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日独カップルが始めたサポートサービス 朝陽このみさん・朝陽ヨヘンさん

印象的な「オカッパさんとおヒゲさん」キャラクター

日独カップルが始めたサポートサービス 朝陽このみさん・朝陽ヨヘンさん

ドイツで出会った二人がめでたく結婚へ−−。
それだけなら珍しくはありませんが、朝陽このみさん・ヨヘンさんご夫妻は、それぞれの能力を活かして、ベルリンで新たな仕事を一緒に立ち上げました。

その仕事とは、私たち日本人がドイツの日常生活で困ったときにサポートをする「ベルリン暮らしのサービスセンター」。
ドイツ暮らしに戸惑っている人、言葉がわからない人、何かを相談したい人などにとって、助かるサービスだと思います。

もともとこのみさんはイラストレーター、ヨヘンさんは日独翻訳家・ツアーガイドとして活動しています。そこにサービスセンターの仕事もスタートさせ、ますます充実した生活を送るお二人を訪ねました。


■インスタグラムで支持を得てイラストレーターに

このみさんが描くイラストの代表的モチーフは「オカッパさんとおヒゲさん」という男女のキャラクター。かわいいオカッパの女性と、ヒゲを蓄えた優しそうな男性は、このみさんとヨヘンさんご自身がモデルなのかな?と想像をかき立てられます。
私はご本人と知り合う前に、ネット上で「オカッパさんとおヒゲさん」のイラストを見かけてひと目で覚えてしまったほど、愛らしく個性的なキャラクターです。

キャラクター入り手作りポーチを製作中

キャラクター入り手作りポーチを製作中



このみさんが販売している雑貨はすべて手作り

このみさんが販売している雑貨はすべて手作り




以前は会社員として働いていたこのみさんは、趣味で描いていたイラストをインスタグラムに上げたところ大人気に。
そこからイラストと同じ柄のポーチやワッペンといった雑貨を手作りしたり、LINEスタンプが誕生して、イラストレーターとしての道が始まりました。

このみさんがベルリンに来たきっかけは、会社員時代にロンドンに住んでいた友人を訪ねたこと。当時の状況を変えたかったこのみさんは、友人から「ベルリンがいいよ」と聞き、急遽ベルリンへ旅行したそうです。
そしてベルリンで、アーティストとして取得できる滞在許可(アーティストビザ)の存在を知り、滞在先候補に考えるようになりました。
まだヨヘンさんとは知り合う前のことです。

そして2014年秋にベルリンへ渡り、12月にはアーティストビザを取得。順風満帆なように聞こえますが、慣れない生活にホームシックになってしまい、日本への帰国も考えたそうです。

「でもドイツ語は勉強したかったんです」
というこのみさんは、タンデムパートナーを探すことに。
そこで出会ったのが、ヨヘンさんでした。

これからキーホルダーになります

これからキーホルダーになります



部屋の一角がこのみさんの仕事場

部屋の一角がこのみさんの仕事場




■初めて聞いた生の日本語に衝撃

一方のヨヘンさんですが、日本語を習ったきっかけは高校時代のバイトだそうです。
ドイツにある日系企業の工場でバイトをしていたときのこと。あるとき週末も働くことになり工場に来てみると、そこにいたのは日本人社員ばかり。プライベートを大切にするドイツ人は、休日出勤する社員などいなかったのです。
そこで初めて日本人社員同士が喋る生の日本語に触れたヨヘンさんは
「今まで聞いたことがない発音で、本当にびっくりしました」
と、衝撃を受けました。

さっそく次の月曜日には日本語の教科書を書店で購入したというのですから、素早いですよね。

この体験が、大学で日本学を勉強することにつながりました。そして翻訳会社勤務を経て、現在はフリーランスで日独翻訳・ツアーガイドの仕事をしています。



■優しく手を差し伸べる存在に

二人が「ベルリン暮らしのサービスセンター」を始めたのは、周囲の日本人から数々のエピソードを聞いたこと。
「いろいろと話を聞いているうちに、困っている人に優しく親切に対応するサービスがあっていいと思ったんです」
とお二人は話します。

サービス内容は今のところドイツ語での付き添い、日独翻訳、ベルリンツアーガイド、ドイツ語レッスンなどが大きな柱になっているそうですが、そのほか希望に応じて対応するそうです。

私もこれまで「気軽に頼めるドイツ人がいたらなあ」と思うことは何回もありました。
たとえば役所に行くとき。書類は準備していても、何が起こるかはわかりません。そんなときにドイツ人が付き添ってくれていたら心強いですし、相手が受ける心証も違ってくると思います。新居探しの内見会などでも同様ですね。

こうしたサービスを依頼するときに、ドイツ人スタッフだけだと既にそこで二の足を踏んでしまうかもしれませんが、このみさん・ヨヘンさんの日独カップルなら気軽に連絡できそうです。
「オカッパさんとおヒゲさん」キャラクターが描かれたサイトやフライヤーが、より一層親しみを感じさせてくれます。

もちろん外国に住むには、なんでも他力本願というわけにはいきません。最終的には自分で判断をし、自分で行動しなければならないときはあります。
でも最初の一歩を踏み出すときに、ちょっとだけ手を差し伸べてくれる存在はとてもありがたいものです。

「ベルリン暮らしのサービスセンター」を始めたら、ウェブマガジンからイラストコラムの依頼も舞い込みました。お二人にとって、サービスセンターが新たな飛躍の場所にもなりそうです。


ベルリン暮らしのサービスセンター
https://berlin-support.stores.jp/

朝陽このみさんインスタグラム
https://www.instagram.com/konomiasahi/

ウェブマガジンKAMAKULANIコラム
http://www.kamakulani.com/trip/berlin/


文・写真/ベルリン在住ライター 久保田由希
2002年よりベルリン在住。ドイツ・ベルリンのライフスタイル分野に関する著書多数。主な著書に『ベルリンの大人の部屋』(辰巳出版)、『ベルリンのカフェスタイル』(河出書房新社)、『レトロミックス・ライフ』(グラフィック社)、『歩いてまわる小さなベルリン』(大和書房)、『かわいいドイツに、会いに行く』(清流出版)、『きらめくドイツ クリスマスマーケットの旅』(マイナビ出版)など。
http://www.kubomaga.com/

久保田 由希

東京都出身。小学6年生のとき、父親の仕事の関係で1年間だけルール地方のボーフムに滞在。ドイツ語がまったくできないにもかかわらず現地の学校に通い、カルチャーショックを受け帰国。大学卒業後、出版社で編集の仕事をしたのち、フリーライターとなる。ただ単に住んでみたいと、2002年にベルリンへ渡り、そのまま在住。書籍や雑誌を通じて、日本にベルリン・ドイツの魅力を伝えている。『ベルリンの大人の部屋』(辰巳出版)、『歩いてまわる小さなベルリン』『心がラクになる ドイツのシンプル家事』(大和書房)、『かわいいドイツに、会いに行く』(清流出版)、『きらめくドイツ クリスマスマーケットの旅』(マイナビ出版)ほか著書多数。新刊『ドイツ人が教えてくれたストレスを溜めない生き方』(産業編集センター)。散歩、写真、ビールが大好き。

Blog : http://www.kubomaga.com

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久保田 由希