第21回 森のなかの廃線跡をたどって – Young Germany Japan

Blog: 南ドイツの巡礼路を行く
第21回 森のなかの廃線跡をたどって

オクセンフルト

ヴュルツブルクからローテンブルクを通り、ウルムに南下する約270kmのサンティアゴ巡礼路、フレンキッシュ・シュヴェービッシャー・ヤコブスヴェーク(Fränkisch-Schwäbischer Jakobsweg)。この道を歩くべく、私の住むミュンヘンから列車に2時間ほど揺られ、ヴュルツブルクの街までやってきました(この冒頭の写真は後に登場するオクセンフルトの町並みです)。

 

 

 

ヴュルツブルクの丘の上にたつ教会、ケッペレ(Käppele)に用意されている巡礼者向けの小部屋で一晩を過ごし、いよいよ今日から巡礼のスタートです。朝5時半、まだ薄暗い中を起き出し、小部屋の隣のリビングスペースで、昨日スーパーで買っておいたバナナやマドレーヌ、コーヒーでささっと朝食を済ませました。

テーブルに置かれていたノートには、巡礼者たちそれぞれのメッセージが記されていました。

テーブルに置かれていたノートには、巡礼者たちそれぞれのメッセージが記されていました。

 

まだ人の気配のないケッペレをそっと後にし、昨日上った300段以上の階段を再びくだって街のほうへと向かいます。ちょうど太陽がのぼりはじめて、ヴュルツブルクの街をオレンジ色に照らしました。

もう一度ゆっくりとワインを楽しみに来たい!

もう一度、今度はゆっくりとワインを楽しみに来たい!

 

■ サンティアゴ・デ・コンポステーラまで2743km

気温は14℃。晴れ。鳥の声が響くなかを歩き出します。巡礼路はマイン川沿いをずっと南西のほうへとのびています。今日歩く予定の28.5kmのうち、約20kmがこのずっと右手にマイン川を見ながら進む川沿いの道です。

しばらく行くと、左手にワイン畑が現れました。このヴュルツブルク近郊しかり、以前訪ねたシュトゥットガルト近郊しかり、ワイン文化の土地からは、やわらかな緑の葡萄の様子のせいでしょうか、どことなく優しい女性的な印象を受けます。ビール文化のミュンヘンとはまた違った雰囲気を楽しめます。

立派な葡萄が実り、収穫のときが近づいています。

立派な葡萄が実り、収穫のときが近づいています。

 

「2743km Santiago de Compostela」、サンティアゴ・デ・コンポステーラまで2743km(!)のサインを横目にもくもくと歩いていくと、ジョギングやサイクリング中のドイツ人たちが行き交うようになりました(すれ違うときに決まって、ふわっと洗剤か、あるいはシャンプーなどの清潔な匂いがするのがドイツ人の特徴のひとつだと私は勝手に思っているのですが、どうでしょうか)。

休憩をはさみながら、気温もぐっと上がったなかを汗だくになりつつ歩き続け、オクセンフルト(Ochsenfurt)という町の手前で早めのランチにすることに。なにかありそうだと思って入ったカフェでしたが、見ればジャンクメニューばかり……。仕方がないのでドイツ人がこよなく愛する山盛りのポメス(Pommes、フライドポテトのこと)とチキンナゲットをぼそぼそとつまみました。

ほどなくしてオクセンフルトへ向かう立派な橋が現れました。マイン川にはここで別れを告げます。

橋の向こうに見えるのがオクセンフルトの街です。

橋の向こうに見えるのがオクセンフルトの街です。

 

冒頭の写真のとおり、オクセンフルトは木組みの家々が残る、可愛らしい町でした。

 

■ 自転車道に整備された廃線跡

次に現れたのは、森のなかにのびる舗装された小道。途中立てられていた看板に、1907年から1992年の間使われていた31kmの電車の線路を、1995年に自転車道に整えたとあります。なるほど、廃線をこんな風に利用するとは、さすがサイクリング好きのドイツ人です。

人々の足や運輸を担ったかつての路線が、レジャーとして楽しまれています。

人々の足や運輸を担ったかつての路線が、いまはレジャーとして楽しまれています。

 

そろそろ痛み出した足をごまかしながら廃線跡を7kmばかりも行き、15時ごろに本日の目的地、ガウケーニヒホーフェン(Gaukönighofen)という小さな町に到着です。この町には巡礼者専用の宿があり、事前に電話をして本日使わせてほしい旨を連絡しておきました。

こちらがその宿。可愛い一軒家です。

なかはひんやりとやや寒かったけれど、ありがたい存在です。

なかはひんやりとやや寒かったけれど、ありがたい存在です。

 

1階にはダイニングキッチンとバスルーム。2階にはマットレスが6枚敷いてあり、清潔なシーツや枕カバーも用意されていました。1晩素泊まりをして、ひとり10€です。

2階には先客のドイツ人のおじさんがひとり。スペインのサンティアゴ巡礼に行く前に、ドイツ国内を歩いてトレーニングに励んでいるのだと話してくれました。彼が言った、

「友達や家族には恵まれているんだけど、たまにはひとりで考える時間もほしくてね」

という言葉が印象的でした。たしかに、ひとりで巡礼路を歩けば、物思いにふける時間は飽きるほどあります。

シャワーを浴び、近くで唯一開いていたイタリアンレストランでピザとパスタの夕食(食事に恵まれない1日となってしまいました!)。そしてマットレスの上に敷いた寝袋に潜り込むやいなやあっという間に眠り込んでしまった、フレンキッシュ・シュヴェービッシャー・ヤコブスヴェーク1日目の夜でした。

 

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巡礼中の私と夫著者プロフィール:溝口 シュテルツ 真帆(……と旅の相棒の夫)

2004 年に講談社入社。編集者として、週刊誌、グルメ誌を中心に、食分野のルポルタージュ、コミック、ガイドブックなどの単行本編集に携わる。2014年にミュンヘンにわたり、以降フリーランスとして活動。著書に『ドイツ夫は牛丼屋の夢を見る』(講談社)。南ドイツの情報サイト『am Wochenende』を運営中。http://www.am-wochenende.com/

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