ドイツ情報満載 - YOUNG GERMANY by ドイツ大使館

バリスタとして働くために、日本から準備 山本順平さん

バリスタとして活躍する山本順平さん

バリスタとして活躍する山本順平さん

バリスタとして働くために、日本から準備 山本順平さん

1杯のコーヒーをおいしく淹れるプロフェッショナル、それがバリスタという職業です。日本でも数年前からバリスタが注目され始めましたが、ここベルリンでも状況は同じ。コーヒーの質と淹れ方にこだわったお店が年々増えており、世界各国から優秀なバリスタたちが集まっています。
山本順平さんは、日本でバリスタとしての経験を積んだ後、ベルリンのカフェシーンに魅せられてやって来ました。どうやって現在の職場を見つけたのか、ベルリンで働くようになって感じたことなどを話していただきました。


■日本で転職してバリスタに

京都出身の山本さんは大阪の大学を卒業後、住宅関係の会社で社員として働いていました。しかし2010年にバリスタに転身。当時はカプチーノなどにミルクで模様を描くラテアートが流行し始めた頃で、山本さんもラテアートをきっかけにコーヒーの道に入ったそうです。
最初に入社したのは、日本全国に展開している世界規模のコーヒーチェーン。大手ゆえに、研修制度がしっかりと整っている点が魅力的でした。「それまではコーヒーは苦くて飲めなかったんです」と笑う山本さんは、ここでの勤務を通じてコーヒーの奥深い魅力に引き込まれていきました。

ニット帽をかぶっていた私に描いてくれたラテアート。かわいい絵柄はベルリンでは珍しい

ニット帽をかぶっていた私に、描いてくれたラテアート。かわいい絵柄はベルリンでは珍しい



カプチーノのミルクを注ぐ山本さん

カプチーノのミルクを注ぐ山本さん




現在の世界的なコーヒーの流れは、「サードウェーブ」と呼ばれるもの。これは文字通り「第3の波」で、第1の波はコーヒーが大量消費されるようになった19世紀後半から20世紀半ばまで。第2が70年代から始まった、スターバックスなどに代表されるシアトル系コーヒーの時代。
そして現在の「サードウェーブ」は、品質(品種、産地・農園、栽培方法、加工プロセス)や焙煎にこだわったコーヒー豆を用いて、1杯ずつ丁寧に淹れるやり方のこと。豆の特性を味わえるコーヒーといえばいいでしょうか。
東京にも出店しているアメリカの「ブルーボトルコーヒー」がこの流れを牽引してきましたが、もともとは日本の喫茶店文化に影響を受けています。日本の古き良き喫茶店は、マスターが1杯ずつ丁寧に淹れていますよね。

豆にこだわるサードウェーブは、コーヒーの味について「ナッツのような……」「シトラス系の……」などと表現しますが、こうしたことも山本さんはチェーン店で働きながら学びました。
次第にコーヒーに対する考えが深まり、自分なりにコーヒーを追求したいと、京都のコーヒーショップへ転職。そこはバリスタの技能を競う「バリスタチャンピオンシップ」日本大会で優勝したバリスタが働く名店でした。

■日本にいるうちから、移住の準備を開始

京都のコーヒーショップに入店してから、バリスタとしてさらに本格的に勉強するように。約4年の勤務でコーヒーや接客など幅広く学びましたが「一生のうちにいつかは海外で仕事をしたい」という思いが募り、ワーキングホリデービザが取れる20代のうちにベルリンへ行くことを決意したそうです。

バリスタとして海外で働くとなれば、通常ならバリスタ文化先進国のアメリカやオーストラリアを選ぶところ。周囲の人々からも「なぜベルリン?」と言われたそうです。
山本さんがベルリン行きを決めたのは、偶然にも私が2009年に出版した『ベルリンのカフェスタイル』という本がきっかけとなったのだそうです。これはベルリンのさまざまなカフェを紹介した本ですが、ここに載っているカフェのゆるやかな雰囲気や、一見無造作ながらおしゃれなところが魅力的に思えたそうなのです。

行き先をベルリンに決めた山本さんは、日本にいるときからドイツ語を勉強し始め、ベルリンでの語学学校入学の手続きも済ませました。

さらに、「現地で仕事を見つけるのは、大変だと思っていました」と、日本からベルリンのコーヒーショップへ履歴書をメール。そのうち何軒かから返事が届き、ベルリンに来たと同時にすぐにトライアルとして働くことになりました。ワーキングホリデービザを取得していたため、ドイツ国内での労働は問題ありませんでした。
山本さんのように、移住先での目標が明確な場合は、日本で準備できることはいろいろあると思います。そうした事前の準備があればあるほど、現地での生活をスムーズに始められることでしょう。

おいしいエスプレッソが生まれる瞬間

おいしいエスプレッソが生まれる瞬間



コーヒーの味はバリスタ次第

コーヒーの味はバリスタ次第




■オーナーからコーヒーを一任される存在に

ベルリンで働き始めた山本さんは、「ここに来てよかったと思います」と話します。
山本さんにとってバリスタの魅力のひとつは、コーヒーを介して多くの人と知り合えること。日本でもお客さんと知り合うことはできましたが、ヨーロッパでは人との距離がより近いと感じるとか。ここでは、お客さんと友人になることも珍しくありません。

現在山本さんが働くWIM KAFFEEは、カウンターが中心の小さなコーヒーショップ。そこのメインバリスタとして、コーヒーに関することをオーナーから任されてます。
「オーナーは自分を認めてくれているので、コーヒーについてあれこれ提案できます。この店はオープンしてから1年と少しなので、新しいことにトライでき、自分も店と一緒に成長できます」
と、山本さんは話します。

仕事の傍ら、ドイツ語と英語も勉強中です。ベルリンのバリスタ界は、外国人も多いインターナショナルな世界。そのため、独英両方の言葉が必要なのだそうです。

「状況は常に変化するので、遠い将来のことは決めていません」と話す山本さん。WIM KAFFEEには次々とお客さんが訪れ、山本さんやほかのお客さんたちと会話をして帰って行きます。そんなアットホームなお店で、おいしいコーヒーをお客さんに提供することに、いまは集中する日々です。

WIM KAFFEE HP:http://langzam8.wix.com/wim-kaffee
Facebookページ:
https://www.facebook.com/WiM-kaffee-1506910026249232/

文・写真/ベルリン在住ライター 久保田由希
2002年よりベルリン在住。ドイツ・ベルリンのライフスタイル分野に関する著書多数。主な著書に『ベルリンの大人の部屋』(辰巳出版)、『ベルリンのカフェスタイル』(河出書房新社)、『レトロミックス・ライフ』(グラフィック社)、『歩いてまわる小さなベルリン』(大和書房)など。近著に『かわいいドイツに、会いに行く』(清流出版)。http://www.kubomaga.com/

久保田 由希

東京都出身。小学6年生のとき、父親の仕事の関係で1年間だけルール地方のボーフムに滞在。ドイツ語がまったくできないにもかかわらず現地の学校に通い、カルチャーショックを受け帰国。大学卒業後、出版社で編集の仕事をしたのち、フリーライターとなる。ただ単に住んでみたいと、2002年にベルリンへ渡り、そのまま在住。書籍や雑誌を通じて、日本にベルリン・ドイツの魅力を伝えている。『ベルリンの大人の部屋』(辰巳出版)、『歩いてまわる小さなベルリン』(大和書房)、『かわいいドイツに、会いに行く』(清流出版)ほか著書多数。近著に『きらめくドイツ クリスマスマーケットの旅』(マイナビ出版)。散歩、写真、ビールが大好き。

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久保田 由希