ドイツ、新学期の風物詩
日本では夏休みが終わり、新学期が始まりましたが、ベルリンでも、8月23日の土曜日から新学期が始まりました。
ドイツでは州ごとに休暇のスタートの日をずらしているため新学期が始まる日も違い、バイエルン州など、まだ夏休み中の州もありますが、この時期だけドイツの町中で見かける、円錐状の紙製の袋があります。
これ、いったい、何なのかご存知でしょうか?文房具店や画材店、お菓子屋さんやスーパーの店先でも見かけます。
知らない人にとっては、謎の物体だと思うのですが、まさにその瞬間を某デパートの文具売り場で目撃。家族連れのフランス人観光客が、一体コレは何に使うものなのかと話し合ったあげく……あ、かぶった!
テュー テ、つまり袋という名前ですが、紙を丸めた円錐形の入れ物の上にクレープ紙か薄い布がついていて、それをひねって蓋をするかわいい作り。お菓子屋さんでも うお菓子が詰まったセットも販売していますが、多くの親は無地のシュールテューテを購入し、子どもの好きなキャラクターを貼付けたり、布を貼ったりしてカ スタマイズ。
昔は新一年生は、このシュールテューテを手に「私の入学一日目」と書かれた黒板の前で、記念撮影するのが定番だったそうで、聞くと皆この手の写真を持っているのが微笑ましい。
エーリッヒ・ケストナーの「わたしが子どもだったころ」にもケストナーの入学初日の話が登場します。ドイツに来る前に読んだので、砂糖菓子がいっぱいに入った等身大の三角袋って???
しかしなぜこの形なのでしょう?ケ ストナーの時代からあったと言うことは相当昔からあったと推測されますが、Wikipediaによれば、1810年にザクセン、チューリンゲン地方で始まったとか?200年も前!当時はツッカーテューテ(砂糖袋)と呼ばれ、学校の庭の木にぶら下げられていたようなので、ああいう形なのかもしれません。 (先生の庭に「シュールテューテの木」があり、ちょうどいい大きさに育つと入学式、なんて話もあったとか。にんじんのような形から想像されたのかも?)
私はこの形が気に入っていて、この時期ラッピング用に大量に買い込むのですが、大人にシュールテューテをプレゼントすると「え?」という顔をされます。でも今年新しいことを始める友人に贈ったら「そうね、私は新一年生だもの!」と喜んでもらえました。(素敵な考え方!)
私にとっては、この姿が見えないと秋が来た気がしないほどのドイツの風物詩のひとつ。俳句がドイツにあれば季語にしてほしいくらい。この時期にドイツに来る方は、ぜひ、探してみて下さい!
©Hideko Kawachi
著者プロフィール
河内秀子(かわちひでこ)
東京都出身。2000年からベルリン在住。
ベルリン美術大学在学中からライターとして活動。雑誌『Pen』や『giorni』などでもベルリンやドイツの情報を発信しています。ガイドブック『ことりっぷフランクフルト・ベルリン』編など。
趣味は漫画とカフェ巡り、食べ歩き。蚤の市やオーガニックコスメも大好物。
Twitterで『一日一独』ドイツの風景を1日1枚、アップしています。