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走って食べて笑って 会社のメンバーと共に参加する“企業ラン”で絆を深める

ゴール直前、待ち受ける同じ会社のチームメンバーと喜びの握手を交わすランナーたち Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

ゴール直前、待ち受ける同じ会社のチームメンバーと喜びの握手を交わすランナーたち Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

走って食べて笑って 会社のメンバーと共に参加する“企業ラン”で絆を深める

連載「アクティブ ドイツ!」<10>

ケルンで5月11日に開催されたユニークなマラソン大会「Firmenlauf(フィルメンラウフ) Köln 2017」。フィルメンラウフは、会社という意味の“Firm”と走ることを意味する“Lauf”がくっついた造語で、あえて日本語にするなら企業ランといったところです。フィルメンラウフはいま、ドイツでのトレンドといいます。なぜそんなに人気があるのでしょう? ものは試し。チームメンバーとして参加し、体験をしてきました。(2017年5月24日)


|目的は「チームビルディング」

フィルメンラウフの参加はチーム単位で、各企業ごとに構成されるチームのサイズは様々。自営業の1人というチームもあれば、会場近くに拠点を構える自動車企業「フォード」のおよそ2千人という巨大チームまで、大小187の参加チームがありました(参加人数は6667人)。ほとんどのチームがおそろいのTシャツを揃えてきていて、隣り合って歩く人たちは同じ会社なんだなとひと目でわかります。わたしは夫の会社のメンバーとして招集されただけですが、同じユニフォームに身を包まれているだけで連帯感が高まる気がしました。

フォードのチームが集合写真を撮影しようとしているところ。フォトグラファーも一苦労の大人数! Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

フォードのチームが集合写真を撮影しようとしているところ。フォトグラファーも一苦労の大人数! Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA



そう、フィルメンラウフの目的は連帯感を得るのはもとより、「チームビルディング」の手助けとなること。スポーツをする人はよく分かると思いますが、誰かと一緒に汗を流し過ごしたあとには、その汗を流したメンバーとの距離感が一層縮まったと実感することがあるはずです。終業後の飲み会といった“レクリエーション”が日ごろ日本よりも少ないドイツにあって、フィルメンラウフが果たす役割はより大きいのかもしれません。

|参加しやすい距離“6km”

チームビルディングが目的とあって、距離が長かったり難コースだったりとハードルが高くては意味がありません。湖畔の遊歩道に設けられたコースはおよそ6km。“6km”を長いと見るか短いと見るかは普段ランニングに親しんでいるかどうかで変わってきますが、少なくとも気負わずにチャレンジできる−−「同僚と一緒なら」と参加を決められる距離なのではないでしょうか。



実際会場には、老若男女と多種多様な参加者。ランニングウェアを着こなす人ばかりでなくあり合わせのスポーツファッションや古びたランニングシューズを身に着けた人たちもたくさんいました。

すでに現役引退したアスリート、ヤン・フィッチェン氏も企業チームのメンバーとして一緒にラン Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

すでに現役引退したアスリート、ヤン・フィッチェン氏も企業チームのメンバーとして一緒にラン Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA



かつて1万m欧州王者(2006)など多くのタイトルを獲得してきたランナー、ヤン・フィッチェン氏も、自身がスポンサーを受けているフラッシュライト・ヘッドランプ企業「レッドレンザー」に招かれて参加。現在は引退して地元のランニングイベントに参加するなど上位を狙わないランを楽しんでいるというフィッチェン氏は、「今回は初めて参加するイベント。いつもは走らない、レースしないような人たちがたくさん集まっているのは見てて嬉しい」と集まった人たちを笑顔で眺めていました。




|コース上でメンバー同士声掛けも

ドイツ鉄道の自社向けテントはビールも用意して準備万端 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

ドイツ鉄道の自社向けテントはビールも用意して準備万端 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA



チームによって、モチベーションの上げ方は様々。イベントが提供するフードテント・ブース3〜4カ所や巨大なビアテントのほかに、自前のテントブースを購入・設置しBBQを準備しているチームもたくさんありました。ドイツ鉄道「DB」は、オフィシャルのフードテントと同じくらい大きな自社専用テントを構えて準備万端。ビールの配給もあるようでしたよ。

レッドレンザーでは、フィッチェン氏が持参したケニアのお土産がモチベーションアップにひと貢献。フィッチェン氏が「このブレスレットをつけて、マサイのように速く、強く!(…なんてね)」と気合を入れると、社員らは我先にとブレスレットを手にとっていました。




スタートゲート前に待機するランナーたち Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

スタートゲート前に待機するランナーたち Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA



スタート後序盤の大混雑を抜けても、いつも走らないひとがミックスされているコース上は、週に1度はランをしているわたしにとって走りにくいことこの上ありませんでした。けれどその度に思い出したのは、フィルメンラウフの目的。歩き気味になった同チームのメンバーに、「ほら、走ろうよ!」と声をかけるランナーや、追い越し際に手を振って小話をしていくランナーたち、といった光景に微笑まずにいられません。

また沿道には4〜5つの音楽隊やバンドが定間隔に配置されていたようで、ドイツのシュッツェンフェスト(狩りの祭典)音楽、サルサ、ジャズなどの元気な音に励まされました。ゴール地点でチームメンバーを待っていると、終わりの頃にゴールしたほかのチームには、おばあさん・おじいさんを車椅子に乗せて走るグループ、愛犬におそろいのTシャツを着せて走る人もいました。そしてどのチームもゴール地点でチームメンバーを迎える人たち、反対に迎えられる人たちの笑顔はとびきり輝いていました。

ゴール後にはアルコールフリーのビールが無料で振る舞われた Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

ゴール後にはアルコールフリーのビールが無料で振る舞われた Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA





社員の奥様がプロのマッサージ師。会場でのサービスにわたしも施術してもらいました Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

社員の奥様がプロのマッサージ師。会場でのサービスにわたしも施術してもらいました Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA




お楽しみのラン後の食事は、チーム一緒に。23:00まで続く「アフター・ラン・パーティー」では、クラブ音楽が鳴り響く中、話が尽きません。共に汗を流し一層絆が深まったところで、長い長い夜が続くのでした。



ゴール後の会場はクラブ音楽が鳴り響き、夜遅くまで宴は続くのでした Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

ゴール後の会場はクラブ音楽が鳴り響き、夜遅くまで宴は続くのでした Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

シュルテ柄沢 亜希

Aki SCHULTE-KARASAWA ● 1982年生まれ、ドイツ・ドルトムント在住。フリージャーナリスト。執筆ジャンルは自転車・アウトドアアクティビティ、スポーツ、旅、食、アート、ライフスタイルなど文化全般。幼少期の5年間をハンブルクで過ごしたことがアイデンティティのベースにある。好きなものは、ビール、チーズ、タマゴ――ワイン、日本酒、ウイスキーも大好き。ランニング、ロードバイクライドにてカロリーを相殺する日々。ブログ「ドイツのにほんじん」に日記をつけ、産経デジタル「Cyclist」、三栄書房「GO OUT」などで執筆中。

シュルテ柄沢 亜希