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【新連載「ハローBaby ~子育てABC」】赤ちゃんを連れて出かけよう 生後10日目のお散歩から片道600kmの旅へ

【新連載「ハローBaby ~子育てABC」】生後1カ月、ドルトムント〜ミュンヘン片道600kmのクルマ旅へ出かけてきました Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

【新連載「ハローBaby ~子育てABC」】赤ちゃんを連れて出かけよう 生後10日目のお散歩から片道600kmの旅へ

――2017年、初めての妊娠・出産をドイツでむかえました。そして始まった子育て。今回新連載となる「ハローBaby ~子育てABC(アーベーツェー)」では、ドルトムント在住の筆者・シュルテ柄沢 亜希がマタニティーや育児といった経験をとおして感じた「へぇ〜!」「なるほど」を発信していきます。

※シュルテ柄沢 亜希の連載「アクティブ ドイツ!」(2016年8月〜17年12月)はこちら

「赤ちゃんって、いつから出かけていいの?」――我が子を家に迎えた新米ママパパが必ず思い浮かぶ質問だと思います。シュルテ家では「お散歩はいつから?」というものから、さらに「旅行っていつからOK?」「飛行機にはいつから搭乗できる?」というアクティブな我が家ならではの疑問も。さっそくへバメ(助産師)に尋ねると、「いまからだって平気よ」という返答が――というのは、出産後10日目の話。「そんなに早くにいいの?」と夫と驚きながらも、30分のお散歩からスタートして近場のドライブへは積極的に連れて慣らしていきました。そして生後1カ月が経った頃、ドルトムント〜ミュンヘンの片道600kmのクルマ旅を決行してきました。

|無理なくスケジューリング


今回の旅の目的は、赤ちゃん連れで2泊3日の旅を成功させることと、ミュンヘンで開催されたメッセ取材。夫は別に仕事があったため、息子の睡眠・授乳スケジュールを中心にそれぞれの予定を入れて旅のスケジュールを組むところから始めました。

ドルトムント〜ミュンヘンのクルマ移動にかかる時間は5〜7時間(アウトバーンの交通状況によりけり)。帰路はメッセ会場から直接出発となるものの、往路は夜中にドライブすることにしました。具体的には夜中の授乳後、4:00頃の出発となりました。4:00であればアウトバーンの渋滞がないことに加え、息子の睡眠時間にかかるためベビーチェアにすっぽりすやすや寝かせたまま移動が可能で、ママパパ、赤ちゃん共にストレスが最小限で済みます。

ただしノンストップでたどり着けるとはいえ、重視したのは無理のないスケジューリング。一気に距離を伸ばそうと思わず、途中でゆっくり休憩できるスポットを見つけておくことは、赤ちゃんだけでなくママパパにとっても大切です。わたしたちはラッキーなことに、ミュンヘンより手前(自宅からおよそ430km地点)にかねてからお呼ばれしていた友人宅があったので、朝からお邪魔することにしました。わたしと夫は友人とバイエルン産の食材を使った朝ごはんを楽しみ、息子は手脚を伸ばすことができていい休憩となりましたよ。

一気に距離を伸ばそうと思わず、途中でゆっくり休憩できるスポットを見つけておくことも大切 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

一気に距離を伸ばそうと思わず、途中でゆっくり休憩できるスポットを見つけておくことも大切 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA



シュルテ家が取り組んでいるジーナ・フォード氏(イギリス、1960年-)による育児メソッド。彼女の出版本『赤ちゃんとおかあさんの快眠講座』(朝日新聞出版)はドイツ語版(写真右)も出版されている Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

シュルテ家が取り組んでいるジーナ・フォード氏(イギリス、1960年-)による育児メソッド。彼女の出版本『赤ちゃんとおかあさんの快眠講座』(朝日新聞出版)はドイツ語版(写真右)も出版されている Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA



なおシュルテ家では、発育状況によって起床時間・授乳時間を細かく管理するメソッド(※)に取り組んでいるため、決まったタイミングで一定時間息子を起こしておく必要があります。ところが車内でこれはほとんど不可能――クルマに揺られて心地よさそうに寝入っていました。自宅では体験しないできごとに臨機応変にこなしていくことも、旅の醍醐味ですね。

※育児コンサルタントのジーナ・フォード氏(イギリス、1960年-)による論理的な育児メソッド。出版本『赤ちゃんとおかあさんの快眠講座』(朝日新聞出版)は、各国語訳がありドイツ語版も出版されている。


|宿泊先はキッチン付を選択


キッチン付き客室。赤ちゃん連れでは自分の好きなタイミングで自炊できて自室で食べられるのは大きなメリット Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

キッチン付き客室。赤ちゃん連れでは自分の好きなタイミングで自炊できて自室で食べられるのは大きなメリット Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA



宿泊先は、アパートメントタイプのホテルを選びました。一般的なホテルよりも安く、キッチン付というところがポイント。生後1カ月の赤ちゃんと一緒では、冷蔵庫に買い備えた食べ物を、自分の好きなタイミングで自炊できて自室で食べられることは大きなメリットです。外へ出る時は純粋にお散歩だけを楽しむことができたので、この選択は正解でした。

さらにベビーベッドがあることは事前に確認し、予約時に利用を申請。チェックインすると、フレッシュなリネンがセットされたベビーベッドがメインベッドの横に設置されていました。息子は寝具を利用するには小さすぎるので今回はよけさせてもらいましたが、寝具のリネンはIKEA製のかわいい柄でしたよ。






|旅先でも安心のショッピングセンター


小さな赤ちゃんや子連れでいると、休憩スペースの場所やアクセシビリティ、設備内容がより気になります。東京にいた頃わたしはまだ子育て環境にありませんでしたが、子供を連れた友人と会う時は行き先に不都合がないか大体事前にチェックしてから出かけていたことが思い出されました。

旅先など知らない土地では特に、安心して行ける場所があると助かりますね。ドイツ国内でおむつ交換の設備のほかに、授乳室など赤ちゃん・子連れに嬉しい設備が整っているのはショッピングセンターです。利用は無料。駐車場からクルマを降りてすぐに建物という点も利用しやすい理由です。

ショッピングセンターには、おむつ交換の設備のほかに授乳室など赤ちゃん・子連れに嬉しい設備が整っている Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

ショッピングセンターには、おむつ交換の設備のほかに授乳室など赤ちゃん・子連れに嬉しい設備が整っている Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA



例えば、「Unibail-Rodamco」が展開するドイツ国内25カ所のショッピングセンターでは、比較的モダンな設備を利用することができます。今回ミュンヘンで訪れた場所には、電子レンジと洗面台が備わった半オープンなおむつ交換台2台、やはり電子レンジを備えた授乳室(施錠可)、小さな便器を備えたファミリートイレがありました。授乳室にはTVがあり、子供向けアニメが映し出されていましたよ。

今回ミュンヘンでおむつ交換に訪れたショッピングセンターには、電子レンジと洗面台が備わった半オープンなおむつスペースがありました Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

今回ミュンヘンでおむつ交換に訪れたショッピングセンターには、電子レンジと洗面台が備わった半オープンなおむつスペースがありました Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA





また不動産企業「ECE」はショッピングセンターの草分け的存在。ECEが展開するショッピングセンターはドイツ国内に146カ所あり、1980年にハンブルクの中心街に開業したモニュメント的ショッピングセンター「ハンゼ・フィアテル」をはじめ、各所で充実した設備が揃っています。

ドルトムント中心街の「ティア・ガレリー」では実際に授乳してみましたが、施錠できる個室内にはゆったり座れるソファー、おむつ交換台、洗面台、おむつ専用ゴミ箱があり、古い設備ながらも快適に利用できました。個室内には、センター内のドラッグストア「dm」の赤ちゃん用品を提供する旨の案内書きもありました。それから、センター内の案内パネルで呼出したオペレーターは、現在地からトイレまで、ベビーカーでの最短ルートを案内してくれてサービスにも満足できました。



センター内の案内パネルはディスプレイの向こうでオペレーターがガイド Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

センター内の案内パネルはディスプレイの向こうでオペレーターがガイド Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA



|アウトバーンでの休憩


ところで、アウトバーンのパーキングエリアでおむつ交換台ってあったかしら… 自分が利用するまで気に留めたことはありませんでしたが、男女トイレの案内表示と共にちゃんと記されていました。でも、一体どこに?

アウトバーンのパーキングでは、男女トイレの案内表示と共におむつ交換スペースがあることが記されていた Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

アウトバーンのパーキングでは、男女トイレの案内表示と共におむつ交換スペースがあることが記されていた Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA



アウトバーンでトイレは有料。入口にゲートがあり入金すると利用することができます。ゲートを通過して男女それぞれのトイレへ向かうのですが、ゲート通過後の共用スペースやゲート手前(トイレの外)におむつ交換台を見かけたことはありません。それもそのはず、車椅子マークとおむつ交換マークが記された扉は施錠されており、その扉には「(併設の店舗)スタッフに声をかけてください」と書かれていて普通に利用ができなくなっていました。設備のクオリティーは各パーキングエリアで異なるものの、利用方法は大体同じようです。

おむつ交換スペースの利用には声がけ&解錠が必要。通常有料のアウトバーンのトイレゲート内に無料で入ることができる Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

おむつ交換スペースの利用には声がけ&解錠が必要。通常有料のアウトバーンのトイレゲート内に無料で入ることができる Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA



スタッフに声をかけると、まずゲートを開けてくれ、そして個室の扉を解錠してくれます。つまり、おむつ交換ルームの利用は無料ということ。おむつ交換台にはロールペーパーが備えつけられていて、おむつ用のゴミ箱もありました。「終わったら声をかけてくださいね」ということだったので、すっきりした表情の息子と共にあいさつすると、「Gute Fahrt!(よいドライブを!)」とあいさつを返してくれました。

◇         ◇


初めての子連れ旅は、総じて成功。ただし息子の持ち物と世話に注力するあまり、自分の化粧ポーチを忘れたことに気がついたのはミュンヘンで久しぶりの仕事へ出かける朝でした。「子連れ旅は、子供よりも親にとってチャレンジング」というのは、旅の終わりに夫がつぶやいた名言。

シュルテ柄沢 亜希

Aki SCHULTE-KARASAWA ● 1982年生まれ、ドイツ・ドルトムント在住。フリージャーナリスト。執筆ジャンルは自転車・アウトドアアクティビティ、スポーツ、旅、食、アート、ライフスタイルなど文化全般。幼少期の5年間をハンブルクで過ごしたことがアイデンティティのベースにある。好きなものは、ビール、チーズ、タマゴ――ワイン、日本酒、ウイスキーも大好き。ランニング、ロードバイクライドにてカロリーを相殺する日々。ブログ「ドイツのにほんじん」に日記をつけ、産経デジタル「Cyclist」、三栄書房「GO OUT」などで執筆中。

シュルテ柄沢 亜希