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地域で共有する知のリサイクル ドイツが起源の“パブリック本棚”とは?

街角に神出鬼没の“パブリック本棚”。人口7万超の町アルンスベルクでは、中心街に設置されていた Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

街角に神出鬼没の“パブリック本棚”。人口7万超の町アルンスベルクでは、中心街に設置されていた Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

地域で共有する知のリサイクル ドイツが起源の“パブリック本棚”とは?

連載「アクティブ ドイツ!」<2>

読み終わった本やいらなくなった本、みなさんはどうしていますか? わたしは、過去に日本で古本屋チェーンへ本を持ち込んだ時に思い入れのあった本も一様にグラム単位で価値を計られ残念な想いをしてから、美術本として価値が高い本は図書館へ寄贈するなどしてきました。ここドイツでは、古本屋や図書館以外に“パブリック本棚”(Öffentlicher Bücherschrank)を利用して本をリサイクルするという方法があります。(2016年9月30日)



|ドイツ国内には1000カ所以上

中が見える扉が付いたパブリック本棚。最下段が子供向けの本コーナーになっていた Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

中が見える扉が付いたパブリック本棚。最下段が子供向けの本コーナーになっていた Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA



パブリック本棚は1990年台にドイツ・ハノーファーで誕生したアイディアとされ、ドイツを中心として主にヨーロッパで展開されてきました。ドイツ国内の設置場所は、ざっと数えて1000カ所を超えています(OpenBookCase.orgより)。

パブリック本棚のしくみは簡単。誰もが無料で利用することができ、本棚から本を借りて同じ場所へ返却することはもちろん、持ち出してほかのパブリック本棚へ投入したり、新たに自分のお気に入りの本を投入したりすることができます。本棚のデザインに決まったものはありませんが、基本的にはしっかり地面の固定された本棚に中が見える透明なプラスチック板やガラスの扉が付いています。

そして設置場所は神出鬼没。ベルリン、ケルン、デュッセルドルフといった都市だけでなく村の街角にも設置されていますし、中心街や大通り沿いと言わず住宅街にある場合もあります。ドルトムントでこれまでみかけたことはなかったのですが、調べてみると歩いて20分くらいの場所に設置されていることがわかりました。さっそくサイクリングがてら立ち寄ってみることにしました。

ドイツを中心にパブリック本棚が展開しているのがわかる(OpenBookCase.orgウェブサイトのマップページより)

ドイツを中心にパブリック本棚が展開しているのがわかる(OpenBookCase.orgウェブサイトのマップページより)


 

|地域の文化向上のため

アパートが連なる公共広場に設置された本棚は、合板を用いた木製。こげ茶色にペイントされ、風景に馴染んていました。本の数は、200冊ちょっとといったところでしょうか。小説が中心ですが、中にはパソコンのシステム解説書も並んでいました。アメリカで1980年に出版されたEric Van Lustbaderの『The Ninja』のドイツ語版、『Der Ninja』もありましたよ。

アパートが集まる場所に設置されたドルトムントのパブリック本棚 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

アパートが集まる場所に設置されたドルトムントのパブリック本棚 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA



わたしが訪れたパブリック本棚の運営は、ドルトムントを拠点とする不動産の協同組合により行なわれていました。本棚の横に貼られた説明書きには、地域の文化向上のために設置しているということが、利用方法とともに短文で記載されていました。モットーは、「探していたものを見つけ、持っているものを与える」だそうです。


|“旅する本”のサービスも

本は、知の結晶。優れたアイディアに、類似のサービスも生まれています。アメリカでは鳥箱のようなコンパクトなサイズに本がぎっしり詰まった「Little Free Library」というサービスが2010年に登場。NPOにより運営され、ことし1月にはおもにアメリカ国内で3万6000カ所の設置を達成したそうです。

また2001年には、本単体を不特定の人たちとシェアするという「ブッククロッシング」というアイディアが誕生しています。こちらは各本をID登録してIDのラベリングをしたら、ともに旅をし読み終わればその場に置いてみるというもの。本は次の読者へと共有され、その行方はウェブサイトにてID追跡できます。ユーザーが多い国のおよそ4分の1はアメリカですが、次いで16%がドイツとなっています。


ところで、ドイツには日本の文庫にのように縮小版の本がありません。したがって、本および本棚は重厚。我が家だけでなく、これまでうかがったどの友人宅にもリビングルームや書斎の壁を埋め尽くすほどの本が並んでいました。パブリック本棚に本を共有できれば、省スペース。そして丈夫な本だからこそリサイクルできるのかもしれませんね。

シュルテ柄沢 亜希

Aki SCHULTE-KARASAWA ● 1982年生まれ、ドイツ・ドルトムント在住。フリージャーナリスト。執筆ジャンルは自転車・アウトドアアクティビティ、スポーツ、旅、食、アート、ライフスタイルなど文化全般。幼少期の5年間をハンブルクで過ごしたことがアイデンティティのベースにある。好きなものは、ビール、チーズ、タマゴ――ワイン、日本酒、ウイスキーも大好き。ランニング、ロードバイクライドにてカロリーを相殺する日々。ブログ「ドイツのにほんじん」に日記をつけ、産経デジタル「Cyclist」、三栄書房「GO OUT」などで執筆中。

シュルテ柄沢 亜希