ドイツ情報満載 - YOUNG GERMANY by ドイツ大使館

第22回 地平線まで続く黄金の麦畑

巡礼路のマークのホタテ印が道沿いの木に打ち付けられています。

巡礼路のマークのホタテ印が道沿いの木に打ち付けられています。

第22回 地平線まで続く黄金の麦畑

ヴュルツブルクからローテンブルクを通り、ウルムに南下する約270kmのサンティアゴ巡礼路、フレンキッシュ・シュヴェービッシャー・ヤコブスヴェーク(Fränkisch-Schwäbischer Jakobsweg)をたどる旅の様子をお届けしています。

この日は朝6時半に起床。まだ深く眠っている同室の男性を起こさないように静かにパッキングを済ませ、巡礼宿を管理している近くのホテルで朝食。しっとりとした朝の空気のなかを歩きだしました。

 
 
 

昨日歩いた廃線跡に沿ってしばらく行くと、ほどなくして一面の畑が広がりました。とうもろこし、小麦、甜菜、それに種を抱いて頭を垂れたひまわり……。変化に富んだ畑が次々と現れては、また後方に去っていきます。なんともいい気分です。

地平線まで黄金の麦畑!なかなか日本では見られない風景です。

地平線まで黄金の麦畑!なかなか日本では見られない風景です。


 

先に見えてきたのは、リッタースハウゼン(Rittershausen)という町。前々回でも触れましたが、家々の屋根の上には、ソーラーパネルが設置されています。旅人のわがままだとはわかっていても、美しい田園風景のなかに突然黒々としたソーラーパネルが現れると、少しがっかりしてしまいませんか?

突如として現れる”ソーラーパネル畑”と風力発電の風車。

突如として現れる”ソーラーパネル畑”と風力発電の風車。



 

■ 祝日前に食料の確保は必須……!
 
2時間ほど行くと、だんだんと日が高くなり気温も上がって、背中が汗ばんできました。オストハウゼン(Osthausen)という町のバス停でのひと休みをはさみ、さらに5kmほど歩いたところで、ヘメルズハイム(Hemmersheim)という町に到着しました。

祝日のせいか、町はひっそりとしていました。

祝日のせいか、町はひっそりとしていました。


 

ちょうどお腹も空いてきたところだったので、ここでランチでも……と思っていたら、レストランはおろか、パン屋やキオスクなどもまったく見当たりません。ようやく見つけた小さなカフェは……close中! この日は祝日だったのですが、ミュンヘンであれば祝日でもパン屋やレストラン、カフェなどは開いています。しかしここは最寄りの都会、ヴュルツブルクから40km以上離れた片田舎。昨日のうちに非常食を買って、バックパックに忍ばせておくべきでした。
 
通りかかった犬の散歩中の女性に、食事ができるところはないかと尋ねると、「今日は祝日だから……隣の町まで車で行けば開いていると思うけど、あなたたちはピルガー(巡礼者)ですよね? だったら難しいですよね」と気の毒そうに首を振られてしまいました。
 

しかたがない、空腹に耐えながらふたたび畑のなかの一本道を歩きだします。とうもろこしの葉先がひらひらと揺れて、まるで手を振ってくれているようです。

延々と続く畑のなかの道を行きます。そろそろ足も痛くなってきて……しかし歩くしかありません。

延々と続く畑のなかの道を行きます。そろそろ足も痛くなってきて……しかし歩くしかありません。


 


■ あそこでは祝日、ここでは平日
 
ランチを食べ損ねたままベンチでもうひと休みして、さああともう少し。本日の目的地に定めたウッフェンハイム(Uffenheim)が見えてきました!
 

町に入ると、あれ? ここウッフェンハイムでは、商店やレストランなども通常営業中です。不思議に思って同行の夫に尋ねると「ここはプロテスタントの地域だからだろうね」と平然。そう、この日の祝日はマリア昇天祭(Mariä Himmelfahrt)といって、カトリックのための祝日。つまりプロテスタントの町には関係のない祝日だというわけです。

先ほどの町とはうってかわって、車が行き交い、賑やかな様子です。

先ほどの町とはうってかわって、車が行き交い、賑やかな様子です。


 

「隣の町なら開いている」という、先ほどの女性の言葉も納得です。マリア昇天祭の祝日を導入しているのは、バイエルン州とザールラント州だと大使館のHPなどにありますが、バイエルン州であるはずのここウッフェンハイムでは平日扱いのよう。宗派・地域によって祝日が違うなんて混乱しないのでしょうか。プロテスタントの地域に住むカトリック教徒ももちろんいるわけで、「本当なら祝日なのに……」なんてふてくされる子どもがいそうです。
 

カフェでようやく腰を落ち着けてひと休みしたら、今日はもうミュンヘンに戻らなければいけません。痛む足をごまかしながら小高い場所にある駅までさらに20分ほど歩き、列車に乗り込み、巡礼路を後にしました。

踏切もない、のどかな駅舎。

踏切もない、のどかな駅舎。



 

追記
私たちが乗った列車はアンスバッハ(Ansbach)で乗り換えでした。このアンスバッハという土地名に聞き覚えのある方はいるでしょうか? 今年7月25日、開催されていた音楽祭にて難民の男による自爆テロがあり、犯人は死亡、12人が負傷した事件があったのがアンスバッハです。
そしてさかのぼって18日、別の難民の男が列車内でオノを振り回し5人が重傷を負ったのも、まさに私たちが乗った列車の区間で起こった事件です。こんなにのどかで美しい場所で、と信じられない思いですが、改めて世界のゆがみを身近に感じる帰路ともなりました。

 

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巡礼中の私と夫著者プロフィール:溝口 シュテルツ 真帆(……と旅の相棒の夫)

2004 年に講談社入社。編集者として、週刊誌、グルメ誌を中心に、食分野のルポルタージュ、コミック、ガイドブックなどの単行本編集に携わる。2014年にミュンヘンにわたり、以降フリーランスとして活動。著書に『ドイツ夫は牛丼屋の夢を見る』(講談社)。南ドイツの情報サイト『am Wochenende』を運営中。http://www.am-wochenende.com/

溝口 シュテルツ 真帆

2004年に講談社入社。編集者として、『FRIDAY』『週刊現代』『おとなの週末』各誌を中心に、食分野のルポルタージュ、コミック、ガイドブックなどの単行本編集に携わる。
2014年にミュンヘンにわたり、以降フリーランスとして活動。『おとなの週末』公式ウェブサイトでコラムを連載。南ドイツの情報サイト『Am Wochenende』を運営。徒歩で行く旅に魅せられ、四国遍路、サンティアゴ巡礼を踏破する。次なる地をドイツに設定し、今ブログで発信中。

Blog : http://www.am-wochenende.com

溝口 シュテルツ 真帆