日本特有の感覚「懐かしい」、そして「愛妻家」
今年もあと少しですね。みなさんにとっては、どんな2014年でしたか。
私はいつにも増して自分の母国である「日本とドイツ」についてグルグルと考える年でした(笑)
2014年の締めくくりとなるこのコラムでは「日本にしかない感覚」「ドイツにしかない感覚」についてお話したいと思います。
- まずは日本。「懐かしい」という感覚、日本特有だと思います。もちろんドイツ語に訳そうと思うと、Nostalgie verspürend / wehmütig zurückblickend / lieb / teuerなどと辞書には書いてありますが・・・実際にこれらのドイツ語がドイツの日常生活で使われているかというと・・・使われていないのですね。日本人は日常生活の中のふとした時に「あ、懐かしい風景だな」と感じたり口にしますよね。私も年中口にします。常磐線に乗れば「懐かしい~。日本に来たばかりの17年前、よく常磐線に乗ってたの~」、都内のドイツフェストやオクトーバーフェストでソーセージを食べれば「懐かしい~。ドイツに住んでたころ、よくソーセージ食べてたの~」とまあこんな感じです。懐かしい食べ物、懐かしい場所、懐かしい人・・・。日本人は日常生活のいたるところで「懐かしい」と感じ、それを口にするのですね。ドイツ語で同じことを言おうとすると、「この食べ物を見たり食べたりすると、●年前に□□という国に住んでいた時のことを昨日のことのように思い出すわ」などと長い説明をしないといけないのですね。なので、この日本語の「懐かしい」は大好きな言葉です。もしも「日本語の言葉で何が一番好き?」と聞かれたら、私は即「『懐かしい』という言葉」と答えます。
- 次はドイツ。ドイツではよく聞くけれど日本ではあまり聞かない言葉に“Fernweh“というものがあります。辞書に“Fernweh“と入れてみたら、日本語では「旅心」または「放浪熱」というようですね。しかし、どちらも、日本の日常生活においてあまり使われない言葉のような気がします。この“Fernweh“という言葉、ドイツ人はよく使います。素敵な風景を見ると、「ああ、遠くに行きたい。外国に行きたい」とFernwehになり、実際口に出します。そう、Fernwehとは「遠くにある外国への恋しさ」なのですね。「旅に出たい!」という強い気持ちの表れでもあります。ドイツ人はいつもどこか遠くに行きたがっているのですね(笑)
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そして、また日本。私は日本に来て「愛妻家」という言葉にビックリしました。日本人が「誰々さんは愛妻家なんですよ~」なんて言うと、それは微笑ましくもあるのですが、逆に言うと「妻を愛する男性が珍しいからこそ、このような言葉があるのだな・・・」と思わざるを得ないこともまた事実です。そう思うと、女性としては複雑ですね。・・・ドイツ語ですか?もちろん愛妻家などという言葉が使われることはほぼありません。では、本当にドイツの男性は全員が妻を愛しているのかというと、私にはお答えできかねますが、少なくともドイツは体裁上は「妻は愛すべきもの」つまり「妻を愛するのは当たり前」だということになっているので、ワザワザ「愛妻家」などという言葉を使う人はあまりいないのですね。
・・・・文化の違いは、こんなところにも見られるのですね。
さて、最後。宣伝になってしまって申し訳ないのですが、私このたび本を出させていただきました!「ドイツ育ちの”ハーフ”は知っている!日本人、ここがステキで、ここがちょっとヘン。」(大和出版)といいます。ここでも、様々な文化の違いを取り上げていますので、ぜひ読んでいただけると嬉しいです。おススメは、51ページの「愛社精神」のくだり、52ページの「単身赴任」のエピソード、そして57ページのArbeitszeugnis(勤務成績表)の話です!みなさん、どうぞよろしくお願いいたします。