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シュターツカペレ・ドレスデンで、ホルンを演奏 日比野美穂さん

シュターツカペレ・ドレスデンで、ホルンを演奏 日比野美穂さん

シュターツカペレ・ドレスデンと言えば、ドレスデン・ゼンパー・オーパー所属の、日本でもファンの多いオーケストラ。来日公演も度々行われています。

そのシュターツカペレ・ドレスデンでホルンを演奏しているのが、日比野美穂さん。驚くことに、まだベルリン芸術大学で勉強中の大学生です。シュターツカペレにはアカデミスト(研究生)として契約しており、演奏し始めて数ヵ月が過ぎたところです。
本場ドイツで、音楽の仕事に就きたい人は多いことでしょう。そこで日比野さんに、これまでの道のりをうかがいました。

たまたま出合った、ホルン
日比野さんがホルンを始めたのは、中学校の吹奏楽部。当初からホルンを目指していたわけではなく、体験入部で吹いてみたところ、顧問の先生から指名されたそうです。
しかし、それが運命というものなのかもしれません。ホルンに夢中になった日比野さんは個人レッスンを受けるようになり、高校も音楽科があるところへ進学。それまで借り物だったホルンから、自分のホルンを買ってもらい、練習にもいっそう熱が入りました。

音楽高校へいたときの目標は、音大進学。そして音大に入学すると、今度はオーケストラ入団が目標になりました。音大生がプロオーケストラで演奏できることは通常ではほとんどありませんが、日比野さんはその機会をもらえ、経験を積みました。「とてもありがたい経験でした」と日比野さんは振り返ります。

転機が訪れたのは、大学4年生のとき。日比野さんは、毎年夏に札幌で開かれるPacific Music Festivalのメンバーでした。この音楽祭は、オーディションで選ばれた学生たちが、約1カ月間に渡って世界の一流音楽家から教育受けるというプログラム。参加学生たちによるオーケストラは、ユースオーケストラとしてトップレベルの評価をされています。日比野さんはオーケストラとプログラムから、海外の演奏家の指導を受けることになりました。
そこで初めて海外の演奏を知った日比野さんは、日本との演奏の違いに衝撃を受けました。
「そのとき、日本でも仕事として演奏させてもらえる機会がいくつもありました。でも海外で勉強できるのなら、行きたいと思ったんです」
と、ドイツ行きを決意しました。当時は、ドイツで活動する機会があるとは思ってもいなかったそうです。

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シュターツカペレ・ドレスデン

ベルリン芸術大学での戸惑い
日比野さんは、現在ベルリン芸術大学(以下UdKと表記)の大学生です。日本の音大を卒業してしまうと、ドイツの大学の学部生として入学できないことから、卒業前にUdKを受験することに。
ドイツの音大では、受験前に教授のレッスンを受けることになっています。その時点で、教授がある程度判断を下すのです。
「教授の判断ポイントとしては、クラスのメンバーと馴染めそうか、上達できる将来性があるか、クラスの方針と合うか、だったようです」
ホルンのクラスは難関だったようですが、日比野さんは見事合格し、今年で入学から3年目を迎えました。

こう聞くと順風満帆のようですが、クラスに慣れるのに2年かかったと言います。
「入学当初は本当に大変でした。日本人は協調性を重視しますが、ドイツでは自分の考えや、やりたいことに忠実です。ときには、アグレッシブな行動も必要になります」
考え方や行動の違いは、音楽に限らず全ての面において表れるもの。ドイツに来た日本人の多くが、ぶつかる壁でもあるでしょう。

「クラスで演奏し、その後意見を交わす場もあります。そこでは年齢や経験など関係なく、みんなが遠慮なしに意見を言うので、最初のうちは傷つくこともありました。それに、自分も意見を言わないと、何も考えていないと思われてしまいます」

これもまた、日本人がドイツで抱える問題です。日本ではそのような習慣がないので、いきなり意見を求められても何も出てこないということは、多くの日本人が経験しているのではないでしょうか。これは幼い頃から訓練しないと、なかなかできないことだと思います。
当たり前ですが、海外生活ではこうした違いを乗り越えていく必要があります。

ドイツ各地のオケで研修
音大在学中は、研修のためにオーケストラで演奏をすることが必修となっています。日比野さんは昨年の夏まで、ブラウンシュヴァイクのオーケストラで研修生として1年間演奏しました。

そして昨年10月に、現在いるドレスデン・シュターツカペレのアカデミスト(研究生)というポジションのオーディションに合格。アカデミストはその性格上、学生でないと受けられません。オーディションを受ける以前に履歴書審査があり、それに通った学生だけが実際に演奏による審査に招待されるのだそうです。
ホルンのパートはバイオリンなどとは違い、演奏するのはひとりだけ。その分、倍率も高くなります。オーディションの結果、31人の演奏審査招待者に対して、ホルンとしては日比野さんだけが選ばれました。

ドイツの音大では、ウアラウプスゼメスターといって、学生が研修などに充てられる休暇期間があります。現在日比野さんは、大学で学ぶ代わりに、世界一流オケであるシュターツカペレ・ドレスデンでの演奏を通して研修しています。

日比野さんの将来の夢は、ドイツのオーケストラで正団員になること。そのために、自分が頭で描く音を出せるよう、練習を繰り返しているところです。
「イメージ通りの音を出すために、どう体を使うか、息を出すか、その方法を見つけるのが練習です。体を作るために水泳をしたりもしています。吹く人の性格によって、音も変わりますね」

きっと経験する全てのことが、日比野さんでしか出せないホルンの音へつながっていくのだと思います。そうした一人ひとりの魅力が積み重なって、オーケストラの音となっていくのでしょう。

久保田 由希

東京都出身。小学6年生のとき、父親の仕事の関係で1年間だけルール地方のボーフムに滞在。ドイツ語がまったくできないにもかかわらず現地の学校に通い、カルチャーショックを受け帰国。大学卒業後、出版社で編集の仕事をしたのち、フリーライターとなる。ただ単に住んでみたいと、2002年にベルリンへ渡り、そのまま在住。書籍や雑誌を通じて、日本にベルリン・ドイツの魅力を伝えている。『ベルリンの大人の部屋』(辰巳出版)、『歩いてまわる小さなベルリン』『心がラクになる ドイツのシンプル家事』(大和書房)、『かわいいドイツに、会いに行く』(清流出版)、『きらめくドイツ クリスマスマーケットの旅』(マイナビ出版)ほか著書多数。新刊『ドイツ人が教えてくれたストレスを溜めない生き方』(産業編集センター)。散歩、写真、ビールが大好き。

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久保田 由希