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都内のライフスタイルがドイツ的になる?

都内のライフスタイルがドイツ的になる?

© m.piscator (flickr.com)

都内のライフスタイルがドイツ的になる?

大阪から東京に戻ってもうすぐ2週間。東北の被災地の皆さんのことを思うと、なんでもないことなのだけれど……、1ヶ月ぶりに戻った東京はやっぱりいつもの東京とは違っていた。目黒区がやっているジム(体育館)に行ったら、このジム、いつもは平日夜10時までやっているのだが、職員が「節電で6時までとさせていただいております」と申し訳なさそうに言った。駅の照明も最低限しかつけていないから暗かったし、エスカレーターも下りは止められているし、近所のスーパーマーケットは、お水や乳製品など一部まだ不足しているものも多かった。そして店内には「お水はお客様お1人1点まで」「お水は各家庭1点まで」という看板。



水がないのは困るけれど、節電による東京都内の暗さは……ミュンヘンと似ていて懐かしいとさえ思ってしまった。ドイツは災害時ではなくても、今の東京と同じ感じの暗さだ。常に節電を考えて照明を本当に必要な分しかつけないし、むしろ暗めのほうが居心地がよい雰囲気がある。ドイツ人は日本人よりも「眼が光に敏感」というのもあると思うけど、もともとエネルギーを大量に消費することイコール便利&豊かさの証だという感覚がない。だから、災害がなくても、とくに困っていなくても、エネルギーは常に大事にする。



考えてみれば、災害後、都内で節電のために「止めているもの」は本来は無くても困らないものばかりだ。下りのエスカレーターはあれば便利だけれど、無ければ無いで歩いて済む話(障がい者や高齢者にはエレベーターがある)だし、飲み物の自動販売機は……私、ドイツ人らしくなくてすみません……ここ数年は「便利!」と夏の暑い時など自販機で冷たい飲み物を買うのが好きだったが、そんな便利な自動販売機だって、無くなれば、無いなりに普通に生活できる。現にドイツなんて飲み物の自動販売機はほとんど無いのだから。



もっと言うと、コンビ二は便利だけれど、今後は24時間ではなく、終電と同時に閉まったとしても、いやもっと早い時間、たとえば夜8時とか9時に閉まったとしても問題ないと個人的には思う。何せドイツは日曜日はお店は閉まっているのだから。でも、かといってドイツがものすごく不便で人々が生活に不自由しているかというと、そこに住んでいた私にはわかるが、そんな事はない。違う意味での豊かさがある。その豊かさとは、「友達や家族と過ごす時間」だったり、「満員電車ではなく、お家やお庭、プールサイドで本を読む時間」だったりする。



自分のペースが大事にできるのも、友達や家族のために時間を作れるのも「お店が閉まっているから」、そして「仕事を早く終えることができるから」という部分が確かに大きいのだ。



そんなわけで私は最近の東京をとくに暗い・不便とは感じていない。でも、この震災により多くの人が「今後の自分の生き方」を考えるようになったと思う。



今まで電気をいっぱい使って仕事と遊びに忙しくしてきた。それはそれで楽しかったけれど、これから人生で一番重要なものはなにか。そんなことを考えなければいけない時が来ている。




YG_JA_1497[1]サンドラ・ヘフェリン



ドイツ・ミュンヘン出身。日本歴 13年、著書に「浪費が止まるドイツ節約生活の楽しみ」(光文社) など 5冊。自らが日独ハーフであることから「ハーフ」について詳しい。ちなみにハーフに関する連載は月刊誌に続き今回が 2回目である。趣味は執筆と散歩。目黒川沿いや碑文谷をよく散歩している。

サンドラ・ヘフェリン

ドイツ・ミュンヘン出身。日本歴19年、著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ) 、「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ』(原作: サンドラ・ヘフェリン、漫画: ヒラマツオ/KADOKAWA)、「『小顔』ってニホンではホメ言葉なんだ!?~ドイツ人が驚く日本の「日常」~」(原作: サンドラ・ヘフェリン、漫画: 流水りんこ/KKベストセラーズ)」など計11冊。自身が日独ハーフであることから、≪ハーフはナニジン?≫、≪ハーフとバイリンガル教育≫、≪ハーフと日本のいじめ問題≫など「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。ホームページ 「ハーフを考えよう!」 を運営。趣味は時事トピックについてディベートすること、カラオケ、散歩。

サンドラ・ヘフェリン