ドイツ情報満載 - YOUNG GERMANY by ドイツ大使館

見本市「ISPO」で注目の独ブランド 高品質な“Made in Germany”も

サングラスやヘルメットを展開する「uvex」のブース。全身ゴールドにバイザー付きヘルメットという女性が来場者をいざなっていた Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

見本市「ISPO」で注目の独ブランド 高品質な“Made in Germany”も

連載「アクティブ ドイツ!」<7>

スポーツ・アウトドア業界の見本市「ISPO」(イスポ)が、ドイツ・ミュンヘンで2月5日から8日まで開催されました。ISPOは、数ある見本市と同じように一般公開はされておらず、小売やメーカーなどの業界向け。ことしはISPOが始まって以来最高という2732もの出展があり、世界120カ国から訪れた8万5000人の来場者で賑わいました。今回の「アクティブ ドイツ!」では、ドイツでは誰もが知っているメジャーブランドや注目のブランドを紹介します。(2017年2月28日)


|環境を徹底的に考慮したアウトドアアパレル


2732の出展に8万5000人の来場者が集った「ISPO」の入場ゲートエリア Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

2732の出展に8万5000人の来場者が集った「ISPO」の入場ゲートエリア Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA



アウトドアアパレルブランドとしてマウンテンアクティビティ、自転車そしてバッグと幅広く展開する「Vaude」(ファウデ)。日本の市場では、ファウデのフラッグシップ製品であるデイパックを見かけることがありますね。

ファウデ製品の中でトップセラーとなるウォータープルーフ仕様のバッグは、ドイツ製。2015年4月、大嵐の際雷の直撃によって工場を半焼させるという不運に見舞われましたが、2016年末には再び国内での安定的な生産を再開。ISPOでも、“Made in Germany”のタグがつけられた新製品が誇らしげに展示されていました。


“Made in Germany”のタグがついたウォータープルーフバッグの新製品 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

“Made in Germany”のタグがついたウォータープルーフバッグの新製品 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA



1974年にファミリービジネスとしてスタートしたファウデは、エコフレンドリーまたサスティナブルな方針を次々と打ち出しています。特に環境事業は、環境管理の国際規格「ISO14001」やEUの環境管理・監査制度「EMAS」から認証を得ています。例えばドイツ南部、オーバーアイゼンバッハにある本社の電力は風力やソーラー発電といったグリーンなエネルギーでまかなわれ、社員食堂で取扱われる食材はオーガニック。敷地内には保育園を備え、社員の健康促進のためスポーツクラスを実施し、自転車通勤がサポートされています。

なによりも製品が耐久性だけでなくデサイン面でも長持ちするようはからわれ、環境にやさしい素材、かんたんに補修できリサイクル可能なデザインが採用されています。こういったコンセプトが特に徹底されたラインナップは「Green Shape」(グリーンシェイプ)ラベルが貼られ、消費者もオーガニック食品を選ぶようにアウトドア製品を選ぶことができる工夫がされています。2017年春のアパレルコレクションでは、実に88%がこのグリーンシェイプラベルを備えているのだそうですよ。

ファウデのブースでは「Green Shape」ラベルの展示が盛んに行なわれていた Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

ファウデのブースでは「Green Shape」ラベルの展示が盛んに行なわれていた Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA





|防護グッズのノウハウから生まれた技術


全身ゴールドに輝くコスチュームに頭をすっぽりと覆ったバイザー付きヘルメットという姿でにっこりと微笑む女性。このオーラにすっかりやられてしまったわたしが踏み込んだのは、サングラスやヘルメットを展開する「uvex」(ウベックス)でした。1930年に最初のスキー用ゴーグルを生み出して以来、今回の見本市でメインとなるスポーツ部門のほかに、防護グッズを展開するセーフティー部門を含めたグループ企業としてドイツで成長してきました。

ウベックスの命題は、「人を守ること」。防護グラスでの実績を持つウベックスは、サングラス分野でも新技術をリードしてきました。紫外線のある場所へ来るとサングラスの色が濃くなり、屋内へ来ると無色透明になる――という昔ながらの技術を画期的に進化させたのもウベックスでした。「ヴァリオトロニック」は、バッテリーを搭載しボタンひとつでグラスの明暗を切り替えられるシステム。驚いたのは、切り替わるスピードが0.1秒だということです。フレームの内側に配されたセンサーによって、自動切替モードもONにできるそうです。

フレームに搭載したボタンひとつでグラスの明暗を切り替えられるウベックスの「ヴァリオトロニック」システム Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

フレームに搭載したボタンひとつでグラスの明暗を切り替えられるウベックスの「ヴァリオトロニック」システム Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA





ヘルメットの最上位ラインナップ「race 3 carbon」は、国際スキー連盟(FIS)の規格をクリアした安全性を確保しつつ410gと軽量。時速165kmという極限のスピードで山を下るスキーのダウンヒルレースのアスリートにも愛用されています。またこうした上位ラインナップは“Made in Germany”であることもウベックスの特徴。ワンタッチでストラップの長さを調整できるシステム「モノマティック」など、ウベックス独自の技術も搭載されています。



|人気沸騰でなかなか手に入らないブランド


オルトボックスのブースは始終人で賑わっていた Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

オルトボックスのブースは始終人で賑わっていた Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA



エアバッグを装備したバックパックや遭難捜索グッズが並ぶ「Ortovox」(オルトボックス)は、小規模ながらも魅力的なアパレルを展開。タスマニアのメリノウールを採用したアンダーウェアからスタートしましたが、いまではスイスウールのラインナップも取り入れ、確かなクオリティーと共にカラフルで楽しいアパレルが並びます。最近急速に人気が出始めたため、ドイツにいても欲しい製品を手に入れるのがなかなか難しいとオルトボックスのスタッフも嬉しい悲鳴をあげていました。


人気沸騰のオルトボックスのアパレルはドイツ国内でもなかなか手に入らない Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

人気沸騰のオルトボックスのアパレルはドイツ国内でもなかなか手に入らない Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA



大規模なブースの裏にちょこんと小屋のようなブースを築いていたのは「Pyua」(ピュア)。ピュアはリサイクルのループによって実現しているアウトドアアパレルブランドで、ブースのデザインもエコロジカルなイメージを踏襲していました。さらにブース横には、リサイクルボックスを設置。アウトドアジャケットがリサイクル素材としてどのように活用できるのかや、製作の過程でCO2排出量が77%削減されているといった内容が展示されていました。



小さなブースに所狭しと色とりどりのソックスが並んだ「Lufsox」(ルフソックス)は、ランニングといったスポーツ向けの機能系ソックスをファッションアパレルに昇華させたブランド。足首から下はロボットのような柄を配して機能を強調し、足首より上は遊び心のあるプリントというギャップがユニークです。機能系ソックスの“パフォーマンスライン”と、多種多様なプリント柄が並ぶ“クラシックライン”を展開。新柄は毎月登場し、年間およそ100柄が販売されるのだそうです。

ルフソックスの“パフォーマンスライン”。足首を境にデザインが分かれている Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

ルフソックスの“パフォーマンスライン”。足首を境にデザインが分かれている Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA





シュルテ柄沢 亜希

Aki SCHULTE-KARASAWA ● 1982年生まれ、ドイツ・ドルトムント在住。フリージャーナリスト。執筆ジャンルは自転車・アウトドアアクティビティ、スポーツ、旅、食、アート、ライフスタイルなど文化全般。幼少期の5年間をハンブルクで過ごしたことがアイデンティティのベースにある。好きなものは、ビール、チーズ、タマゴ――ワイン、日本酒、ウイスキーも大好き。ランニング、ロードバイクライドにてカロリーを相殺する日々。ブログ「ドイツのにほんじん」に日記をつけ、産経デジタル「Cyclist」、三栄書房「GO OUT」などで執筆中。

シュルテ柄沢 亜希