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ハーフの名前のつけ方についてPart3

ハーフの名前のつけ方についてPart3

lisa con sombrero frances © cat_city

ハーフの名前のつけ方についてPart3

最近は日本でも外国でも通用する名前を! と、子供に国際的な名前を付ける親が増えている。アリスちゃんやアンナちゃん、リサちゃんやマヤちゃん、レオンくんなどが代表的かな。



ハーフの赤ちゃんやハーフの子供は、国籍を2つ持っている場合もあるので、その際に重要になってくるのがそれらの名前の「スペル」である。実はこれ、ちょっとした問題に発展することも多いのだ。



たとえば知り合いの日本とフランスのハーフの場合、親が「日本でもフランスでも通用するように」と「アリス」という名前を付けた。フランスの出生証明書とフランスのパスポートには「Alice」と記されている。当然日本のパスポートにも「Alice」と記載されるのかと思ったら、日本側に「いえ、アリスという名前は日本のパスポートには Arisu と記載されます。ヘボン式ですので」と言われたそうだ。確かにヘボン式だとこのアリスという名前のローマ字スペルは Arisu なのだが、せっかく国際的な名前を付けたのでやっぱりスペルは Alice にしたい。ところが日本の職員は日本のルールに従わなければならないので「ヘボン式は Arisu です」を繰り返すばかり。



このアリスさんのお母様 (フランス人) はかなり気が強いお方で「ウチの子の名前はどこでも通用するように、と Alice という国際的な名前にしたんです。Arisu じゃ国際的だとは言えないし、だいたい子供のフランスの出生証明書には Alice と書かれているのだから、出生証明書とは違う名前をパスポートに載せるのは納得がいきません! 勝手に人の名前を変えないで下さい!! 」と激怒したらしい。色々な書類の提出を求められ、結果的には日本のパスポートにもフランスの出生証明書通りのスペル Alice を載せることができたらしいが、相当大変だったらしい。



この話を聞くと、多くの日本人に「アリス= Arisu でもいいじゃないか? 何をそんなに怒ってるの?」と言われそうだが、外国 (たとえばこのケースだとフランス) にルーツのある人からしたら、このスペルでは大問題なのだ。



感覚としては、「京子」という名前を「強固」に変換ミスされた時の衝撃度と似ている、と言ったら分かりやすいかもしれない。「ローマ字だと Kyoko なのだから、京子でも強固でもどっちでもいいじゃない? 」と欧米人に言われたら、やっぱり嫌であるように、「Alice は Arisu でもいいじゃない?」と言われるのは、例えそれが日本の「ヘボン式のルール」であっても、納得がいかないのだ。



ちなみに私のドイツ名の Alexandra は日本のパスポートに記載されていないのだが (親は本当は日本のパスポートにアレキサンドラ○美、というふうに両方の名前を載せたかったらしいが、職員に名前を2つ載せるのは違法です、と言われたらしい) 、載っていなくてかえって良かったのかもしれない。というのは、私のアレキサンドラのローマ字スペルは本来 Alexandra なのだが、これをもし「ヘボン式でないとダメです」と言われた場合、ヘボン式ではArekisandoraとなってしまうのだ。このスペルは考えただけで、私はゾッとするのだ。



ヘボン式の Arekisandora または Arekusandora、、、これも上に書いた「京子」を「強固」に変換ミスされた時の衝撃度に値します。



ちなみに私は日本で名刺を作った際に、色んなバージョンのミススペルの名刺をもらったことがあります(笑)AleksandoraやAlekusandora、 Arexandla と印刷された名刺を見た瞬間に「ああーっ!」と声が出ちゃいました。その後、無料で取り替えてもらって問題はなかったんですけどね。



というわけで、国際的な名前でもアンナちゃんやマヤちゃんはラッキーなのですが(そのままAnnaやMayaまたはMajaになるので)、アリスちゃん ( Arisu にされてしまう可能性アリ)やリサちゃん(本来は Lisa だけど、ヘボン式だと Risa にされてしまう)、そして令音くん(本来は Leon だけど、ヘボン式だと Reon になってしまう)はこの「ヘボン式の壁」にブチ当たる名前だと言えます。



…国際的な名前を付けるのも大変ですね(笑)



サンドラよりご報告



@コラム「納豆を食べるハーフの話」も是非ご覧ください。



@7月20日(水)の夜9時~11時の番組「くらべるくらべらー」(TBS) に出演します。10時からの2時間目に話すと思います!




YG_JA_1545[1]サンドラ・ヘフェリン



ドイツ・ミュンヘン出身。日本歴 13年、著書に「浪費が止まるドイツ節約生活の楽しみ」(光文社) など 5冊。自らが日独ハーフであることから「ハーフ」について詳しい。ちなみにハーフに関する連載は月刊誌に続き今回が 2回目である。趣味は執筆と散歩。目黒川沿いや碑文谷をよく散歩している。

サンドラ・ヘフェリン

ドイツ・ミュンヘン出身。日本歴19年、著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ) 、「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ』(原作: サンドラ・ヘフェリン、漫画: ヒラマツオ/KADOKAWA)、「『小顔』ってニホンではホメ言葉なんだ!?~ドイツ人が驚く日本の「日常」~」(原作: サンドラ・ヘフェリン、漫画: 流水りんこ/KKベストセラーズ)」など計11冊。自身が日独ハーフであることから、≪ハーフはナニジン?≫、≪ハーフとバイリンガル教育≫、≪ハーフと日本のいじめ問題≫など「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。ホームページ 「ハーフを考えよう!」 を運営。趣味は時事トピックについてディベートすること、カラオケ、散歩。

サンドラ・ヘフェリン