど~  で味わい、今日もシュパーゲル活動に勤しんでいます。ドイツ中で一番シュパーゲルの消費量が多いのは、ひょっとしたら私かもしれません。

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シュパーゲル寿司。わさびマヨと相性抜群



 

北海小エビ入りシュパーゲルのスープ

北海小エビ入りシュパーゲルのスープ



のっけから熱くシュパーゲル愛を語ってしまいました。本当に大好きすぎて毎日でも食べたいくらいなのですが、残念ながらこの野菜はいつでも食べられるわけではなくて春限定。収穫時期は4月上旬頃から始まり、6月24日(聖ヨハネの日)が最終日とされています。これには理由があって、翌年も最高のシュパーゲルを収穫するために畑と根を休ませることが大切なのだそうです。良い仕事をするためにはしっかり休暇を取ることが大切。シュパーゲル作りにもドイツのライフスタイルがうかがえますね。

シュパーゲルの名産地ヴァルベック

シュパーゲルの名産地ヴァルベック



ドイツにはシュパーゲルの名産地が各地にあり、ベルリン郊外のベーリッツやハイデルベルクに近いシュヴェッツィンゲン、デュッセルドルフ近郊のヴァルベックなどがとくに有名です。ドイツには「シュパーゲル街道」なる、シュパーゲル産地を結んだルートもいくつか存在するんですよ。

先日取材で訪れたのは、ドイツ北部ニーダーザクセン州のシュパーゲル街道にあるニーンブルク(Nienburg)という町。

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「シュパーゲルの町」ニーンブルクの可愛い旧市街



ニーンブルクは広大なシュパーゲル畑やシュパーゲル博物館があり、春にはシュパーゲル祭りが開かれシュパーゲルの女王が選ばれるという、まさに「シュパーゲルの町」です。木組みの家が並ぶ可愛い旧市街をお散歩していたら、シュパーゲルの銅像を発見。

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ニーンブルクでシュパーゲルの女王に出会った!



 

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シュパーゲル栽培の歴史が学べる博物館



シュパーゲル栽培の歴史を伝えるシュパーゲル博物館では、昔使われていた農具のほか、シュパーゲルのためのキッチン用品が展示されています。トングや食器などここにあるものはすべてシュパーゲルのために作られたものばかり。ドイツの人々のシュパーゲル愛に頭が下がる思いです。

ニーンブルクにある広大なシュパーゲル畑で、収穫作業を見学させていただきました。

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シュパーゲルの収穫は重労働



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土の中で育つシュパーゲル。1本ずつ優しく収穫される



太陽を浴びて育つ緑のアスパラガスに対し、白いシュパーゲルは砂の中で栽培します。1本ずつ手作業で掘り出さなければならないため収穫は重労働。大規模な農家では近隣国からの季節労働者の力を借りているところも多いのだそう。

毎年美味しくいただくからにはその苦労を少しでも知っておきたい、と思い以前収穫を手伝わせてもらったことがあるのですが、ちょっと掘っただけでも腰が痛くなりふらふら……いやはや、大変なんてものじゃありませんでした。この作業を毎日やり続けてくれる人たちがいるからこそのシュパーゲルなのだと思うと、ますます有難く美味しさもひとしおです。

ドイツではシュパーゲル堀りの体験ができたり併設のレストランで採れたてのシュパーゲル料理を楽しめる農家があって家族連れにも人気。街の市場やスーパーよりも新鮮で美味しいシュパーゲルをお手頃価格で購入できるのでおすすめですよ。

貴重な旬の味覚、シュパーゲル。今年もありがたくいただきましょう。

Guten Appetit !

 

坪井由美子

日本では「食」に関する仕事に従事。商品開発やリサーチ、テレビ・ラジオへの情報提供及び出演、執筆などに携わる。テレビ東京『テレビチャンピオン・甘味王選手権』で3度優勝するなど食いしん坊ぶりを発揮。2003年よりドイツに拠点を移しフリーライターとして活動。旅や食文化、最新トレンドなどリアルなドイツ事情を新聞、雑誌、ウェブメディアで発信。 総合情報サイト「オールアバウト」ドイツガイド担当 / ドイツ発フリーペーパー「ドイツ・ニュースダイジェスト」で『食いしん坊のための簡単おいしいレシピ ~Locker! & Lecker!~』連載中/2020年秋『在欧手抜き料理帖』(まほろば社)出版

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坪井由美子