ドイツ情報満載 - YOUNG GERMANY by ドイツ大使館

ちょっとむずかしい冷蔵庫のお話

ちょっとむずかしい冷蔵庫のお話

世界情勢を見ていても、

 

身の周りの出来事を見ていても、

 

異文化交流ってむずかしいな、と思わされる今日この頃。

 

自分自身が体験したこともあれば、観察したものもあるわけですが、

 

もしかしたら異文化交流をするにはかなり高度なスキルが必要なのではないか・・・・

 

とさえ思うようになりました(笑)

 

たとえば、シェアハウス。

 

説明するまでもないかもしれませんが、シェアハウスとは少し広めの一軒家やマンションに

 

何人かでシェアして住むこと。

 

都内にたくさんあるシェアハウスには色んな国の、様々な文化圏の人たちが共同生活をしています。

 

光熱費などが家賃にフィックスで組み込まれていることが多いため、

 

外国人側からすると、一人で日本でワンルームマンションを借りるよりも安上がり、

 

そして何よりもシェアハウスに入居する場合、「保証人」が必要ないので、楽という側面があるよでうです。

 

さらにリビングなどは共同スペースとなっているため、

 

異国(日本)に住みながら気軽に交流ができ、友達ができやすいのも人気の理由のようです。

 

が、共同スペースとなっているのはリビングのみならず、トイレ、キッチン、そしてもちろん「冷蔵庫」だって共有です。

 

その冷蔵庫こそがドキッとさせられるエピソードの宝庫となっていたりします。

 

冷蔵庫を共有するということは

 

みんながそれぞれ自分が日々食べているものをその冷蔵庫の中に入れるわけです。

 

そしてこれが争そいごとの"源"となっているようなのです。

 

話を聞けば、

 

「同居人が冷蔵庫にキムチを入れたから、自分のハムにそのにおいがうつった!最悪。」

 

「自分はイスラム教だから、同じ冷蔵庫に豚肉を置くのは、やめてほしい。」

 

「食べ物を入れたいのに、欧米人が大量にアルコール類を入れるからスペースがない。」

 

「一度あけた味噌を冷蔵庫に保管とかやめてほしい。見た目が気持ち悪い。」

 

さらには冷蔵庫の中ではなく調理に関する不満も。

 

「カレーのにおいは服につきやすいから、シェアハウスで頻繁に作るのは勘弁してもらいたい。」

 

・・・・どうですか、これ。

 

シェアハウスに住んでいたある知人およびその同居人と会った時にこの話を聞き、

 

ああ文化の違いって、食べ物から始まるというか食べ物に象徴されるいことが多いんだなあ~

 

これじゃ世の中の諍いが終わらないはずだ・・・などとちょっと大げさかもしれませんが思ったものです。

 

困るのが、「これ」といった解決案がないこと。

 

自分の好きな食べ物を冷蔵庫に入れるな!とは言えないですしね。

 

「歩み寄りましょう」と教科書的に言うのは簡単ですが、

 

冷えたアルコールを大量に飲みたい人はこれからも冷やすでしょうし、

 

キムチなどのにおいの強い漬物を食べたい人や食べる習慣の人はこれからも食べたいでしょうし、

 

イスラム教の人が豚肉を食べない、できれば近くに豚肉を置いてほしくないというのもいわば常識ですし、

 

カレーを頻繁に作る人は本当に作る。

 

味噌汁だって、毎日飲みたい人は飲みますし、一度あけた味噌を保管することだって避けられません。

 

いわば、そこに良い悪いもないわけですが、これが一つ屋根の下の、同じキッチンの中の同じ冷蔵庫の話となると、これが諍いの元になるのですね・・・

 

したがって、日本にある某大学の学生寮には

 

「国別」の冷蔵庫があるのだそう。

 

各冷蔵庫のドアにはその国の「国旗」がでっかく貼ってあるそうです(笑)

 

fridge最初、この「国別冷蔵庫」を見た知人は

 

「国別で別々の冷蔵庫を使うなんて・・・・一つの冷蔵庫を皆で仲良く使うことはできないのだろうか・・・・!?」

 

と大変なショックを受けたそうです。

 

が、上に書いたような色んな国の、色んな文化的背景を持った人からの過去のトラブルや不満を耳にし、

 

「国別冷蔵庫も仕方ないのかもしれない・・・」と納得したとのこと。

 

こういうのは、もしかしたら実際に自分がその立場になってみないと、実感として分からないものなのかもしれませんね。

 

かくいう私サンドラも何年か前にこれを実感できるようなことを体験しました。

 

それはエンジニアのドイツ人男性10人と約1ヶ月間、日本の地方に出張に出かけたときのこと。

 

当然全員が同じホテルに泊まるわけですが、皆で一緒に朝食をとるのが慣例となりつつありました。

 

そこのホテルでは和風の朝食、または洋風の朝食を選ぶことができたのですが、

 

私は本当は納豆などがついた和食の朝ごはんを食べたい派。

 

が、周りのドイツ人10名は毎朝クロワッサンやパン、バターにジャムなのですね。

 

自分が納豆好きなのだかから、好きなものを食べればいいじゃん!って話ですが、

 

これが中々できないものなのですよ。

 

クロワッサン男性10人に囲まれて

 

納豆を食べる勇気・・・・・・私にはなかったです(笑)

 

周りのドイツ人男性の好奇の目にさらされそうだし、

 

説明が面倒くさそうだし、

 

そこまでして目立って食べたくないというか。

 

でもかといって納得しているわけでもなく(笑)

 

10日間ぐらいは皆に合わせて私もクロワッサンを食べていたけれど、

 

その後、みんなに鉢合わせしないように時間を変えて朝ごはんを食べに行って、サッと一人で納豆を食べたりね(笑)

 

食べたいものが食べられないって結構大きなストレスだとその時に初めて知りました(笑)

 

このように、自分とは違う文化圏の人、または習慣や食生活が違う人が大勢集まると

 

「自分の好きなものを食べる」という本来は当たり前のことさえ難しかったりします(笑)

 

自分の話になってしまいましたが・・・・

 

上記の「冷蔵庫」の例を見ると、

 

食べ物というbanalなトピックでさえ、これだけ互いの合意が難しいのだから、

 

話が飛びすぎかもしれませんが、世界からトラブル・諍いが絶えないわけだ・・・と納得してしまってはいけないのですが・・・考えさせられた次第です。

 

シェアハウスの冷蔵庫はいわば世界の縮図なのですね。

 

さて、次回はドイツの本を何冊かご紹介したいと思います。ちょっとシビアなテーマですが、特に女性の方、必見です!

 

今後ともよろしくお願いいたします。

P.S. みなさんは、お寿司の「アレンジ」はどこまで許せますか?私は心が狭いと思われるかもしれませんが、海外で「お寿司」にイチゴが入っていたりするのは、許せない派です。derdiedasデアディダスというドイツ・オーストリア・スイスの情報を発信しているサイトで、色々書きましたので、ぜひご覧ください。

サンドラ・ヘフェリン

ドイツ・ミュンヘン出身。日本歴19年、著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ) 、「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ』(原作: サンドラ・ヘフェリン、漫画: ヒラマツオ/KADOKAWA)、「『小顔』ってニホンではホメ言葉なんだ!?~ドイツ人が驚く日本の「日常」~」(原作: サンドラ・ヘフェリン、漫画: 流水りんこ/KKベストセラーズ)」など計11冊。自身が日独ハーフであることから、≪ハーフはナニジン?≫、≪ハーフとバイリンガル教育≫、≪ハーフと日本のいじめ問題≫など「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。ホームページ 「ハーフを考えよう!」 を運営。趣味は時事トピックについてディベートすること、カラオケ、散歩。

サンドラ・ヘフェリン