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屋台とアニソンから起業を目指す Doranekoさん

ステージでアニソンを熱唱するDoranekoさん

ステージでアニソンを熱唱するDoranekoさん

屋台とアニソンから起業を目指す Doranekoさん

「イベントで餃子を売って、しかもアニソンを歌っている人がいるんですよ」

知人からそう聞いたとき
「は? 餃子とアニソン?」
と思わず聞き返してしまいました。

何がどうなって餃子とアニソンがつながるのかわかりませんでしたが、あまりの意外さにこれはぜひお話をうかがってみたいと思いました。

そして先日ベルリンで行われた「アニメメッセ・ベルリン」でついに噂のアニソンライブを体験してきました。
今回はアニソンシンガーであり、ドイツで起業を目指して活動中のDoranekoさんの登場です。

音大大学院進学のつもりがビジネスに目覚める

Doranekoさんは2013年7月にベルリンにやってきました。
そのきっかけは、日本で参加した音楽コンクール。声楽を勉強していたDoranekoさんはコンクールで見事入賞を果たし、ヨーロッパで開かれる声楽夏期講習の参加資格を得たのです。

「その講習でベルリンを訪れたときに、自由な雰囲気を感じたんです。以前からいろいろなことに興味があるんですが、ここならチャレンジできそうな気がしました」

当初Doranekoさんはベルリンで音大大学院進学を考えていたそうですが、次第に気持ちがビジネスへと傾くように。
そんななときにイベントで餃子を売る経験をし、イベントオーガナイズや屋台販売をやりたいという気持ちが芽生えました。
そして日本食品メーカーと交渉の結果、サポートを受けられることになり、日本系のイベントで餃子や焼き鳥といった日本食の販売をスタート。そのほか日本の雑貨やお菓子なども扱うようになりました。

「アニメメッセ・ベルリン」で日本食屋台を出店

「アニメメッセ・ベルリン」で日本食屋台を出店



お客さんの熱気に包まれた会場

お客さんの熱気に包まれた会場



声楽科出身の歌声で観客を魅了

Doranekoさんのもうひとつの顔は、アニソンシンガー。
イベントで日本食を売る一方で、ステージ上で日本のアニソンも披露しています。
以前ドイツのカラオケで歌っていたときに、その声を聴いた見ず知らずのドイツ人から「オーディションを受ければ?」「You Tubeとかやらないの?」と話しかけられることがたびたびあったそうです。
そうした経験が重なり路上ライブを開いたところ、声をかけられてイベント出演へとつながっていきました。

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私がお邪魔した「アニメメッセ・ベルリン」では、Doranekoという名前が照明で映し出されたステージに、バンドメンバーとともに登場。かわいいメイド姿のコスチュームにサングラス、カールしたピンク色のロングヘアというスタイルです。

会場はライブを待つお客さんでぎっしり。
Doranekoさんがドイツでも有名な日本のアニソンを熱唱し始めると、かわいい姿と素晴らしい歌声に観客たちは夢中です。
当然歌詞は日本語ですが、ファンたちは自分の知っているアニソンをステージで聴けるのが嬉しいのだと思います。生バンド特有の熱気もあり、ステージ終了後はサインを求める観客たちに囲まれていました。

こんなに人気があるのなら、普通はそこで舞い上がってしまいそうですが、
「歌も仕事の一つとしてやっています」
と冷静です。
Doranekoさんの中では餃子販売もアニソンライブも、一つのビジネスとしてつながっているのです。

ドイツで求められる日本を提供したい

「実家が旅館を経営しているので、商人の血が流れているんです」と、Doranekoさん。
ビジネスのアイディアは、フードとカルチャーのイベントオーガナイズ、日独をつなぐ人材派遣、日本グッズのオンラインショップ……とどんどん広がっています。

「一つのことに絞ることはしたくないんです。このまま同時進行で進めて行きたいですね」

実務は信頼できる人に任せて自分は経営を考えたいというDoranekoさんは、きっと経営センスがあるのでしょう。
イベントで自身の日本食ブースを見回り、販売スタッフに声をかけている様子からは、未来の経営者の姿が容易に想像できました。

ベルリンで起業を目指しているのは、前述のように自由な雰囲気に可能性を感じたことに加えて、ほかの都市に比べるとまだ物価が安いことや、人口の多さも理由だそうです。

ドイツで日本関係のビジネスプランを練っている人は少なくないでしょうが、Doranekoさんがほかの人と少し違うと思うのは「ドイツ人が求める日本を提供する」点にこだわっていることです。

たとえば日本食ひとつ考えてみても、環境の違うドイツで完全に日本と同じものを買いやすい価格で提供するのは困難ですし、そもそもドイツでは受け容れられにくいかもしれません。自分が伝えたいものを提供するのは基本としても、マーケティングの視点は欠かせません。

Doranekoさんはドイツでのニーズを重視しているので、「餃子にテリヤキソースを合わせたら?」といったドイツ人からのアドバイスも柔軟に試しているそうです。自分の考えに固執せず、相手の求めるものに応えようとする姿勢はやはり「商人」なのでしょう。

「人からお金をいただくことは、人から必要とされていることだと思います」
と話すDoranekoさん。これから展開していくビジネスで、ドイツと日本がもっと近づけるのではないでしょうか。

久保田 由希

東京都出身。小学6年生のとき、父親の仕事の関係で1年間だけルール地方のボーフムに滞在。ドイツ語がまったくできないにもかかわらず現地の学校に通い、カルチャーショックを受け帰国。大学卒業後、出版社で編集の仕事をしたのち、フリーライターとなる。ただ単に住んでみたいと、2002年にベルリンへ渡り、そのまま在住。書籍や雑誌を通じて、日本にベルリン・ドイツの魅力を伝えている。『ベルリンの大人の部屋』(辰巳出版)、『歩いてまわる小さなベルリン』(大和書房)、『かわいいドイツに、会いに行く』(清流出版)ほか著書多数。近著に『きらめくドイツ クリスマスマーケットの旅』(マイナビ出版)。散歩、写真、ビールが大好き。

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久保田 由希