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イジメ日本版:学校でイジメに遭うハーフ

イジメ日本版:学校でイジメに遭うハーフ

© opiopu (flickr.com)

イジメ日本版:学校でイジメに遭うハーフ

日本にいる「ハーフ」は周りからチヤホヤされがちです。でもその「チヤホヤ」がイジメに変わることが少なくないのは前回書いた通りです。では具体的にハーフの子供は学校でどのようなイジメを受けるのでしょうか?



『ハーフ』と『イジメ』は切っても切り離せないテーマだとはいえ、日本の一部の小学校や中学校のイジメの内容にはすさまじいものがあります。



世間のイメージ(「ハーフは華やか」「ハーフはかわいい」「ハーフはトクしてる!」)とは違い、ハーフに対するイジメの内容は酷いものが多く、自分の経験も含め、他のハーフの体験談を聞くたびに嘔吐感が込み上げてくるような内容の話ばかりです。

私の知る範囲では、とくに酷いのが日本の地方都市や田舎の公立小学校のイジメ、そして公立中学校のイジメです。



よくニュースで(ハーフとは関係なく)小学生や中学生が同級生からクサイといじめられ自殺した、などというのを目にしますが、これを経験したハーフも多いです。



クサイ、汚い、ばい菌、外人菌、みんな近寄るな外人菌がうつるぞー、外人菌が来たぞー、外人は外国へ帰れー、ばい菌、バイキン、バイキン、国帰れ



どうです、これ。



上の言葉の数々でもわかるかと思いますが、決して「ハーフがうらやましくてお友達になりたかったから、ちょっとからかってみた」というレベルのイジメではないのが、お分かりいただけますでしょうか。



具体例。



あるヨーロッパ某国×日本のハーフの子は学校で同級生にある日「○○ちゃん(←そのハーフの子の名前)って、耳垢は湿ってる?それとも乾いてる?」と聞かれたそうです。



その子は答えなかったのですが、しばらくすると周りの様子がなんだかおかしい。



「○○ちゃん(←そのハーフの子)は耳垢が湿ってるらしい、ワキガだワキガだ!」と周りの子にはやしたてられます。



実はこれ、雑誌やインターネットによく載っている「耳垢が湿っている人はワキガ。耳垢が乾いている人はワキガではない。」「日本人は耳垢が乾いている人が大半で、日本人にはワキガが少ない。黒人や白人は耳垢が湿っている人が多くワキガが多い。」という情報を小生意気な子供がめざとく見つけ、それを元に同級生ハーフをイジメているのです。日本のメディアなどがひろめている、そして実際にある程度は欧米人に当てはまる「体質」を(表向きには)理由にしたイジメです。



でも、当たり前ですが、イジメてよい理由にならないのは言うまでもありません。なぜなら逆に、ヨーロッパではあまり聞かないけれど、日本ではやたら聞くような体質というのもあります。



たとえば水虫。



もし日本人の子供が外国の学校に行って、「日本人は水虫水虫水虫。XXXちゃんは日本人だから水虫なんでしょう!!?水虫菌がうつるから日本人は近寄るなー!!」と外人の悪ガキ集団にいじめられたら、最悪でしょう?たとえ日本に本当に水虫が多い、という事実があったとしても、です。



こういう「雑誌に載ってた」とか「テレビでやってた」ことを子供はキャッチするのが早い。そしてそのネタをイジメに使う。非常に悪質だし、体質的なことでいじめるのは卑劣極まりないですね。



さて、先ほどの日本の学校でのイジメに話を戻すと、イジメの本質は、いじめられている本人がクサイかどうかというのは実はあまり重要ではなく、いじめっ子の論理として、自分たちと違うもの(ハーフや外国人)を排除したい、それで体質的なことをもっていじめるのが一番やりやすい、一番簡単にいじめやすい、という事のようです。



では日本の田舎の公立小学校や公立中学校などでこのようなイジメに遭った時の解決法ですが、これはもう最初から10人とか20人とかに言われてしまうと、もう一人では立ち向かっていけないのが現実です。なぜならこの手の噂は好まれやすく「あの子クサイんだってよ。」と学校全体に広まりやすいからです。



本当はそこにいたる前の段階で、誰かが変なことを言ってきたら(「耳垢湿ってるの?」など)、即、聞き返す事をおススメします。「外人は耳垢湿っててワキガだって聞いたんだけど、○○ちゃん耳垢湿ってる?」と聞かれたら即「ちがうよ!ところで真理ちゃんは水虫?体育の着替えの時になんか気になってさ^^」と明るく反撃することをおススメします。



でも・・・・



わかってます。難しいんですよね、この反撃が。



実はこの手のイジメに遭ってしまったら、どう対処するのがベストなのか、私にも分かりません・・・・



イジメについて語る時、「親」の存在も大事ですが、学校で同級生にワキガだのクサイだの、外人菌だの、外人菌がうつるから近寄るな、と言われた我が子が、親に正直に「ママ、学校で外人菌、くさい、外人菌がうつるから近寄るなと言われた」と正直に話すとも思えません。プライドがあるもの。だからせいぜい「ママ、学校で外人って言われた」とか「学校に行きたくない」とだけ言うかもしれません。



ここでトンチンカンな親がやってしまいがちなのが、子供のイジメの深刻度を察知せず、「みんなハーフと仲良くなりたいだけよ。気にすることないよ。」とか「みんな、ハーフがうらやましいだけよ。」などのまったく次元の違うアドバイスを子供にしてしまう事です。ほんとうは子供に「ママ、学校で外人って言われた」と言われたら、イジメの実態は子供の言う×10ぐらいだと親が察知することが大事だと思います。粘り強く自分の子供から事情を聞きだし、もしかしたらいじめっ子の親のところへ怒鳴り込んでいくぐらいの姿勢がないと、ハーフの子供を持つ親はつとまらないのかもしれません。ハーフの子供がイジメに遭ったら、親は恥を捨てないと、この手のイジメに対処する事は難しいですね。この手のイジメの本質が「相手に恥をかかせること」なのですから、恥をかくことを親も恐れていたら相手(いじめっ子)の思うツボだと私は思うのです。自分の子供がイジメに遭った場合はモンペ(モンスター・ペアレント)と言われることを恐れてはいけないと思います。だって子供の同級生は「モンスター・小学生」なのですから!



イジメに遭ってどうにもこうにもならない場合は、悔しいけれど転校という方法しかないのかもしれません。(何故いじめられた被害者が転校しなきゃいけないのか意味不明だし悔しいけれど、悪化して自殺してしまうより転校が良い。)



・・・・・イジメについて、書いたこと、強烈だったかもしれませんが、わかっていただきたいのは、この手のイジメは『例外』ではないということです。大人が見ていないところで、こういう事をする子、沢山居ます。そういうイジメっ子に限って「元気に挨拶するいい子」として大人には評判だったりします。子供の世界も、いや、子供の世界だから「こそ」陰険なのかもしれません。



親が物事を明るく楽観的に考えることを全面否定はしたくないですが、でも、ハーフがイジメに遭った時に、親が楽観的なのは致命的です。ハーフの子供を持つ親は「今は昔とちがってハーフは珍しくないし大丈夫」だとか「ウチの子はハーフだけどイジメには遭わない。」などと予め決め付けないほうがいいと思います。決め付けてしまうと、イザ子供がイジメに遭った時に、子供は親に何も報告できなくなります。だってママの頭の中では「ウチの子はイジメには遭わない」と既に決まってしまっているのですから・・・。



とにかく「ウチの子はハーフでかわいいから大丈夫。」「子供はみんな純粋だから、みんな仲良くやれるはずだ」という幻想から親が一刻も早く離れる必要があります。(ちなみに、いわゆる「ハーフへの憧れ」の気持ちからハーフの子供を産んだ一部の日本人女性に、この手の「幻想」が強い印象を受けます。)親が幻想を抱き続けたままだと、親が幻想に縛られたままだと、気が付いたときには、公立校に通う我が子が精神的に自殺一歩手前までいってしまうかもしれません。そして何年経っても子供から「あの時、ママは私の事を分かってくれなかった!」と責められ、親子関係にヒビが入ってしまうかもしれません。



・・・また書きます。「イジメ」はなかなか解決法が見つからない難しいテーマですが、皆で考えていきましょう。



★ コラム「パパとママの通訳をする4歳児」もぜひ読んでいただけるとうれしいです。




YG_JA_1648[1]サンドラ・ヘフェリン



ドイツ・ミュンヘン出身。日本歴15年、著書に「浪費が止まるドイツ節約生活の楽しみ」(光文社)、近著「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ) など6冊。自らの日独ハーフとしての経験も含め「ハーフ」について執筆している。趣味は時事トピックについてディベートすること、カラオケ、執筆、散歩。目黒川沿いや碑文谷をよく散歩している。



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サンドラ・ヘフェリン

ドイツ・ミュンヘン出身。日本歴19年、著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ) 、「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ』(原作: サンドラ・ヘフェリン、漫画: ヒラマツオ/KADOKAWA)、「『小顔』ってニホンではホメ言葉なんだ!?~ドイツ人が驚く日本の「日常」~」(原作: サンドラ・ヘフェリン、漫画: 流水りんこ/KKベストセラーズ)」など計11冊。自身が日独ハーフであることから、≪ハーフはナニジン?≫、≪ハーフとバイリンガル教育≫、≪ハーフと日本のいじめ問題≫など「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。ホームページ 「ハーフを考えよう!」 を運営。趣味は時事トピックについてディベートすること、カラオケ、散歩。

サンドラ・ヘフェリン