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カッコイイデブ

©German Embassy Tokyo

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カッコイイデブ

「デブ」は江戸時代に使われてた「でっぷり」が語源だそうで、肥満を含め太った体型の人を指す。
今日登場する「デブ」は、その言葉の持つ否定的な意味合いは全く無く、ただ単に表現上「太っている」ことを指す。
デブにもいろいろあって、ぶよぶよの肥満体もいれば、力士の様に「肉の鎧」を着た大男もいる。
「昔は痩せてたんだけどなぁ」などとデブには必ずそこに至る「過程」があり、それは悲喜交々の人生そのものなのである。
デブを否定的に考える人はその体型に至る過程を振り返りその「原因」を探る。
そして必ず「遺伝」という生物学をも持ち出すのである。
親のどちらかが太っていれば勿論のこと、両親ともに痩せていた時は祖父母がその標的になるのである。
ただし多くのデブは己の怠惰、弱さが原因と自己批判するケースが多い。
ドイツの医学者で精神科医のクレッチマーが体格と性格が関連性を持っていることを示しているのは有名・・・
回転台で回りながらポーズをとって「結果にコミット」と痩せた体を見せびらかすCMが有名だが、その逆のパターンのCMはまだお目にかかったことがない。
まぁ、第三者に手伝ってもらわなくとも太るのは容易だ=^_^;=

さてさて、脱線してしまったけど本題に。
ライナー・レフラー(Rainer Löffler)さん作、酒寄進一さん訳『人形遣い』読了。
事件分析官のアーベルとクリストが活躍するドイツミステリ。
事件分析官は刑事で事件の分析をして解決に導くのが仕事。
殺人事件の場合、その死体を前に法医学者や色々な専門家(今回は昆虫学者まで)が登場して事件解決に死体をしらみつぶしに調べ(実際にシラミがいた場合はつぶしてはならないが・・・)事実を列挙。
それを元に推理というより分析して少しずつ犯人像に迫っていくのが事件分析官。
主役のアーベルがその「デブ」なのである。
ただその体型は文中に「アライグマ体型」と表現されているからカワイイデブ♪

いつもドイツミステリを読み始める時、巻頭の登場人物を見渡し犯人の目星を付ける。
最初はアーベルの紹介。
次は「ハンナ・クリスト」。
アーベルの助手で首席警部。
「ハンナ」ってことは女性かぁ・・・
続いてアーベルの上司など警察関係者に法医学者、昆虫学者。
そして殺された弁護士の妻に弁護士の秘書、虐待された少年にその母と父、娼婦が紹介されてる。
弁護士の妻と最後の娼婦が怪しい?!

さて、結果は本書を各人読んで確かめていただくとして、なぜ「カッコイイデブ」なのか?!
物語は最初の方で主人公アーベルを職業柄というより彼独特の仕事の仕方の「特異性」から「変わり者」と感じさせる表現が多く、なかなかの偏屈ぶりが読者に植え付けられる。
それだけにまだ「カッコイイ」感じはしないのである。

タイトルに出てくる「人形」は物語全体を支配しているといっても過言では無く、表紙の画像からもその「不気味さ」が十分に伝わってくる。
ただ、原作のタイトルは『Blutsommer』。(「Brut」が「血」で「Sommer」が「夏」なので『血塗られた夏』酒寄さん訳)
物語の季節の「夏」と「血」はとても重要なファクトなんだ。
読んでるとこの物語の「夏」の暑さ、デブには相当キツいはず。
なのにアーベルはコートを着ている。
汗かいてその汗がコートに染みて、それを毎日着て・・・不潔!
一体どこがカッコイイの?!

男をカッコイイと思わせるにはもうひとつの要素が必要で、それは相手によって高められる。
作者のレフナーさんはうまいこと助手のクリストを利用。
はじめにクリストはアーベルに反抗しその不仲ぶりが印象づけられ、頭のキレる気の強い女性像が見事に表現されている。
しかし反抗していたクリストが次第にアーベルを理解していき、アーベルもクリストに惹かれていき、それまでは感じなかったクリストの魅力的な女性像が巧みに読者に植え付けられいつしかアーベルと同じ様にクリストを意識する。
そして・・・

ネタバレになるから書けないけれど、とにかくカッコイイんです!
自分を犠牲にしてまで相手を思い困難に立ち向かう!
カッコイイデブ。

そしてもう1人、デブが登場します。
アーベルが派遣されたケルンの刑事警察第一首席警部で今回の難事件を取り仕切っているグライナー。
「150キロの巨体」だそうで、これはもう力士クラス。
(ドイツ人でもそうそうお目にかからない?!)
その体型から来る様々な身体的時限爆弾(脳の血管が切れて半身不随だとか・・・)が文中に現れ、難事件を前に苦闘する姿が痛々しい。
アーベルを叱責し、後の汚名返上の大立ち回りは読んでて頼もしく後光が射して見える!
これまたカッコイイデブ。

序盤でアーベルが犯人と接触していたことに気付かず、ボクは文中で何回も誤認逮捕してしまうほど作者のレフラーさんの術中にハマってしまった!

酒寄さんの名訳でますますドイツミステリが面白い!
みなさんもカッコイイデブの活躍をぜひ読んでみてニャ=^_^=

(02. März 2016)



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