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ヴィオラの次世代ホープ 大野若菜さん

ベルリン・フィル・カラヤン・アカデミーで研鑽を積んだ大野若菜さん

ベルリン・フィル・カラヤン・アカデミーで研鑽を積んだ大野若菜さん

ヴィオラの次世代ホープ 大野若菜さん

クラシック音楽を勉強している人なら、一度はドイツ留学を考えたことがあるのではないでしょうか。

ヴィオラの大野若菜さんは、東京芸術大学音楽学部付属音楽高校を卒業してベルリンへ渡り、ベルリン国立ハンス・アイスラー音楽大学に入学。大学在籍中にベルリン・フィル・カラヤン・アカデミーのオーディションに合格し、ベルリン・フィルで演奏を重ねてきた、若手のホープです。

高校からヴィオラに転向

大野さんがヴィオラを始めたのは、意外にも高校時代から。それまではヴァイオリンだったのですが、大野さんの父親がヴィオラ奏者で、周囲からの勧めもあり、東京芸大付属音楽高校の入試でヴィオラも併願したことが最初でした。

ヴァイオリンとヴィオラとでは、大きさも重さも、楽譜さえもまったく違います。当初はヴィオラ用の楽譜も読めなかったと、大野さんは笑います。

ヴィオラに転向してからは、まだまだこの楽器が理解されていないと感じるようになり、反骨精神が芽生えたそうです。
高校時代は、学校にいる時間以外に、朝と夜に計約5時間練習。そして2011年に、高校在学中にブラームス国際コンクールで1位に輝きました。

高校卒業後、ベルリンへ

ベルリン行きのきっかけとなったのは、作曲家の細川俊夫氏との出会いでした。ヨーロッパ行きを勧められた大野さんは、細川氏とともにベルリンへ見学に行くことに。そこで、その後ベルリンで師となる先生と出会い、高校を卒業してベルリンに活動の場を移したのでした。

そしてベルリン国立ハンス・アイスラー音楽大学へ入学。大学3年生のときにベルリン・フィル・カラヤン・アカデミーのオーディションを受けられることになり、見事合格。アカデミー生として2年間学べることになりました。

カラヤン・アカデミーは、若手がベルリン・フィルの団員からレッスンを受け、実際にオーケストラで演奏をすることで経験を重ね、将来につなげていくことを目的として設立されました。
若手は一流の演奏者たちから吸収し、修了後はベルリン・フィルのオーディションを受けたり、世界の一流オーケストラで活躍しています。

世界最高峰、ベルリン・フィル

世界最高峰、ベルリン・フィル



自分の意思を問われるアカデミーでのレッスン

大野さんは、アカデミーで2人の団員からレッスンを受けていました。現役団員ですから忙しく、レッスンはフレキシブルに行われているそうです。
基本的には火曜・水曜が練習日で、木曜から土曜が本番。日曜・月曜は休みですが、アカデミーの演奏会などが行われます。

アカデミーのレッスンでは「ここはどう弾きたいのか?」と聞かれるとか。
「すべてにおいて、『自分はどうしたいのか』を問われます。そこから一緒に考えるという作業ですね。弾き方を強制されたりはしません」
と、大野さん。日本では1回弾いてみて、それに対してアドバイスを受けていたので、レッスン内容はずいぶん違います。

「ソロでなくオケの演奏でも、みんな自分がどう弾くかの主張があるんです。最初はケンカかと思って驚きましたが、自分の意見を主張していかないと、ここでは相手にしてもらえないんです」

これはドイツで活躍している日本人の多くが持つ感想です。日本人は周囲と合わせることが得意で、それが美徳とされている面はあるでしょう。でもドイツでは、自分の意見を言わないことには始まりません。まず自分の意見を明確にし、それを周囲に伝えていくには、経験と技術が必要だと思います。

そうやって個人個人が自分の思うように弾いても、ベルリン・フィルの音としてまとまるのだそうです。

「みんなが主張し合う環境にもだいぶ慣れてきました。ベルリン・フィルではプレーヤーの個性が生かされていると感じます」
アカデミーの経験を通して、演奏の仕方や音の作り方を学んだ大野さんは「世界一のオケなのだな」と実感しています。

大野さんがアカデミーに2年近く在籍したときに、東京で演奏する機会がありました。そのとき久しぶりに大野さんのヴィオラを聴いたお客さんから、音が変わったと言われたそうです。大野さん自身は意識していないそうですが、いい音を身近で聴いていたからではないかと考えています。

「自分で求めていた音が、頭のなかにイメージできるようになりました」

ヴィオラへ転向した当初は戸惑いが多かったそうです

ヴィオラへ転向した当初は戸惑いが多かったそうです



興味があるなら早いうちに行動

高校卒業後に渡独した大野さんですが、中には「日本の大学を出てからでも遅くないのでは」という意見もあったそうです。

しかし大野さんは「興味があるなら、早く来てみたほうがいいと思います」と言います。
「現地の空気が合わないこともあり得るので、まずは1回来てみたらいいと思います。いきなり留学じゃなくても、見学だけでも、旅行でもいいと思います」

音楽以外の分野についても、私もそう思います。憧れや希望があっても、現地に来てみないとわからないことはあります。土地との相性もあるでしょう。最初から、数年間の留学や移住という大きな目標を掲げなくてもいいと思います。

大野さんは今年6月にアカデミーでの契約が終了し、今後はオーケストラで演奏することを目標に、引き続き活動を続けていきます。既に音楽祭や室内楽演奏会への出演予定が目白押しです。
10月には名古屋と東京でリサイタルが開催されます。日本で大野さんのヴィオラを聴けるチャンスです。

●東京オペラシティリサイタルホールでのリサイタル
https://www.operacity.jp/concert/calendar/detail.php?id=8040

次世代ホープと謳われる大野さん。これからますます活躍していくことでしょう。

久保田 由希

東京都出身。小学6年生のとき、父親の仕事の関係で1年間だけルール地方のボーフムに滞在。ドイツ語がまったくできないにもかかわらず現地の学校に通い、カルチャーショックを受け帰国。大学卒業後、出版社で編集の仕事をしたのち、フリーライターとなる。ただ単に住んでみたいと、2002年にベルリンへ渡り、そのまま在住。書籍や雑誌を通じて、日本にベルリン・ドイツの魅力を伝えている。『ベルリンの大人の部屋』(辰巳出版)、『歩いてまわる小さなベルリン』(大和書房)、『かわいいドイツに、会いに行く』(清流出版)ほか著書多数。近著に『きらめくドイツ クリスマスマーケットの旅』(マイナビ出版)。散歩、写真、ビールが大好き。

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久保田 由希