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ハーフが遭うイジメ「サルの脳ミソを食べるんでしょ?」

ハーフが遭うイジメ「サルの脳ミソを食べるんでしょ?」

ハーフが遭うイジメ「サルの脳ミソを食べるんでしょ?」

ドイツでのイジメに関しては「チン・チャン・チョン 」「いきなり手を合わせてお辞儀」「目をビーっと吊り上げる仕草 & Schlitzauge という蔑称」について書きました。



これに加えて、テレビなどを見て、ドイツ人の親とその子供が「アジアとは●●である」と単純に誤解をした結果のイジメというものもあります。



たとえば私はギムナジウム低学年の時、同級生の女の子3人に「日本ではサルの脳ミソを食べるんでしょ?」と聞かれたことがあります。もちろん私は「食べない。」と答えたのですが、相手は「でも昨日テレビで日本人はサルの脳ミソを食べるって言ってたよ。」と言い返されてしまいました。続けてその子達は「サンドラの家もサルを食べてるんじゃないのー?」と来たもんです。



今、考えると、まさかドイツのテレビで「日本ではサルの脳ミソを食べている」と放送したはずはないので、台湾 (一部の) の食文化のことを番組で紹介していたのだと思います。そしてその番組を見た一部のドイツ人が、台湾も中国も日本も自分の頭の中で「ゴッチャ」にし、それが「日本人はサルの脳ミソを食べるってテレビで言っていた」という話になったのだと想像します。



今になって私はこの「日本ではサルの脳ミソを食べるんでしょー」と言った子について色々と想像をします。その子は親と一緒にテレビを見ていたのかな、それとも1人でテレビを見ていたのかな、とか。



もし親と一緒にテレビを見ていたのなら、もしかしたら親自身が台湾や中国、日本の区別ができていないドイツ人で、子供に「ほら、アジアではサルの脳ミソを食べるんだ。アジアはどこも皆いっしょ」という類のことを言ったのではないか?と想像します。



それにしても、噂話の延長のような偏見じみた話は広まるのが早いもの。私は本当に困りました。サルの脳ミソを食べていないのに食べた食べたと言われるのはなんだか釈然としません。



そういえば、この「日本人はサルの脳ミソを食べるんでしょー」と言ってきた女の子に後日、「日本人や東洋人は爪が伸びるのが早いんでしょー。ママは Kosmetikerin (エステティシャン) なんだけど、ママがそう言ってたー。サンドラ、爪見せてー。」と言われました。当時マセた12歳だった私は (今は全くやっていないのに) 爪をきれいに伸ばしマニキュアを塗っていたのですが、それを「あー、やっぱり伸びてるー。サンドラやっぱり爪が伸びるのが早いー。」と言われ、その言い方がなんとも嫌な感じだったのを覚えています。



さて、先ほどのサルの話のほかに、ドイツの定番ジョーク (私は悪質ジョークだと思ってます) に「犬を連れて中華料理店に入ったら、犬が消えて、ステーキとなって運ばれてきた。はっはっは。」というのがありますが、この手のジョークも私はギムナジウムに入ってからよく聞かされたものです。



「サンドラの家は犬飼ってないのー?」「飼ってないよ。」「そりゃそうだよね。犬食べちゃうんだから、あははははー」と、まあこんな感じ。



当時、ドイツの子供番組では馬やポニーが主人公の番組が流行っていました。ドイツは元々動物大好きのお国柄ですが、ポニーや馬の番組が流行ったことで更に「獣医さん志望」の子供が当時はいっきに増えました。しかし、犬やネコやポニーや馬が大好きな「将来は獣医さんになりたいの。動物が大好きだから♡」 (“Ich möchte Tierärztin werden. Tiere sind soooo süüüüüß.“)系の女の子が、「日本人ってサイテー。犬を食べるから。チンチャンチョン。」といじめたりするのでタチが悪いです。



私は一時期コトあるごとに、この「犬」攻撃をされて辟易していました。



ちなみに前述の「サルの脳ミソを食べるんでしょー?」に「食べない」と答えてもムダだし、「犬を食べるんでしょー?」に「食べない」と答えてもムダです。イジメっ子の中では既に「日本人はサルの脳ミソを食べる」「日本人は犬を食べる」と決まっているのです。困ったもんです。



ちなみにワタシ自身は (食べたことはないけれど) 犬を食べるのも、サルの脳ミソを食べるのも「悪い!」とは言えません。こんな事を言うと、多くのドイツ人に叱られそうですが、豚や鳥や牛は食べてよくて、その他の動物はダメ! なんて規準はそもそもヘンテコなものだと思っているからです。



まあこの何を食べてよくて何を食べてはダメ、というテーマもこみいった複雑なテーマなのでまた別の機会に書こうと思いますが、イジメの話に戻すと、やはり半分日本人の私は子供の頃や思春期の頃、おとなし過ぎて、ウイットのきいた回答が出来なかったのが悔やまれます。



「サンドラは家で犬を食べてるんじゃないの?」と言われたら、ドイツ流ブラックジョークで、「あははははー。そうだよ。ウチは毎晩、ディナーは犬だよ。アンタの家の犬も食べたいから、今度犬を連れて家族みんなでウチに遊びに来てよ! 楽しみだなー。はっはっはっは……!!!!」と言い返すことができれば効果的だったと思われます。



そして



「日本人はサルの脳ミソを食べるんでしょ?」と言われたら、「そうだよ!食べるよ!アナタのサル並みの脳ミソも食べたいから、今度ウチに遊びにきてー^^アンタの脳ミソ食べるの楽しみだなー。うっしっし。」と言い返すべきでした。



多くのドイツ人が自然に身につけているブラック思考が、母親が日本人のワタシには身についていなかったのです。



実際には、ドイツでのサバイバルにはブラック思考が必要不可欠だったりします。



今更ながらですが、タイムマシーンに乗って、当時の犬攻撃やサル攻撃をしてきたドイツ人イジメっ子を言い負かしたい気もします。



…と、今回は自分の経験について書いてみました。



いじめシリーズ、まだまだ続きます。重たいテーマですが、皆で一緒に考えていきましょう。




★明るいニュースです。現在発売中の週刊誌SPA!(9/18・9/25)の111ページ~115ページに「ハーフの特集」が載ってますので、皆さんぜひご覧ください。ワタシが毎週のように寝転びながら&おせんべいボリボリ食べながら読んでいたSPA!に自分が出ているなんて夢みたいです!!!!




YG_JA_2261[1]サンドラ・ヘフェリン



ドイツ・ミュンヘン出身。日本歴12年、著書に「浪費が止まるドイツ節約生活の楽しみ」(光文社) など5冊。自らが日独ハーフである事から、「ハーフ」について詳しい。ちなみにハーフに関する連載は月刊誌に続き今回が2回目である。趣味は執筆と散歩。目黒川沿いや碑文谷をよく散歩している。

サンドラ・ヘフェリン

ドイツ・ミュンヘン出身。日本歴19年、著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ) 、「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ』(原作: サンドラ・ヘフェリン、漫画: ヒラマツオ/KADOKAWA)、「『小顔』ってニホンではホメ言葉なんだ!?~ドイツ人が驚く日本の「日常」~」(原作: サンドラ・ヘフェリン、漫画: 流水りんこ/KKベストセラーズ)」など計11冊。自身が日独ハーフであることから、≪ハーフはナニジン?≫、≪ハーフとバイリンガル教育≫、≪ハーフと日本のいじめ問題≫など「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。ホームページ 「ハーフを考えよう!」 を運営。趣味は時事トピックについてディベートすること、カラオケ、散歩。

サンドラ・ヘフェリン